ガザの惨状や子どもたちを思いやるエリック・クラプトン
有名なイギリスのシンガーソングライターで、ギターリストのエリック・クラプトンは、昨年10月にハマスの奇襲攻撃があってからおよそ1カ月後に“Voice Of A Child”というインストルメンタル曲をリリースした。その映像にはガザの子どもたちの不安げな表情、涙をこぼす姿、あるいは破壊が進んだガザの様子、世界のガザ攻撃に反対する人々などの画像とともに、彼らの心情に寄り添うクラプトンの情感が表れている。
(映像はhttps://www.facebook.com/watch/?v=225904673848713
で視聴できる)。
クラプトンはピンクフロイドの創設メンバーで、ヨルダン川西岸の分離壁の建設などに抗議してきたロジャー・ウォーターズの親しい友人だ。ロジャー・ウォーターズは、イスラエルがパレスチナ占領を放棄し、イスラエルのアラブ人たちにユダヤ人と同等の権利が与えられるまで世界のミュージシャンたちはイスラエルでのコンサートを行うべきではないと訴えている。
先週のYouTubeチャンネル「ザ・リアル・ミュージック・オブザーバー」でのインタビューの中で、イスラエルが世界を動かしていると、アメリカ政界に圧力をかけるイスラエルの圧力団体(ロビー)の影響力が、アメリカの不公正、不公平な中東政策をもたらしていることを批判した。クラプトンは最近、パレスチナ旗の3色をギターに塗ってガザとの連帯を示すようになった。
クラプトンはYouTubeチャンネルの中でガザの停戦を求めたり、イスラエルに武器を売却する軍需産業からの投資撤退を求めたりするコロンビア大学の学生たちの姿に感銘を受けたこと、他方、上院公聴会で学生たちの抗議運動が起きた大学の学長を問い詰める議員の姿はまるでニュールンベルク裁判のようだったと述べた。こうした上院のショーを演出しているのはアメリカ国内で活動するイスラエル・ロビー(圧力団体)で、AIPAC(アメリカ・イスラエル好況問題委員会)のようなロビーがアメリカの中東政策を動かしていることをクラプトンはあらためて確認している。ネタニヤフ首相が上下両院合同会議に招待され、スピーチを行う権利を得たのも、アメリカ国内で活動するイスラエル・ロビーの活動が背景にあることは明らかだ。
イスラエルのメディアはこうしたクラプトンの発言が「反ユダヤ主義」だといつものように批判している。
エリック・クラプトンの代表曲に「いとしのレイラ」があるが、これは、ペルシアの詩人ニザーミー(1141?~1209?)の嵐のような激しい恋の物語『ライラとマジュヌーン』からモチーフを得たものだ。
〈あなたを恋する心の炎も悲しみの洪水を堰きとめはせず、わが眼より溢るる涙も懊悩の火を消すことはできなかった。私を破滅させたのはこの炎と涙なのだ。世を照らす太陽さえ、わが胸の炎の叫びに燃え尽きるだろう〉 ニザーミー「ライラとマジュヌーン」
ニザーミーには次のような詩の一節がある。
王に従うのは大臣のみ。
王と大臣、他に誰もいない。
これは、圧政を表現したペルシアの詩人ニザーミー(1141?~1209?)の詩編『神秘の宝庫』の中の「ヌーシールヴァーンと従臣」にある対句だ。ササン朝の王ヌーシールヴァーン(在位:531~579年)が狩をしていると、荒廃した村で二羽の鳥に遭遇する。その鳥たちは新郎と新婦なのだが、新婦の鳥が廃墟の村のいくつかを求めると、新郎は「圧制が続きそうなので、廃墟の村ならすべて差し上げましょう」と応える。その様子を見たヌーシールヴァーン王は圧政を悔い改め、公正による政治を行うことになるというものだ。その教訓は神に従い、善行を積むようにというものなのだが、現在のイスラエル・ネタニヤフ首相も国民の支持は極めて少なく、首相に従うのは極右の大臣のみという状態だ。
ちなみにクラプトンは日本でのコンサートが多く、親日家と知られ、原宿のとんかつ屋に行くのが日本での楽しみなのだそうだ。
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