国会、即時停戦と人道状況の改善の要求を可決
衆院は13日の本会議で、人道状況の改善と即時停戦を求める決議を採択した。「危機的な人道状況にある」と指摘しながら、人質の解放や、最南部ラファへの全面的な軍事作戦への反対を訴えている。「超党派人道外交議員連盟」には2月から勉強会の講師などで関わってきただけに一歩前進したことに安堵する想いでいる。
国会にはパレスチナ国家承認やパレスチナ難民の受け入れ、パレスチナへの人道支援物資の提供、ガザ社会の復興など、継続して関心をもってもらいたい事案が少なからずある。国会議員の中にはアメリカの同盟国イスラエルに配慮する議員たちもいて、なかなか一気にとはいかないだろうが、それでも日本人の良識や正義の声を世界に届けてほしいものだ。
国連はイスラエルを子どもに危害を加えている国のリストに含めた。この「ブラックリスト」に含まれているのは、ロシア、コンゴ民主共和国、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリア、イエメン、ミャンマーで、非国家主体とすれば、IS(イスラム国)、タリバン、ウガンダの「神の抵抗軍」などだ。こうした国連の動きに対してイスラエル政府には国連の脱退を主張する声もあるが、あたかも第二次世界大戦に向かっていった日本を彷彿させるようだ。
ガザの人道状況が悲惨なことは、SNSなどを通じて日本でも広く共有されるようになった。上智大学の学生たちは、テルアビブ大学との提携関係を断つことを求め、東京芸大の学生たちも、イスラエルのベツァルエル美術デザインアカデミーとの国際交流協定打ち切りを求める3万人近い署名と嘆願を大学へ提出した。ガザの悲惨な人道状況は日本の若者たちにも戦争の実相を伝え、彼らの問題意識を開拓することにもなっている。
上川外相はハマスのテロを非難する姿勢に終始しているが、昨年10月7日にハマスの奇襲攻撃が起きた背景をよく理解してほしい。イスラエルはヨルダン川西岸という占領地にイスラエル人の入植地(住宅)を建設し続けてきた。パレスチナ人の土地を奪い、彼らの住宅を破壊し、そこをイスラエルの土地として、イスラエル人の住宅を建設し続けている。ハマスの暴力を非難するならば、イスラエルの国際法違反の行為も同時に非難しなければ公平ではない。6月12日付の「アラブ・ニュース」はパレスチナを国家として承認することについて、上川外相が「包括的な平和合意の一部としてのみ実現するだろうとの見解を示した。」と報じた。これではパレスチナをはじめ、アラブ・イスラム世界の人々の心を動かすことはまるでないだろう。
どうして日本の主体的姿勢を明確に示せないのだろう。1980年10月31日に伊東正義外相が「安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」で「米国を訪問した際に中東和平の基本はパレスチナ問題であり、それはパレスチナ人の国家までつくる権利も認め、そしてイスラエルがPLO(パレスチナ解放機構)も認めることだと主張しました。」と語ったのと、上川外相とは雲泥の差がある。
外務省のページには「エルサレムの最終的地位については,将来の二国家の首都となることを前提に、交渉により決定されるべきである。我が国としては、イスラエルによる東エルサレムの併合を含め、エルサレムの最終的地位を予断するいかなる行為も決して是認しないことを強調し、パレスチナ人の住居破壊及び入植活動の継続等、東エルサレムの現状変更の試みについて深い憂慮を表明している。」とあるが、イスラエルの国際法違反の行為を批判しない上川外相の姿勢はこれまで外務省が行ってきた主張からも大きく後退している。
昨年10月以来のイスラエルのガザ攻撃はあまりに一方的で、圧倒的な軍事力の優位があるイスラエルはAIを用いた荒っぽい攻撃で多数の市民の犠牲を出している。昨年10月7日以来、イスラエルに対する日本政府の毅然とした姿勢を感じることがない。米国と歩調を合わせてUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)バイデン大統領の出した停戦案に「全面的支持」しか言わない岸田首相に国民も魅力を感ずることはないだろう。ガザ問題に対する優柔不断な姿勢も岸田政権に対する支持率16%台の数字になっていると思う。