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日本の政治の議論から消える外交問題と、米国では語られぬパレスチナ問題の歴史

 毎日、自民党総裁選と立憲民主党代表選に関するニュースが報道されているが、誰からも外交問題に関する見解が聞かれない。パレスチナの「パ」の字も、ガザの「ガ」の字もない状態だが、ガザについて考えをもっているとすれば、ガザ問題に関する「人道外交議員連盟」会長を務める石破茂氏と上川陽子外相ぐらいだろうか。上川外相は国民とともに「新しい景色を見たい」と総裁選への抱負を語っているが、イスラエル人元人質を抱擁しても、ガザのパレスチナ人と面談することがない姿勢を見ると、彼女からは米国だけに配慮する「古い景色」しか見えない。イスラエル軍は10日、ガザの避難民のテント群を空爆し、40人が死亡した。空爆はイスラエル軍が指定した避難区域に対して行われたが、市民を殺害する戦争犯罪について、日本政府からの見解は聞かれない。小選挙区制になって政治家たちは狭い選挙区の投票者の関心ばかりに応えるようになり、外交問題は政治の議論の争点ではなくなった。

人道外交議連の設立 http://resultsjp.sblo.jp/article/190898199.html


 今日は911の同時多発テロが起きた9月11日だが、911事件の首謀者とされるオサマ・ビンラディンの「アメリカへの手紙」は2002年に「ガーディアン」に掲載され、ガザ戦争が始まって以来、米国の大学生など若者たちによって読まれ、米国のZ世代は自国の矛盾に気づき、イスラエルに偏る米国の中東政策の矛盾に気づくようになった。

「パレスチナはイギリスの委任統治時代も含めて80年以上も軍事占領の下に置かれているが、イギリスはアメリカの援助と支援を得てパレスチナをユダヤ人の手に引き渡した。イスラエルはパレスチナを50年以上も占領し、その占領はパレスチナ人に対する弾圧、圧政、犯罪、殺害、追放、またパレスチナ社会の破壊、荒廃に満ちたものだ。イスラエル国家の創設と存続は世界最大の犯罪であり、アメリカは世界の犯罪者の指導者である。イスラエル国家自体が抹殺されねばならない犯罪だ。この犯罪に加担して手が汚れたすべての者はその代償を大きく支払わなければならない。」

今日は9月11日でした

 米国の大統領選のディベートが民主党候補のカマラ・ハリス副大統領と、共和党候補のドナルド・トランプ元大統領との間で行われた。トランプ氏には政策らしい議論はまったく聞かれなかった。「ハリスはイスラエルを嫌い、またアラブをも嫌い、彼女のイスラエルへの嫌悪(ヘイト)がアラブ人を殺している」という聞くに耐えない発言をしていた。

 ハリス副大統領は「10月7日、テロ組織ハマスは1、200人のイスラエル人を虐殺した。その多くは、ただコンサートに出席していただけの若者たちでした。女性はひどくレイプされました。ですから、その時、私は現在イスラエルには自衛する権利があると言いました。私たちはそう言い続けるでしょう。そして、それをどのように行うかが重要です。なぜなら、それはまた、あまりにも多くの罪のないパレスチナ人が殺されたのも事実だからです。子供、母親。私たちが知っているのは、この戦争は終わらせなければならないということです。それは即座に終わらせなければなりません、そして、それを終わらせるには、停戦合意が求められており、人質を救出する必要があります。ですから、私たちはそれについて24時間体制で取り組み続けます。また、2国家解決のための道筋を描かなければならないことも理解して、昼夜を問わず働いています。そして、その解決策には、イスラエルの人々とイスラエルのための安全、そしてパレスチナ人にとっての安全保障が等しくなければなりません。」

二人の表情に勝敗が表れているように思います。


 パレスチナの和平や、ガザで殺害された市民について発言している点でバイデン大統領よりも戦争への取り組みについて真剣であることが伝わってきた。しかし、10月7日のハマスの襲撃が突然起こったわけではない。イスラエルは1948年の独立やその直後に始まった第一次中東戦争で、現在のイスラエル南部に住むパレスチナ住民たちを追放し、ガザの難民キャンプに閉じ込めた。2007年からガザを経済封鎖して、ガザの失業率は50%をゆうに超える。かりに10月7日のハマスの攻撃がイスラエル軍にだけ向けられていたら、国際法で認められた植民地主義者に対する正当な抵抗だった。ハリス氏の議論になかったのは米国がイスラエル軍による殺りくに武器や弾薬を提供していることだ。バイデン政権の主要なポストにいる彼女にも当然責任があるだろう。

 冒頭でも述べたように、日本では外交について政治家たちが議論することが極端に少ないが、米国の矛盾に満ちた中東外交に苦言を呈することができる日本の政治家が現れるだろうか。


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