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大谷選手の50・50の達成 ―世界ぜんたいを幸せにしてくれる
ドジャースの大谷翔平選手がホームランと盗塁の51・51を達成した。私が大谷選手の試合を観ると、ホームランを打たないことが多いので、最近は観ることがあまりなく、ニュースで活躍を知って喜んでいたのだが、今朝はたまたま衛星放送の中継を最初から最後まで観たら偉業の達成となった。子どもの頃、少年野球のチームに入ったり、中学校でも野球部に所属したりしていたので、野球好きの私にとっては大谷選手の活躍はとても嬉しく思える。日本人の選手がメジャーリーグでホームラン王になることなど、子どもの頃にはまったく想像もしていなかった。今日の実況は「彼は人間ではない」と絶叫していたが、その飛びぬけた能力にやはり魅力を感じてしまう。
大谷選手は日本ハム時代の年間ホームラン数は22本が最高だったので、メジャーに行ってからパワーをつける精進を重ねたのだろう。投手としても2022年には15勝を上げているが、今年メジャーリーグのカブスで活躍している今永昇太投手が現在14勝だから投手としての能力にも群を抜くものがある。
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大谷選手がファンサービスの精神にも富んでいることは、大谷選手と愛犬デコピンのボブルヘッド人形配布の試合で、デコピンに始球式をさせるための訓練を施したことにも表れていた。この始球式でデコピンはアメリカでも人気者になり、また大谷選手のイメージアップにも貢献することになった。デコピンの始球式の様子を撮ったドジャースのSNSへのアクセス数は7450万回になったという。デコピンを可愛がる様子や表情にも大谷選手の優しい性格が表れている。
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9月2日に放送されたテレビ朝日系「Qさま!! 3時間SP」では都道府県別の偉人ランキングが発表されたが、岩手県では1位が宮沢賢治、2位が大谷翔平だった。ちなみに3位は政治家の原敬、4位は詩人の石川啄木、5位は教育家の新渡戸稲造だった。おそらく若い世代では大谷選手が圧倒的な人気だったろう。
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宮沢賢治は「世界ぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。」(宮沢賢治「農民芸術概論綱要」『宮沢賢治全集』ちくま文庫)と述べたが、大谷選手もナショナリズムとは無縁のように、昨年のWBCで日本が優勝すると、「台湾や韓国も、もっともっと野球が好きになってほしい」とまるで野球の伝道師のようなことを述べていた。野球が普及していない中東やアフリカ、またヨーロッパなどにも野球を広げる活動をしてもらいたいのものだ。もちろん、日本では大谷選手の活躍に刺激されて野球に関心をもつ子どもたちは増えるだろう。大谷選手の試合を観ていると、スタンドで日の丸を広げて応援する姿があまり見かけなくなった。もはや日本だけの大谷選手ではないことを表している。
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大谷選手の社会貢献活動は枚挙にいとまがない。2021年にMVPを受賞すると、闘病中の家族や子供を支援する非営利団体「ミラクルズ・フォー・キッズ」に寄付したり、今年も能登半島の震災にドジャースとともに100万ドル(約1億4000万円)の寄付を行ったりしている。その他、企業とタイアップして全国の学校にグローブを寄付し、またアメリカ留学の機会も高校生などに与えた。
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利他の行為はめぐりめぐって自分にもかえってきて救いがあるとイスラムでは考えられるが、大谷選手の活躍も彼が重ねる善行がもたらしているのかもしれない。
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