ガザの人々はサッカー・ユーロ2024決勝でスペインを応援した
7月14日に行われたサッカーのユーロ2024決勝スペインvsイングランドで、ガザの人々はイングランドではなく、圧倒的にスペインを応援した。「アルジャジーラ」14日付の記事によれば、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校の教師であるオマール・ガヤドさん(36歳)は、昨年10月7日にイスラエルのガザ攻撃が始まると、9カ月余りの間に3度の避難を余儀なくされ、2人の娘を含む親族8人が死亡した。ガヤドさんは言葉では言い尽くせないほどの喪失感を味わう中でサッカーに安らぎを求めている。
ユーロ2024で応援するのはスペインのチームだった。「スペインはパレスチナの国家承認であれ、国際司法裁判所(ICJ)でのイスラエルに対する訴訟で南アフリカを支持することであれ、スペインの我々に対する連帯は驚くべきものだった」とガヤドさんは語っている。 またスペインのサッカーの試合でパレスチナ旗が振られているのを見ると、ガザと連帯してくれているスペインの人々の心情を嬉しく思っている。 他方で、イギリスは、イスラエルのガザ攻撃中にもイスラエルへの軍事支援と資金提供を約束し、恥ずべきものだと語る。
ガザ西部には1998年にスペインが復興資金を提供したことから「バルセロナ」と名づけられた地区があるが、そこは現在イスラエル軍の駐屯地になっている。イスラエルはガザとスペインの信頼関係を傷づけているとガヤドさんは考える。
ガヤドさんの一家は、スペインにもカタルーニャ地方の独立運動などがあり、パレスチナ人に似た民族自決の運動があることに共感を覚えている。ガヤドさんの兄のムハンマドさんは、イギリスはバルフォア宣言でパレスチナをユダヤ人に与えることを約束するなど、パレスチナ問題の原因をつくった殺人者で、どうして殺人者であるイギリスを応援できるだろうかとイギリスに対しては厳しい考えを明らかにしている。
サッカーの試合にも、パレスチナとヨーロッパ諸国の歴史的な関係が表れているが、パレスチナを含めて一般にアラブの人々は歴史意識が強いことに日本政府も留意しなければならない。そういう意味でも、日本政府がイラク戦争を支持したことはアラブ・イスラム世界の対日感情に否定的影響を及ぼしたことは間違いない。イラク戦争当時、小泉首相は「イラク戦争はテロとの戦いであって、アラブとの戦いではない」と述べていたが、そういう理屈はアラブ・イスラムの人々はまったく理解できないだろう。
スペイン出身の著名シェフ、ホセ・アンドレ氏の「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」は、ガザでの食料事情が厳しい中、ガザの人々に食事を提供してきた。今年4月、イスラエル軍がWCKの車両を攻撃して、スタッフ7人を死亡させたことがあった。また、スペインはカタルーニャ地方の州都バルセロナや、バレンシアなど地方自治体がイスラエルによるガザ攻撃を強く非難し、ガザとの恒久的停戦が成立しない限りイスラエルとの関係を断絶することを表明している。 スペイン出身の画家、ピカソはナチス・ドイツによる空爆への抗議の意思を表した「ゲルニカ」を制作したが、「ゲルニカ」のモチーフになっているのは、犠牲となる母と子、倒れる兵士、叫び声を上げる母で、また牛はファシストの「侵略者」を圧倒するための希望を表す。「ゲルニカ」が訴えるところは普遍的な価値をもっていると言え、イスラエルの空爆を受けるガザの人々の苦悩と重なる。13日、イスラエル軍がガザに行った空爆では90人余りの人々が犠牲になり、また14日はガザ中部にある国連運営の学校が攻撃されて17人が死亡した。
正義と自由への愛は
すばらしい果実を生んだ
けっして腐らない果実を
なぜならそれは幸福の味がするから
平和の殿堂は
全世界のうえに建つ
(パブロ・ピカソ/ポール・エリュアール詩画集『平和の顔』より抜粋)
表紙の画像はスペイン・ビルバオのサン・マメス・サッカー・スタジアムで行われたFCバルセロナ対オリンピック・リヨンの女子チャンピオンズリーグ決勝の前に、パレスチナの国旗が掲げられている。メッセージには、イスラエルのガザ戦争に言及して、「ジェノジットをやめろ」と書かれている[File: Vincent West/Reuters]
https://www-aljazeera-com.translate.goog/sports/2024/7/14/euro-2024-final-palestine-pledge-to-support-spain-in-its-euro-against-england-gaza-war?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc