
イスラエルにイランの核施設攻撃を促すトランプ候補 イスラエルのイラン攻撃は第二の広島・長崎をもたらす?
4日、米国大統領選の共和党ドナルド・トランプ候補がイスラエルにイランの核関連施設を攻撃することを促した。
このような攻撃は、2005年の国連「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」の重大な違反である。この条約には、日本やなど115カ国が署名し、イスラエルもまた締約国だが、おそらくトランプはこの条約を知らないに違いない。
また、様々な国際法を破り、殺りくを繰り返してきたイスラエルのことだから、実際にやりかねない。背筋の寒くなるような想いになるが、イランの核関連施設を攻撃すれば重大な市民の犠牲をもたらすことは明らかだ。2012年に書かれたホスロー・セムナーニー(Khosrow b. Semnani)のThe Ayatollah’s Nuclear Gamble : The Human Cost of Military Strikes against Iran’s Nuclear Facilitiesは、イスファハーンのウラン転換施設が攻撃を受ければ、六フッ化ウランの飛散によって、この地域の5000人から70,000人が一瞬にして犠牲になると主張している。また、多数の子供たちが白血病に罹患する可能性もあるという。イスラエルのイラン核関連施設の攻撃は第二のヒロシマ、ナガサキの核被害をもたらしかねない。

セムナーニー氏は、「最悪のシナリオでは、放射性降下物が地下水面に入り込み、イランの飲料水の大部分を汚染するだろう」と指摘したが、イランの核施設の多くは地下にあるために、放射能汚染はイラン人に重大な健康被害をもたらすことになる。イスラエルは、1981年にイラクのオシラク原子炉を爆撃して破壊したことがあるが、その時、オシラク原子炉はまだ建設途中で、核関連物質が施設内にはなかった。

トランプは、大統領時代にイラン核施設の攻撃を考えたことがあったが、それは国際原子力機関(IAEA)が2020年11月1日にイランが2015年の核合意で決められた低濃縮ウランの貯蔵量が核合意の上限の12倍に達したと報告したからだったが、それでも低濃縮ウランは軍事用とはならない。そもそも、イラン核合意から一方的に離脱したトランプがイランの核開発をイスラエルとともに問題にする資格はない。トランプは大統領時代、実際に使える小型核兵器の開発も唱えていた。
1939年にナチス・ドイツによる核兵器開発を懸念した科学者のアインシュタインは、ルーズベルト大統領に手紙を書き、ウランの核分裂反応によって非常に強力な爆弾を製造できる可能性があると指摘し、政府による研究の支援を訴えたが、これが米国の核兵器開発の契機となったとされている。しかし、広島や長崎などの核兵器被害の非人道性を知った彼は戦後罪悪感から核兵器に強く反対するようになった。

日本の哲学者・評論家の篠原正瑛(しのはら・せいえい)氏(1912~2001年)は、1953年からアインシュタインと書簡の交換を行い、篠原氏は日本人が朝鮮や中国で行ったすべての行為に対して責任があるように、アインシュタインの核兵器開発における役割に責任があることを批判した。アインシュタインは、日本に対する核兵器の使用を非難してきたが、その実際の使用を阻止することができなかった後悔を交換書簡の中で述べている。

そのアインシュタインは、1929年にシオニズムの指導者ハイム・ワイツマン(イスラエル初代大統領)に「ユダヤ人にとって必要なのはアラブと共存することであり、それができないのであれば、我々は2000年の苦難の歴史から何も学んでいないことになる。」と語った。こうしたアインシュタインの考えに触れるにつれ、アラブとの共存を拒むシオニズムは少なからぬユダヤ人の間でも支持されない考えであることに容易に気づく。
国別で広島を訪れる外国人観光客で一番多いのは、コロナ禍前の2019年は米国人だった。(訪日ラボより)言うまでもなく米国は広島に原爆を投下した国だが、米国民には広島の戦争の歴史に関心が高いようだ。トランプは、最初の核実験を「素晴らしい偉業」と発言したり、オバマ大統領の広島訪問について原爆投下に謝罪しない限りかまわないと言ったりしたが、自国の歴史に向き合い、被爆者たちに悲惨な体験を思いやる人たちが米国民も少なからずいる。世界の人々の反核、反戦の想いがトランプのような考えに反発し、イスラエルのイラン攻撃を思いとどまらせることを願わざるをえない。
