国際司法裁判所(ICJ)のラファ攻撃停止命令と、ICJ無視のイスラエルに日本政府は圧力をかけるべき
ユダヤ人の詩人ハインリヒ・ハイネ(1797~1856年)は、「人間を照らす唯一のランプは理性であり、生の闇路を導く唯一本の杖は良心である。」(ハイネ 『ドイツの宗教と哲学』)と説いた。ナショナリズムは、このハイネが説く理性とも良心とも対極にあり、その自己陶酔がどこまで行くかわからない、または果てないことは、シオニズムというナショナリズムに基づく国家のイスラエルによるガザ攻撃を見ればわかる。
24日、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所は、ガザ住民に取り返しのつかない損害を与える可能性を指摘し、ラファ攻撃をただちに停止する措置を命じた。国際司法裁判所がイスラエルに対して攻撃停止を命じたのは初めてのことだ。これに対してイスラエル政府は「ラファで民間人の暮らしを脅かす物理的な破壊をもたらす可能性のある軍事行動を行っていないし、これからも行わない」という声明を出した。誠実な声明とはまったく言い難い。ガザでは昨年10月7日以来、3万5000人以上の人々が亡くなり、病院、学校、商店などが破壊され、人々の生活は破綻している。それでもイスラエルは国際司法裁判所の命令を無視して攻撃を継続するつもりでいる。国際社会のルールが守れないのであれば、イスラエルのイメージはいっそう低下することだろう。
イスラエルがしていることは徹底的なパレスチナ人への抑圧のように見え、あたかもナチズムがユダヤ人に対して行ったことを彷彿させる。
アルジェリア独立戦争のイデオローグで、医師でもあったフランツ・ファノン(1925~61年)は、『地に呪われた者(The Wretched of the Earth)』(みすず書房、1969年)で、ナチズムもシオニズムも、ナショナリズムの考えをもち、また迫害された人々は自らを抑圧した者たちの姿勢を自ずと身につける傾向をもつが、それはイスラエルのパレスチナ人への抑圧姿勢に見られていると主張した。
国際司法裁判所の命令を無視するラファ攻撃継続に日本政府には何の見解もないのだろうか。すでに昨年10月末に日経新聞とテレビ東京が行った世論調査では日本政府の10月7日以降の取り組みを支持しないが45%で、支持するが34%だった。
日本政府の姿勢はアラブ世界をはじめ国際社会ではもっと評価されていないだろう。日本は昨年10月16日の国連安保理でロシアが提出した停戦決議案に米英仏とともに反対した。日本の反対理由は「イスラエルを攻撃したハマスを名指しで追及していない」というものだったが、アメリカ追従の姿勢は明らかだった。パレスチナ人や他のアラブ人はSNSで「日本の援助など必要ない」「日本製品をボイコットする」「恥を知れ」などの書き込みがあった。
アラブ世界では、アメリカ資本のケンタッキーフライドチキンやマクドナルドなどで客が激減した。米国製品を買えば、その利益がパレスチナ人を殺害するイスラエルの武器に転換されると信じられている。JICAのプログラムで来日したこともあるガザ在住の男性は「日本はわれわれの側だと思っていたのに。停戦案に反対するということは、日本がイスラエルの虐殺に加担することだ」と憤慨しながら述べたという。(蜘手美鶴「ガザ空爆開始から2カ月:中東で期せずして上がった『反日の声』」nippon.com 2023年12月8日)
ガザ問題で3万5000人のパレスチナ住民が殺害される中で、イスラエルの攻撃を非難する正義の声を上げない岸田政権の対米追従の姿勢にいら立ち怒るパレスチナ人やアラブ人は少なくないのは当然だ。
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