見出し画像

国連総会、イスラエルの占領を終わらせるための闘争 ―さて日本は? 

 国連総会で17日、イスラエルによるパレスチナ占領政策への対応を協議する緊急特別会合が始まったが、1年以内に占領を終結させるようイスラエルに求める決議案の採択を目指している。7月にイスラエルのヨルダン川西岸占領は国際法違反だという判断を国際司法裁判所が下したが、これを受けてイスラエルの占領に対する対応を協議する。現在、ヨルダン川西岸で、パレスチナが行政と警察権をもつ地域はわずか18%にすぎない。
 日本も明確にイスラエルの占領終結を支持する立場を明確に訴えてもらいたい。
 日本の首相がパレスチナの民族自決、パレスチナ国家創設に明確に言及したのは、大平正芳首相が1979年12月1日、参議院本会議での代表質問の中で「中東外交の基本姿勢」について問われ、下のように答えたのが最初だった。

「特にパレスチナ問題につきましては、中東紛争の核心をなすものとしてきわめて重視いたしており、パレスチナ人の民族自決権を含む国連憲章に基づく正当な権利が承認、尊重されることが必要であると考えております。パレスチナ人の民族自決権につきましては、わが国は独立国家を樹立する権利も含まれておると解釈をいたしております。また、これまでもすでに機会あるごとに明らかにいたしてきたとおり、PLO をパレスチナ人を代表するものとして認識しておりますが、今後ともわが国としては PLOと行っておる対話をさらに推進していく所存であります」(第 90回国会・参議院本会議録第4号)

 これに対して今年5月24日、上川陽子外相は記者会見で「我が国としては、これまで当事者間の交渉を通じた『二国家解決』を支持し、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解し、これに向けたパレスチナの努力を支援してきたところであります。
 引き続き、イスラエル・パレスチナ双方への直接の働きかけなどにより、今次事態の早期沈静化や、人道状況の改善に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていくとともに、『平和と繁栄の回廊』構想などの、日本独自の取組などを通じまして、当事者間の信頼醸成に取り組んでまいります。また、パレスチナの国家承認につきましては、和平プロセスをいかに進展させるかといったことも踏まえ、引き続き、総合的に検討していく所存でございます。」

 上川外相の発言には国際法やパレスチナの民族自決権への言及がなく、7月の国際司法裁判所のイスラエルの占領が不当であると判断したことについて、彼女自身の見解が明らかにされなかった。上川外相は、イスラエルの占領が不当であるということを強調したがらない。イスラエルが二国家解決を断固拒否する中で当事者同士の交渉を通じた二国家解決を唱えるのは責任がない印象も受ける。大平首相はPLOとの対話を重視しているが、上川外相はパレスチナ側と接触や意見交換を重ねているように見えない。
 今年3月24日の朝日新聞に「ガザの人道危機にどう向き合う? Z世代と政治家とNGOが語った」という記事があった。ガザ問題に関する人道外交議員連盟会長の石破茂元自民党幹事長は、国会における即時停戦決議の必要性を訴え、「どっちがいいだの悪いだの言っても仕方がなくて、とにかく停戦というものを、少なくとも主権国家たる日本国の意思としてはっきり示すということが一番大事なことなんだろうと思っている」と話した。
 石破氏が言う通り日本の国家の意思として即時停戦を訴えるべきだったが、人道外交議連は岸田政権が止めたUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への拠出金の再開を自民党は石破議員、中谷元議員が中心になって推進し、また立憲民主党では阿部知子議員や近藤昭一議員が中心になって実現した。超党派の議員たちが党利党略にとらわれずに、ガザの人道問題を懸念している様子は新鮮に、また頼もしく思えた。それにしてもUNRWAの職員の中にハマスの「テロリスト」がいるというイスラエルの主張を鵜呑みにして、欧米と足並みを揃えてガザへの人道支援を止めてしまった岸田政権の姿勢はまったく評価できなかった。
 パレスチナ問題についての発言の紹介があった9月15日付の毎日新聞の記事「外交・安全保障 候補者政策発言集 自民総裁選」の中で河野太郎氏が「日本はパレスチナの2国家解決にずっとコミットし、いずれ条件が整えばパレスチナの国家承認をすると言ってきた。日本がこの2国家解決にコミットしているというのを今こそ示すため、パレスチナの国家承認をすべきだ。少なくとも在京の公館の地位を高める。それを今こそやるべきではないか」(9月14日、日本記者クラブ討論会)と発言している。
それに異論はまったくない。イスラエル支配の下にパレスチナ置かれたままだとイスラエルの意のままに、イスラエルに土地を奪われたり、入植地を拡大されたりということになってしまう。パレスチナ人への人権侵害への抑止やイスラエルに国際法を守らせるためにもパレスチナ国家があったほうがよいことは言うまでもない。自民党総裁選立候補者の中では、石破議員、河野議員以外からはガザ問題に関する発言は聞こえてこないが、「法の支配」についてロシアや中国、北朝鮮に注文をつけて、イスラエルにはノーコメントという総理大臣では困ると思っている。

表紙の画像は「イスラエルの入植者の暴力からパレスチナ人を守るラビのアリク・アッシャーマン氏」
https://www.aljazeera.com/gallery/2023/11/13/rabbi-helps-occupied-west-bank-farmers-amid-rising-israeli-settler-violence

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?