川口市におけるクルド人ヘイトの問題とゲッベルスの相似性
埼玉県川口市でクルド人に対するデマやヘイトが目立つようになってから1年余りが経つ。「川口市、発砲事件、犯人はどうせクルド人でしょ」「クルド人は野蛮な人種だから強制送還した方が良い」「クルド人はテロリスト集団」などの書き込みが✕には続き(東京新聞今年7月15日)、さらには「帰れ クソゴミクルド人 犯罪者、トルコへ帰れ」「お前らクルド人全員殺してやるからな 覚悟しとけ」「はよしねよクルド人 気持ち悪い人種は生きんな はよじさつしろ」「皆殺しにして、豚の餌にしてやる」など聞くに耐えない犯罪とも言えるようなものもあるらしい(「マガジン9条」雨宮処凛さんの記事、今年9月4日)。
川口市のクルド人たちは日本人とともに街頭でパトロールを行うなど、コミュニティーに融け込む努力を払ってきた。コンビニでクルド人の少年たちが固まって談笑していることに苦情が出たため、クルド人たちがパトロールに参加するようになった。日本人だけのパトロールでは、クルド人たちを排除するように見られかねない。そこには、クルド人を迎え入れる側の日本人の側の工夫もあった。
5年前に面談した日本クルド文化協会の事務局長ワッカス・チョーラク氏によれば、クルド人たちは川口市でクルドの料理教室、クルド音楽のコンサート、フットサル大会などを催したり、またゴミ拾いの活動も行ったりしている。さらに、クルド人の子どもたちには日本語教室を開いて、日本人とのコミュニケーションを円滑にしようともしている。
日本に居住するクルド人はほとんどがトルコ出身だが、トルコ軍とクルド武装勢力の戦闘から逃れるなどの理由で日本にやって来るが、これまで9700人のトルコ人が難民申請を行ったが、難民認定されたのはわずかに1人。日本政府はトルコとの良好な関係に配慮して、クルド人を難民として認定しないという方針が日本政府にはあるのではないかとチョーラク事務局長は語っていた。日本人はトルコによるクルド人弾圧を知らないが、それは日本のトルコ研究者たちが、トルコによるクルド人への人権侵害に触れないことにも理由があるというのがチョーラク氏の考えだった。
川口市周辺に住むクルド人は川口市周辺で日本の若者が従事しない解体作業などの仕事をしている。川口市周辺の外国人の中ではクルド人はむしろ少数派で、中国人の20分の1ぐらいだそうだ。難民申請をしても却下された外国人は「仮放免」となり、本来は労働をしてはならないが、解体業者たちもクルド人の労働に頼っている。少子高齢化の日本社会が外国人労働に依存するのは、農業、漁業、介護などその分野は枚挙にいとまがない。
川口市は昨年9月に国に要望書を出し、不法行為を行う外国人は法に基づいて厳正に対処してほしいという要望を出す一方で、仮放免者の就労を可能にする制度を構築し、また健康保険やその他の行政サービスについて外国人に対する援助措置等を考えてほしいと要望した。仮放免の外国人の子弟たちの教育も国は検討しなければならないだろう。これらを放置したままというのは無責任なように思う。
9月2日にNHKで「映像の世紀 バタフライエフェクト ゲッベルス 狂気と熱狂の扇動者」が放送され、ナチス・ドイツのゲッベルスの宣伝戦略が紹介されていた。ワイマール共和国下でゲッベルスは報道や出版業界への就職を望んだが、これらの業種はユダヤ人の経営者が多かった。ゲッベルスが報道や出版の職に就けなかったこともゲッベルスの反ユダヤ主義の主張に拍車をかけた。「ユダヤ人というのは本質的に我々と正反対なのである。彼らは我々の民族を辱め、理想を汚し、国民の力を萎えさせ、道徳を堕落させた。」とユダヤ人に対するヘイトやデマを煽っていく。
「ウソも何回も繰り返せば最後は信じられるようになるのだ」 ―ゲッベルス
ゲッベルスは「プロパガンダは人々を説得し、ある考えに駆り立てることができればよいのである。大衆とは弱く臆病で、怠惰な人々である アイデアがシンプルで 日常生活に関連していればいるほどそれをみんなに伝えたいという欲求が高まっていく一人一人がそれを大衆に広めるならば我々の世界観が国家を乗っ取る日が来るだろう。」と語ったが、川口市のクルド人に対するヘイトやデマにもかつてドイツ人が破滅に至った危険な心理的からくりが働き、ヘイトやデモで扇動し、それが増幅されていくことに喜びを感じるような悪質な人物たちがいるに違いない。
表紙の画像は
川口のクルド人は「夜の巡回」で共生を目指す SNSで強まる非難…でも「この街を故郷と思っている」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/291460
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