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パレスチナ国家承認はパレスチナ人に法的保護を与える -日本に切に求められるパレスチナ国家承認

 ガザの停戦が19日に発効すると、即座にイスラエル軍は占領地であるヨルダン川西岸のジェニンを空爆し、少なくとも7人が殺害され、35人が負傷した。

イスラエルはジェニンで60人を拘束した


 日本政府がパレスチナの民族自決権を認めたのは田中角栄政権だった。日本の外務省に「日本政府が関与した重要共同コミュニケ及びその他の外交文書」というタイトルのページがある。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1975_2/s50-shiryou-3.htm

 その中で1974年11月7日から9日までエジプト・カイロを訪問した木村俊夫外相は73年11月22日に発表した声明に述べられている日本国政府の次の諸原則を再確認している。(1)武力による領土の獲得及び占領の許されざること。(2)1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること。(3)域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず,このための保障措置がとられるべきこと。(4)中東における公正,かつ,永続的平和の実現に当ってパレスチナ人民の国連憲章に基づく正当な権利が承認され,尊重されること。

田中角栄政権で外相を務めた木村俊夫氏 https://www.town.toin.lg.jp/soshiki/1017/1/1/58.html

 木村外相は永続的平和を達成するためのサダト大統領のたゆまぬ努力に対し、深く敬意を表し、かかる努力ができるだけ近い将来に実を結ぶことを願うと表明したが、その後サダト大統領の和平への願望は1978年9月のキャンプ・デーヴィッド合意になって実現した。木村俊夫氏はその後日本パレスチナ議員友好連盟の会長となって、PLOのアラファト議長の初来日(1981年10月)にも尽力した。日本はパレスチナ国家承認に向けて動いていたが、2000年代に入ると、米国への配慮が強くなり、イスラエルとの防衛協力の成立など親イスラエル的姿勢に傾斜していった。 パレスチナ国家承認は持続可能な和平のために必要だ。国家をもたないパレスチナ人は法的な保護も受けることなく、彼らの福利や安全に責任を負う政府も機関も存在しないことになる。イスラエルの占領下に置かれるパレスチナ人には日本国憲法で認められている表現の自由、集会・結社の自由もない。

1981年10月、アラファト議長初来日で。木村俊夫氏と山口淑子氏と。

 ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザが占領下に置かれていることはイスラエルがパレスチナ人を意のままにコントロールすることになっている。パレスチナに国家主権があれば、イスラエルによるパレスチナ人の土地没収についても歯止めにもなろう。イスラエルのネタニヤフ政権は15カ月間にわたってガザを攻撃して、多大な人的犠牲をもたらしたが、パレスチナ人を下位に置いて支配しているという差別観や高圧的姿勢が明白だった。

 19日、ガザは停戦となったが、イスラエル人の人質3人とパレスチナ人90人が釈放された。解放された69人が女性で、21人が子どもだ。釈放されたパレスチナ人はイスラエルの占領に対する反対などを唱えた人々だが、パレスチナ人には言論の自由に対する法的保護もない。

 今回解放されたパレスチナ人の中にヨルダン川西岸ラマラ(ラマッラー)出身のルーラー・ハッサネインさん(1994年生まれ)がいる。ルーラーさんはフリーランスのジャーナリストで「ワタン(祖国)メディア・ネットワーク」で働いていたが、昨年3月19日にベツレヘムで理由を示されないままに拘束されてパソコンと携帯電話を没収され、イスラエル北部のハイファ近郊のデイモン刑務所に収監されていた。世界各国の言論弾圧を監視する団体「ジャーナリスト保護委員会 (CPJ:Committee to Protect Journalists, Inc.)」はルーラーさんが3月25日にエルサレム北西にあるオフェール刑務所に軍事法廷に出廷し、SNSでの扇動とイスラエルによって禁止されている団体を支援した罪で起訴されたことが明らかにされた。ルーラーさんはイスラエルのガザ全面戦争に対する自らの苦悩や他のパレスチナ人たちの困難をリツイートしていた。このように、イスラエル占領下ではパレスチナ人の言論の自由が認められていない。

今回解放されたルーラーさん

 パレスチナに関する国連特別報告者は23年秋に出された報告書の中で、「1967年以来、イスラエル軍が制定、施行、裁定した権威主義的規則の下で、12歳の子供を含む80万人以上のパレスチナ人が逮捕され拘留されている」と述べている。パレスチナ人は、無許可に入植地拡大に反対するなどの政治的演説を行うと長期拘留の対象となり、証拠もなく、有罪とされ、令状もなく逮捕され、また起訴も裁判もなく、勾留されている。現在の政治犯の数は6000人余りとも、8000人以上とも推定されているが、「行政拘禁」では1カ月から6カ月間拘禁され、無期限に延長される場合もある。昨年は前半だけでも570人のパレスチナ人の子どもたちが拘留されたが、多くが投石などの微罪によるものだった。

表紙の画像は参議院・山添拓氏の質問


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