イスラエルへの抗議はフランスの大学にも飛び火 ―学生の運動がアメリカ・イスラエルの「特殊関係」を変えるか?
ガザ停戦やイスラエル企業からの投資撤収を求めるアメリカの学生たちの運動は、フランスにも飛び火し、マクロン大統領などを輩出してきたフランスの名門パリ政治学院でもガザでの戦闘に反対するが学生たちが建物の一部を占拠した。
占領地におけるイスラエルによる国際法違反の行為すら容認するアメリカ政府の姿勢がパレスチナ和平の停滞をもたらしてきたことはまぎれもない。アメリカはロシアのウクライナ侵攻を非難するが、占領地におけるイスラエル人入植地の拡大については、いっこうに批判することがない。こうしたアメリカ政府の姿勢が不正義なものとして、アラブ・イスラム世界の反発を招き、アルカイダなど過激派の反米、反ヨーロッパのテロの動機なってきた。アメリカがイスラエルの入植地拡大を黙認し続ければ、パレスチナ国家創設は事実上不可能になる。実際、ガザ攻撃などイスラエルのネタニヤフ政権の強硬な姿勢、イスラエル極右のパレスチナ全域(現イスラエル領とヨルダン川西岸、ガザ、ゴラン高原を合わせた地域)をイスラエル国家の領土にするという主張はパレスチナ人たちの前途を暗くするものだ。
イスラエルに偏重したアメリカの政策を変えるにはどうしたらよいか。アメリカがロシアや中国、さらにはアラブ諸国の非難や批判を聞き入れることはないだろう。アメリカを変えるには、アメリカの世論の高まりが、あまりに露骨に、理不尽にイスラエルを支持する政治家たちの選挙での落選をもたらすほどになれば、アメリカのイスラエル支持の政策も公平なものへと変化するに違いない。アメリカの政治家がイスラエル支持の立場をとるのは、親イスラエルのロビー(圧力団体)が政治家たちの当落のカギを握っているからだが、議員たちのイスラエル支持の姿勢が選挙にマイナスということになれば、アメリカの政治家たちもイスラエル支持の姿勢を変えざるを得ない。
現に、11月に大統領選挙があるバイデン大統領は、イスラエルのガザ攻撃を非難したり、即時停戦を求めたりする学生たちの動静を無視できなくなり、ガザ住民に物資を届ける浮桟橋の建設を始めた。その意味でも現在の学生たちの運動は、従来のアメリカ・イスラエルの「特殊関係」を変えるような可能性をもつ歴史的な性格をもつかもしれない。アメリカ社会に影響力のある40以上の大学で、イスラエルのガザ攻撃を非難する運動が開始され、ガザ停戦や、イスラエルに関連する企業からの大学の投資撤収を求めるようになった。最近の学生たちの動静を見ていると、アメリカの中東政策の潮目が変わりつつあるという印象すら受ける。多くの大学でコロンビア大学に倣って抗議テントを組み立てるようになり、学生たちの間には他大学とも連携する動きも現れた。
イスラエルは2018年7月に成立したユダヤ人国家法で、国内のユダヤ人のみに民族自決権を認め、イスラエルはユダヤ人の国と規定した。ユダヤ人の言語であるヘブライ語のみを国の公用語として、アラブ人のアラビア語を国の公用語からはずし、「特別な地位」に格下げした。さらに、イスラエル政府がヨルダン川西岸の入植地を拡大することが奨励して、促進するとされている。イスラエル政府が堂々と国際法違反を行うという決意をこのユダヤ人国家法では明記されている。
パレスチナ問題のどこに希望を見出すかという議論は長年様々な機会や場で行われてきたが、最近のアメリカの学生たちの運動はイスラエルの国際法違反を黙認してきたアメリカ政府の偏重したイスラエル政策を変えるという点で、その希望になる可能性が大いにあると思う。
表紙の画像は
「植民地主義の境界を取り払え」
パリ政治学院で
https://www.aljazeera.com/news/2024/4/26/are-us-campus-protests-against-israels-war-on-gaza-going-global
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