国連のグテーレス事務総長の入国を禁止するイスラエル外相の「狂気」
イスラエルのカッツ外相は2日、国連のグテーレス事務総長がイランによるイスラエル攻撃を非難しなかったという理由で、イスラエルへの入国を禁止する措置をとった。さらに、カッツ外相はグテーレス氏が「ハマス、ヒズボラ、フーシ派のテロリスト、強姦魔、殺人者、そして世界のテロの母であるイランを支援してきた」と語り、イランのイスラエルに対する凶悪な攻撃を明確に非難できない人は、イスラエルの地に足を踏み入れる資格がないと述べた。
正常な判断ではないと思ってしまうが、4万2000人ものガザの人々を殺害してきたイスラエルの外相が「テロリスト、殺人者」という言葉を使って他の国や組織、さらには国際機関の長を批判できるものかと思ってしまう。7月末に、イスラエルの軍警察がイスラエル南部ベエルシェバ近くにあるスデ・テイマン拘置所で、集団レイプと性的拷問の疑いでイスラエル兵9人を拘留したこともある。カッツ外相にはイスラエルの足元を見て、深く自省する必要があることは言うまでもない。
カッツ外相は、ネタニヤフ首相と同じ修正シオニズムの政党「リクード」に属す強硬な右翼政治家だ。修正シオニズムは、イスラエルの領土的絶対性を説くが、カッツ外相もまたヨルダン川西岸の併合を説き、入植地の拡大を支持し、イスラエルの主権を西岸全体に拡大することを主張している。ファースト・ネームも「イスラエル」であるカッツ外相は、パレスチナ国家創設にも強く反対している。
2016年3月にブリュッセルでISによるテロ事件が発生し、30人余りが犠牲になると、カッツ外相はベルギーや欧米世界のテロとの戦いでの「無能ぶり」を指摘し、ベルギー人がチョコレートを食べ続ける生活を楽しむ限り、ベルギー国内のムスリムがテロを計画していることに気づかず、またテロとの戦いに成功しないだろうとも述べた。「チョコレートを食べるベルギー人」というステレオタイプ的な決めつけにはベルギーだけではなく、欧米メディアでは広く反発されることになり、イスラエルのイメージを低下させることにもなった。
また、2019年2月、カッツ外相代理(当時)は、ポーランドがナチスのホロコーストに加担したと述べ、ポーランド人の反セム主義は母親の母乳によって代々植えつけられると述べたことがあった。これにもポーランドが人種主義と反発して、イスラエルで予定されていたイスラエルと、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアの東欧4カ国の首脳会議をボイコットした。
独善的な発言を行うカッツ外相のようなイスラエル政府指導者は「自衛」のためにハマスやヒズボラ、またイランと戦争をしているとイスラエルによる戦争の正当性を強調している。、歴史家の色川大吉氏は、『近代日本の戦争』(岩波ジュニア新書)の中で次のように自衛権の主張による戦争について述べている。
「戦争とは何だろうか。相互の大量殺人、大量破壊行為なのだが、国家が認知さえすれば合法となり、殺人も罰せられない。なぜなら自衛のための戦争は、近代国家の固有の主権行為であり、それは国際法でも認められているからだという。ただし『自衛のため』と条件を付けても、最初から『侵略のために』戦争をしたと認める国はないのだから、実際上はすべての戦争が合法化されてしまうことになる。」
今のイスラエルの戦争を見ていると、色川氏の考えはまさにという気がするが、国連事務総長の入国禁止を行うイスラエルはその国際的孤立をいっそう深めていくだろう。戦前、孤立の道を歩んだ日本、ドイツ、イタリアは大戦に敗れて結局破滅に至ったが、イスラエルもまた度重なる戦争によって国力を消耗させ、経済は破綻し、破局の運命をたどるのだろうか。戦争ばかりしている国に積極的に移住したがるユダヤ人は今後ますます減少するだろう。
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