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カーター元大統領からトランプへのアドバイス -世界が平和にする方法を教えます」
12月29日に亡くなったジミー・カーター米元大統領は、2017年4月にジョージア州の教会に集まった人々を前にトランプ大統領(当時)から中国についてアドバイスを求められたことを明らかにした。カーター氏は中国が経済的に米国に追いつき、世界一の経済大国になるような勢いで、ダイナミックな経済をもつようになったのは、米国が数十年間果てない戦争を戦うために数兆ドルを浪費していたのに対して、中国は経済発展に力を注ぎ、何億人もの国民を極度の貧困から救い出したからだとトランプ大統領に述べたと語った。
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カーター氏は教会の聴衆を前にしてもし我々(米国)が3兆ドルをインフラに投資すれば、2兆ドルの見返りがあるだろうと述べ、軍事費以外の支出は高速鉄道、崩落しない橋梁、適切に維持管理される道路、そして良質な教育となることを強調した。
ヨーロッパ帝国主義の角逐があり、第一次世界大戦に至った18世紀後半から20世紀初頭まで、米国はヨーロッパの国際政治に参加せず、経済大国となった。ところが、イラク、アフガン戦争など他国への軍事介入を経た米国は現在36兆ドルの国家債務を抱えており、米国の連邦予算の56%が国防費に充てられている。
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同じことは日本にも言えるだろう。アジア・太平洋戦争で敗戦国となった日本は戦争のない状態で経済復興に専念することができた。日本や西ドイツが目覚ましい戦後復興を遂げたのは、軍事ではなく、経済発展に力を入れたからだ。日本は戦後19年にして東京オリンピックを開催するほどの復興を遂げ、また1968年(昭和43年)には世界第2位の経済大国となった。日本の技術は世界から称賛されるようになり、アフガニスタンでは「世界で最も頭の良いのは日本人とドイツ人だ」という声にも接したことがある。日本は平和国家として世界に範を示していたが、近年では米国の後を追うように、防衛費倍増を掲げるようになり、来年度予算では防衛費は9.4%増の8.7兆円になろうとしている。
トランプ政権になれば、日本への防衛費増額の圧力は強まるに違いない。トランプ政権はその1期目にNATOの同盟国に防衛費をGDPの2%にまで増額するよう求めたが、現在では5%の増額を呼びかけている。トランプは1期目政権時代には新たな戦争に着手することはなかったものの、軍需産業に年間平均で2920億ドル支払った。これはオバマ2期目政権に比べると、24%の増加だった。カーター氏のアドバイスがあったにもかかわらず、トランプ大統領は国の借金を膨らませ、教育、医療、公共交通機関を改善するための努力を払わなかった。2017年には、トランプの米国とその同盟国はイラク、シリア、アフガニスタン、イエメン、リビア、パキスタン、ソマリアに史上最高となる60,000発以上の爆弾とミサイルを投下した。
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トランプのメンタリティはイスラエルの極右と通底するようにも見える。ファンタジーをそのまま実際の政策目標とし、グリーンランドを買収し、移民や麻薬ギャングと戦うためにメキシコに侵略し、カナダを51番目の州として併合、カナダとメキシコに25%の関税を課し、パナマ運河の管理権を奪還して運河から中国の船舶の航行を排除したいと考えている。
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他方で、イスラエルの極右もヨルダン川西岸やガザ北部を併合し、イスラエルの入植地を拡大しようとしている。イスラエル極右の構想のほうがトランプの構想よりも実現しそうでタチが悪いが、昨年5月にアミール・ヤロン・イスラエル銀行総裁はガザでの戦争に2023年から25年にかけて670億ドル(10兆5000億円ほど)の戦費がかかり、これがイスラエルの深刻な財政上の負担になると警告した。イスラエルがこの戦費をガザのインフラ、病院、教育に投資などにすれば、パレスチナとの和平や共存に貢献することになり、さらなる戦費が必要なくなるが、イスラエルにはパレスチナ人の民生の改善にはまったく関心がないようだ。
イスラエルが懸命に支出しているのはカーター氏が批判したアパルトヘイトのための予算だ。カーター氏のトランプへのアドバイスは世界の平和を構想し、実現するための知恵として日本をはじめ国際社会が傾聴すべきものだ。戦争経済は軍事産業など一部を潤すことになるものの、戦争を招いて世界を不幸にするばかりで、結局人々の幸福にはまったく役立たないことは言うまでもない。
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表紙の画像はカーター氏、広島平和記念公園で
1984年5月
https://japannews.yomiuri.co.jp/society/obituaries/20241231-230784/