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世界の多くの国々がネタニヤフ逮捕を表明 ―どうする日本?

 イスラエルのネタニヤフ首相にICC(国際刑事裁判所)の逮捕状が発行されたが、カナダ、フランス、スペイン、ベルギー、アイルランド、イタリア、スイスは彼が入国すれば、逮捕することを表明した。また、イギリスの首相官邸も逮捕を示唆している。(BBC23日)

カナダ、フランス、スペイン、ベルギー、アイルランド、イタリア、スイスは彼が入国すれば、逮捕することを表明した

 サウジアラビアのムハンマド皇太子も、サウジアラビアを含むGCC(湾岸協力評議会)諸国6カ国が逮捕する意向であることを明らかにしたが、ICC設置条約を締約しているアラブ諸国、南アフリカなど多くのアフリカ諸国も同様の措置をとるに違いない。ネタニヤフ首相への国際的包囲網はいっきに狭まった。日本もウクライナに侵攻したロシアを非難する際に「法の支配」を強調したが、ネタニヤフ逮捕を表明すべきだろう。

 猛反発しているのは、米国とイスラエルだが、米国のトム・コットン上院議員は「ICCはインチキ裁判所であり、カリム・カーンはイカレた狂信者だ。彼と、これらの違法な令状を執行しようとする者は皆、悲惨な目に遭うだろう。彼ら全員に、親切に思い出させてあげよう。ICCに関する米国の法律がハーグ侵攻法として知られているのには理由がある。よく考えてみてほしい。」とXに書き込んだ。「ハーグ侵攻法」の愛称で呼ばれる米軍兵士保護法は、2002年に可決され、米軍要員と同盟国をICCの訴追から守るためのものだ。この法律は、ハーグでICCに拘束されている米国人または同盟国の要員を釈放するために、軍事力を含む「必要かつ適切なあらゆる手段」を米国大統領に行使する権限を与えている。バイデン政権はICCの判断を拒絶し、リンゼイ・グラム上院議員は、ICC職員に対する制裁を求めている。

ICCの判断は現代のドレフュス事件だ。ドレフュス事件と同様に冤罪事件として終わるだろう。

 ネタニヤフ首相とガラント前国防相は「戦争の手段としての飢餓という戦争犯罪と、殺人、迫害、その他の非人道的行為という人道に対する罪を犯した共犯者」であるとICCは逮捕状発行の理由を述べている。

 ネタニヤフ首相らが実際に逮捕されるかどうかは、ICC加盟国が逮捕状を執行することにかかっていて、プーチン大統領が9月にモンゴル訪問した際は、モンゴル政府がプーチン大統領の安全を保障し逮捕することはなかった。しかし、23年にブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICS経済圏の指導者たちが南アフリカのヨハネスブルグで会合をもったとき、プーチン大統領は南アフリカに渡航することができなかった。

 ネタニヤフは、ICCが彼の政治的判断の責任を問うことができることを熟知しており、だからこそ、彼は2015年にパレスチナがICCに加盟することに反対した。しかし、ネタニヤフ首相はイスラエル国内で彼の正当性を失うことになるかもしれない。エルサレムに拠点を置き、パレスチナ占領地での人権侵害を記録している非営利団体、ベツェレムはICCの介入と国際司法裁判所(ICJ)の裁定は「私たちイスラエル人にとって、覇権、暴力、抑圧の体制を支持することは、必然的に犯罪と深刻な人権侵害を伴うことになる」と述べている。

ネタニヤフ逮捕を求める人々 東京

 EUは、ICCの強力な支持者であり、すでに多くのEU諸国が逮捕を明らかにしたように、すべてのEU加盟国の政府には、ネタニヤフに対して同様な措置をとるよう圧力がかかることは明らかだ。米国は、国際法への支持の欠如によって、今や欧米諸国の中で孤立するようになった。他方、ICCは紛争や人権侵害の被害者のための国際法の基準を強調する姿勢でその存在感を高めているが、日本はネタニヤフ逮捕については日米同盟よりも「法の支配」を強調したほうが国際社会の支持者や共感者が多く、賢明であることは言うまでもない。


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