進むイスラエルへのBDS(ボイコット、投資撤収、制裁) ―ガザ攻撃への抗議の意思を表す国際社会
「ノルウェー政府年金基金」がイスラエルのガザ攻撃を理由に、イスラエル国債を放棄した。アメリカのカリフォルニア大学デービス校自治会もイスラエルの占領とジェノサイドに加担する企業からの2000万ドルの投資撤収を求める決議を行った。
「ノルウェー政府年金基金」は、2009年9月にもイスラエル最大の軍需産業エルビト社が西岸の分離壁の建設に関与していることを理由に、エルビト社への投資から撤退することを表明している。
「ノルウェー政府年金基金」はヨーロッパの基金の中で最も規模が大きいものの一つとされている。ノルウェーは1993年のオスロ合意を仲介したように、パレスチナ和平に強い関心をもつ国で、2014年のイスラエルによるガザ攻撃の際も過剰であると強い非難を行った。
イスラエルの占領や軍事侵攻から利益を得ている企業を公表している調査団体「Who Profits Research Center」によれば、日本の日立建機、トヨタ、ソニー、三菱自動車の4社が含まれている。(東洋経済、23年11月6日の記事)日立建機のショベルカーはイスラエル軍がパレスチナ人家屋の解体に用いられている画像が「Who Profits Research Center」のウェブページにも記載された。日本の企業もイスラエルによる人権侵害に注意を払わないでいられないだろう。伊藤忠商事もイスラエルの軍事企業エルビト社との協力覚書の終了を明らかにした。
昨年10月に始まるガザ戦争はイスラエル経済をも縮小させることになり、昨年の第4四半期のイスラエル経済は、予備役の招集、ハマスなどの攻撃からイスラエル国民が避難を余儀なくされたことなどによって20%縮小した。イスラエル紙のハアレツは驚くべき落ち込みと表現しているが、イスラエル国民の一部には経済の落ち込みを背景に平和の配当が強く意識されているに違いない。
BDS運動はイスラエルの占領を終わらせ、国際法を遵守させるために2005年から始まった運動で、世界の学術団体、教会、草の根運動が支持している。
私の周辺ではアメリカの「北米中東学会(Middle East Studies Association of North Africa: MESA)」が2022年1月31日から3月22日の期間にイスラエルへのBDS(ボイコット、投資撤収、制裁)運動への支持を問う投票を行い、768:167と圧倒的多数の賛成票で、つまり80%の会員が支持することで、同年3月23日にMESAが団体としてBDS運動を支持することを決定したと表明した。このMESAの決定したところは大きく、アメリカの学問的良心はイスラエルによるアパルトヘイトを決して容認しない姿勢を見せた。
著名な学者ではイギリスのスティーヴン・ホーキング博士は、2013年6月中旬にイスラエルで開催される国際会議(「大統領会議」と呼称されるイスラエル大統領主催のもの)を欠席し、イスラエルとの学術交流を拒否する「アカデミック・ボイコット」に参加した。ホーキング博士は同年5月3日付の書面の中で、パレスチナ人研究者たちの「アカデミック・ボイコット」を尊重するようにという求めに応じたことを紹介した。「かりに会議に出席すれば、イスラエルの現政府のやり方は大悲劇をもたらすという見解を述べたであろう」とも語った。
ホーキング博士は、イスラエルの研究機関、とりわけ大学がパレスチナ人への抑圧に加担・協力していることに疑義を抱き、特にパレスチナ人たちの犠牲をもたらすイスラエル軍との共同の研究や訓練については強く否定的な見解をもっていた。ホーキング博士は、イスラエル政府が大学教員、芸術家、さらには他の文化関係者たちを動員して国のイメージを高め、国際社会の目をパレスチナ人への抑圧からそらそうとしていると考えていた。
日本の外務省はイスラエルが占領地における入植地を拡大するたびに批判する声明を出しているが、政治家からはイスラエル軍がガザ住民3万人を殺害しても強い批判の声が聞こえてこない。かつて田中角栄政権は明確にイスラエルの占領地からの撤退を求めたが、岸田政権を含めて最近の日本政府には米国に対する遠慮からかイスラエルの占領を批判する姿勢がまるで見られない。バイデン政権はイスラエルの占領を認めない姿勢を明らかにし、パレスチナ問題の2国家解決を唱えている。バイデン大統領も、本音のところでは日本政府にもイスラエル批判をやってもらいたいと思っているように思えるが・・・。