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リチャード・ギアが見たヨルダン川西岸のヘブロンはアメリカの「古い南部」と同じ人種差別の町だった

8月20日、ヨルダン川西岸のイスラエル占領地カルキリーヤの町でイスラエル人入植者がパレスチナの救急車の通行を妨害する動画がアップされた。その動画は次のアドレスにあるが、占領地における入植活動は国際法によって禁じられているので、妨害したのは「不法入植者」ということになる。

 不法入植者たちの人種的優越感を誇示するような光景だが、ヨルダン川西岸の占領地ではイスラエル人入植者による暴力やハラスメントが増加している。入植者の中で特に過激とされるのは、西岸のヘブロンの町に住む極右勢力だ。18日もイスラエルの入植者がヘブロン西部テル・ルメイダ地区でパレスチナ人女性をオートバイで当て逃げする事件が発生した。

https://imemc.org/article/illegal-israeli-settler-runs-over-a-palestinian-woman-in-hebron/?fbclid=IwAR2fVsi11BgR0FoN1khDQc3_obn65kKWTRE2nLfX0k8s1IIgTj1GZF1RMdQ

 アメリカの俳優リチャード・ギアが2017年3月にヨルダン川西岸ヘブロンの街を訪れた様子はユーチューブにある。

 この映像の中でギアもイスラエル兵からパスポートの提示を求められている。これは治安に過敏とも言えるイスラエルに行けば日常的に見られる光景で、イスラエルでは都市から都市などへの移動の際に頻繁にIDを見せるように言われる。 ギアはヘブロンのパレスチナ人の様子を見て、「まったく奇妙だ。これは死の街だ。誰がこの町を所有しているんだろう?彼ら(入植者たち)は『自分は守られている』という感覚だ。(入植者たちは)『自分がやろうと思えば何でもできる』(と思っている)、それは(彼らにとって)『どこが境界か?』という感覚だ。ちょうどアメリカの『古い南部』と同じだ。黒人はどこに行けるのか知っていた。あの井戸の水は飲めた、あそこには行けない、あそこでは食べてはいけないなどはよくわかっていた(黒人たちは)頭を殴られたり、リンチに遭ったりするのが嫌だったら一線を超えることはできなかった」などと述べた。

 リチャード・ギアと同行した女性は、ここには800人の入植者を守るために、600人のイスラエル兵がいると、イスラエル国家の「異常ぶり」を説明している。守られているのは、ユダヤ教原理主義のイデオロギーによって動機づけられた暴力をふるう入植者たちで、暴力を受けるパレスチナ人たちではない。 入植者たちの間で台頭するのは「ヒルトップ・ユース」と英語で呼ばれる過激なイデオロギーで「パレスチナ人は聖地をレイプしている。彼らは追放しなければならない。」というものだ(ウィキより)。

リチャード・ギア、ヘブロンの町で ヘブロンは場所によってはギアが言うように「死の街」だ https://www.timesofisrael.com/richard-gere-likens-hebron-to-segregation-in-old-south/?fbclid=IwAR0iZISJp3JIlBZPLlyh5YBDLlxcJUUK-ll36TKpMYVs46Y6AuNTfdYmnhY

 ギアが述べるように、ヘブロンのパレスチナ人たちは日々恐怖の中で生活し、入植者たちを刺激しないような配慮を強いられながら生活している。イスラエルはヘブロンのパレスチナ人居住地の中に入植地をつくり、こうした入植地はパレスチナ人たちの移動の障害にもなり、ヘブロンの街を次第に侵食していくかのようだ。今年5月にもヘブロンのパレスチナ人の住宅70棟が接収する計画が明らかにされた。

 ヘブロンの町はアラビア語名「アル・ハリール(アブラハム)」、正式には「アル・ハリール・アル・ラフマーン(慈愛深きアブラハム)」という。イスラームではメッカ、メディナ、エルサレムに次ぐ4番目の聖地だ。ヘブロンは預言者ムハンマドがエルサレムから昇天する際に立ち寄ったところと考えられ、ムスリムの巡礼の地でもある。

 ヘブロンはエルサレムの南32キロほどにあり、ハリール山地の温暖な気候でブドウなど果樹の栽培に適して、ワイン造りも行われてきた。 ヘブロンは1099年に十字軍の支配を受けるようになったが、ムスリムのクルド人名将サラディンがユダヤ人の支援を受けながら、1187年に奪還した。オスマン帝国の支配は15世紀後半に始まったが、ユダヤ教徒たちには信仰活動の自由を保障し、「ユダヤ教徒のシェイク」という自治区の長を設け、彼らのコミュニティーに政府が干渉することはなかった。その共存関係が崩れるのは1967年の第三次中東戦争によってイスラエルの占領が続き、イスラエルの入植地が拡大している。

ヘブロンの町は昔のアメリカ南部と同様だーリチャード・ギア https://www.ampalestine.org/organize/campaigns/free-human-rights-defender-issa-amro?fbclid=IwAR0cX8uau14VmVB8jm4i9Cb45osZqYCfpsPFdlI7bHUkbuYltnKQEJ_BqPg

 過激なイスラエル人入植者がパレスチナ人を圧迫、差別するアパルトヘイトの状態を国際社会が座視したままだと、ヘブロンの町は、リチャード・ギアが見たようにパレスチナ人たちが極度の差別を受けたまま、やがてイスラエルに乗っ取られてしまう可能性が高いと言わざるを得ない。リチャード・ギアが観察したように、極右イスラエル人入植者たちが行っていることは、アメリカ南部の白人の人種主義者のようでもあり、またユダヤ人たちを排斥、虐殺したナチズムと同様であり、イスラエルという国はナチズムの人種主義を否定することによって成立した国ではなかったか。

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