フランス「新人民戦線」はパレスチナ国家を承認する ~愛しかない時
フランス総選挙は6月30日の第1回投票でトップに立った極右の国民連合の勝利が予想されたものの、与党連合と左派連合が候補者を一本化する協力に踏み切り、7月7日の選挙では野党の左派連合「新人民戦線(NFP)」が最大勢力となり、国民連合など極右勢力を第三位に抑え込んだ。フランス国民は極右が支配する政治に「NO」を突き付けた格好となった。NFPに参加する急進左派の「不服従のフランス(LFI)」指導者のメランション氏は「国民は最悪のシナリオを回避した」と述べ、左派から首相を指名するようにマクロン大統領に求めた。
またメランション氏は国際政治では、大統領はパレスチナ国家を承認することに同意しなければならないと訴えた。パレスチナ国家承認はNFPの外交に関する公約の中心に位置する。NFPの勝利はイスラエルのネタニヤフ政権にとっては歓迎されざるニュースだったに違いない。NFPは、フランス政府がネタニヤフ首相の極右・人種至上主義政権への犯罪的支持と決別し、イスラエルにガザでの即時停戦を強制することを訴えている。NFPは国際司法裁判所にガザにおけるジェノサイドについてその停止命令を執行するように求めている。さらに、NFPはICC(国際刑事裁判所)によるハマス指導者とネタニヤフ人種至上主義政権の指導者たちに対する訴追を支持すると述べている。また、イスラエルへの武器売却を禁止する考えも明らかにした。
イギリスの医学雑誌「ランセット」に掲載された記事(7月5日付)では、昨年10月からのガザの犠牲者は全人口の8%に相当する18万6000人であることを推測している。ガザの保健省は38,153人としているが、この数字は瓦礫の下に埋もれている遺体を計算に入れず、また食料配給や医療・衛生システムの崩壊による死者を含めていないとランセットの記事は述べている。ガザの35%の住宅・ビルが破壊されたことを考えれば、瓦礫の下には少なくとも1万人は埋まっているという。記事が即時停戦と、ガザへの人道的支援を求めていることは言うまでもない。
ベルギー生まれのシャンソン歌手のジャック・ブレル(1929~78年)には、1914年の第一次世界大戦の直前に、暗殺されたフランス社会党の指導者ジャン・ジョレス(1859~1914年)を歌った「ジョレスは殺された」という歌がある。ジョレスはドレフュス事件のドレフュスを擁護する立場で活躍し、暴力革命を否定、穏健な社会主義を唱え、一貫して反戦を訴えた。そのため、狂信的な国粋主義者によって殺された。「ジョレスは殺された」の歌詞の一節は次のようなものだ。
もし、不幸にして彼らが生き延びたのであれば
それは、戦争に赴くためであった
それは、戦争で一生を終えるためであった
口先だけで要求する
上官たちの命令で
恐ろしい戦場へと突き進み
彼らは、20歳にもなることなく
大きな恐怖の中で死んでいった
あまりにもみじめに 「われらの良きご主人様」
司祭に囲まれて 「われらの旦那様」...
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12736076242.html より
ジャック・ブレルは1956年に「愛しかない時」という楽曲を発表したが、1956年はスエズ動乱、ハンガリー動乱があった年で、世界では大国の介入による戦争が繰り返され、核兵器で恫喝し合う冷戦の緊張も高まりを見せていた。ブレルの作品は反戦と愛を壮大に歌い上げるもので、2015年11月のパリ同時多発テロの追悼式典でも歌われた。この歌は、ネタニヤフ首相に見られる偏狭なナショナリズムと独善的な正義へのアンチテーゼとして聞こえるようだ。
愛しかない時(抜粋)
愛しかない時
分かり合えることと
歌だけが
たった一つの救い
愛しかない時
光明を求めて
闘う人々に
手を差し伸べ
愛しかない時
軍隊の太鼓を説得するには
歌だけが
大砲に語ることができ
何も持っていなくても
愛の力だけで
私たちは手と手に
世界中の友と繋がることが出来る
日本語訳は http://lapineagile.blog.fc2.com/blog-entry-40.html より
表紙の画像はフランス下院選 事前予想に反し左派連合が勝利 極右政党は第3勢力に|テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド) (tv-tokyo.co.jp) より