ウクライナからの避難民は都営住宅で生活するのに、パレスチナ避難民の受け入れはゼロ ―東京都の明白な「ダブルスタンダード(二重基準)」
ガザと連帯する上智大学の学生たちのアピールの中に、大学はロシアのウクライナ侵攻の際には、侵攻開始後3週間で非難のメッセージを出したのに、上智大学学長のガザ攻撃非難のメッセージはイスラエルの攻撃が始まってから8カ月近く経ってからだったという大学の対応の遅さを非難するものがあった。
ウクライナとパレスチナに関する二重基準は、東京都の小池知事の姿勢にも顕著に表れている。小池知事は22年2月24日にロシアがウクライナに侵攻すると、翌月の3月11日に当面ウクライナからの避難民を都営住宅百戸で受け入れ、最大700戸まで拡大する考えを明らかにした。小池氏は「タイミングを逸することなく機動的に対処していく」とも述べた。ウクライナ避難民を受け入れるのは結構だが、従来ごく少人数しか受け入れなかったアフガンやシリアなど中東難民に比べると、異例で、破格の扱いだった。
今年2月14日付の毎日新聞では、出入国在留管理庁の調査したところでは2月7日時点で日本国内にいるウクライナ避難民のうち、約3割に当たる599人が東京都内で暮らしている。都営住宅へのウクライナ避難民の入居が始まったのは22年3月末だから、小池知事の受け入れ表明があってから間もなく実際の入居が始まった。今年1月末時点で、300世帯460人のウクライナ人が都営住宅で暮らし、都内に滞在するウクライナ避難民の8割が都営住宅に収容されている。
これに対して、パレスチナ避難民の受け入れは、もうすぐイスラエルのガザ攻撃が始まってから9カ月が経とうとするのにゼロ、皆無だ。明白なダブルスタンダードと言わざるを得ない。岸田首相も22年3月2日、小池都知事よりも先にウクライナ避難民を受け入れる考えを明らかにし、親族や知人が日本にいるウクライナ人から受け入れを開始し、人道的配慮からその後を判断すると語った。イスラエルのガザ攻撃が始まったのは昨年10月7日、犠牲者は4万人近くなるのに、岸田首相がパレスチナ避難民の受け入れに言及することはまったくない。
小池知事も岸田首相もパレスチナ避難民の受け入れには関心がないのだろう。ウクライナ避難民はアメリカの敵であるロシアが発生させたものだが、パレスチナ避難民はアメリカの同盟国イスラエルの攻撃によって生じたものだ。人命に軽重などあってはならないが、パレスチナ避難民の受け入れについては、アメリカとの同盟関係という要因があることは明らかだ。また岸田氏や小池氏のダブルスタンダードの背景には彼らの人種観も表れているのかもしれない。
イラク開戦の際、小池知事を含む「日本国際フォーラム緊急提言委員会有志」は「米国支持の旗幟を鮮明にせよ」とアピールを行い、米国の戦争と一体となることを主張した。根拠も曖昧な、正当性のない戦争で、小池氏はアラブ世界での生活体験があるにもかかわらず、イラクをかばうことはまったくなかった。
イギリスでは、2016年7月6日、イラク戦争を検証する「イラク調査委員会」は、2003年3月の時点で、イラクのフセイン大統領から差し迫った脅威はなく、イラク参戦は不当だったと結論づけた。小池氏からは戦争を支持したことについて反省の弁はまったく聞かれない。
小池氏の政治姿勢にはタカ派的性格が目立ち、雑誌『VOICE』2003年3月号で「核武装の選択肢は十分ありうる発言」と発言し、また特別秘書に、日本国憲法無効、大日本帝国憲法の復活など、戦前の「国家主義」を夢想する野田数氏を就任させたことがある。こんなところにも小池氏の国家観、安全保障観が表れているが、パレスチナ避難民の受け入れは彼女が思い描く日本の国家観にはそぐわないということか。