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我々は歴史の正しい側にいる ―イーロン・マスクのナチス式敬礼に反発する人々

 イーロン・マスクはトランプ大統領の就任式でナチス式敬礼を行った。右腕を上げて指を上に向けただけではなく、さらに右手を胸に叩きつけ、しばらくの間立ち止まった。会場に集まった数千人のトランプ支持者たちは歓声を上げた。この彼の動作については、「ファシズム」「不快」「攻撃的」などの声がネット上で上がったように、多くの人はナチス的敬礼と思ったに違いない。しかし、親イスラエル組織の「名誉毀損防止同盟(ADL)」はナチスの敬礼ではなく、「ぎこちないジェスチャー(awkward gesture)」と形容した。マスクのあの動作を見て「ぎこちない」と感じた人はごく少数だったろう。このADLの見方は、この組織の主張の正当性をも疑わせるものだ。ユダヤ人の進歩派グループ「IfNotNow」の広報担当者マタン・アラド・ニーマン氏は、「私はホロコースト生存者の孫なので、ナチス式敬礼を見ればそれが何なのか分かります。そして、イーロン・マスクがやっていたのはまさにそれでした。」と語っている。

アメリカの終焉? https://www.youtube.com/watch?v=uQ9MMHejzSU


 日ごろのマスクの言動に接していれば、マスクがナチス式敬礼をしたと見られるのも当然だ。昨年5月までスコットランド自治政府第一首相だったハムザ・ユーサフ氏は「イーロン・マスクは地球上で最も危険な男の一人」と形容してマスクに強く反発している。ユーサフ氏の妻ナーディヤー・ナフラ氏はパレスチナ系で、スコットランド・ダンディ市の市会議員を務め、パレスチナの伝統衣装を着用してスコットランド議会を訪問したこともあるなどイスラムのアイデンティティーに強く訴えているが、スコットランドはクリスチャン以外の信仰をもつ人々が政治の表舞台で活躍するようになっている。そのような多様性をもつスコットランドの政治家から見れば極右的傾向を煽るマスクの姿勢は許容できないものであるに違いない。

ハムザ・ユーサフ氏 https://l.facebook.com/l.php?u=https%3A%2F%2Fwww.iestork.org%2Fhumza-yousaf-scotlands-first-minister%2F%3Ffbclid%3DIwZXh0bgNhZW0CMTAAAR1xnQQY2mNJJczs0VApDNXd9cuUU1RX3SBKQhtuEw3bs2bZuP07fi0AUHQ_aem_0BSJFpY5FM81Pfw4cfcX_A&h=AT2EJf7u2TujF0W3EdQnQgugWBUu_Dv5KbVBSm8eYEyLlRWOdiq76SnaMdX4cNMp9X7Rnii3rR9k4uRwqK0zVtQY2zCzb_RWgDavLzIXcsHyjpWqM1UVOQVZuiW09lSEX39e&__tn__=-UK*F


 マスクは、キール・スターマー首相の解任を求めるなど、イギリス政治に介入する姿勢を鮮明にし、また反移民やイスラム・ヘイトの扇動的な発言を行い、ヨーロッパ全土の極右人物への支持を公然と表明している。

パレスチナ解放を主張すれば反ユダヤ主義だが、イーロン・マスクのナチス的敬礼は違う https://x.com/andrewfeinstein


 ユーサフ氏は1月9日、ソーシャルメディアプラットフォーム「X」への投稿で、マスク氏が有害なイデオロギーを増幅し、偽情報を広め、彼の影響力を利用して民主主義を弱体化させていると非難した。「Xという巨大なプラットフォームを持つ強力な個人が有害なレトリックを増幅している。彼らは偏見を常態化させ、偽情報を広めて分断を生み出している。・・・懸念すべきことは反イスラム教徒の憎悪に駆り立てられた彼の極右への共感が、世界で最も裕福な男の原動力であるように思われる。」とユーサフ氏は述べている。

 ユーサフ氏の懸念は日本でも言い得るようになっている。マスクが煽るような風潮によって「クルド人怖い」などのムスリム・ヘイトの差別的な書き込みが現れるようになった。「川口市、発砲事件、犯人はどうせクルド人でしょ」「クルド人は野蛮な人種だから強制送還した方が良い」「クルド人はテロリスト集団」などの書き込みがXには続き(東京新聞今年7月15日)、さらには「帰れ クソゴミクルド人 犯罪者、トルコへ帰れ」「お前らクルド人全員殺してやるからな 覚悟しとけ」「はよしねよクルド人 気持ち悪い人種は生きんな はよじさつしろ」「皆殺しにして、豚の餌にしてやる」など聞くに耐えない犯罪と言えるものもある(「マガジン9条」雨宮処凛さんの記事、今年9月4日)。

日本の恥だと思います https://kurd-tomoni.com/20240404mainichisinbun_kurd/


 ユーサフ氏はまた、マスクのレトリックが1930年代の極右ポピュリズムを反映していると述べたが、トランプが再登場した米国も、極右政党が台頭するヨーロッパ、イスラエル、そしてクルド人を排斥する傾向が見られる日本も極右ポピュリズムが勢力を伸長させている。

 21日、イスラエルはまたしてもヨルダン川西岸ジェニンの難民キャンプを攻撃し、少なくとも10人が死亡した。23年7月にイスラエル軍がジェニンを攻撃した際に、ユーサフ氏と同じスコットランドの歌手デクラン・ウェルシュは「我々は歴史の正しい側にいる」と述べ、「ネルソン・マンデラは言った。『パレスチナが自由にならない限り我々の自由はない』と。・・・難民たちはキャンプ以外に住む場所がない。子どもたちが眠り、生活し、遊ぶ場所は他にはないのだ。・・・イスラエルを批判することによって我々は歴史の正しい側にいる。難民キャンプは爆撃されてはならないのだ。まったく正当化できない。」と語っている。我々はイーロン・マスクを批判することによって歴史の正しい側にいると確信する。

デクラン・ウェルシュ https://www.widedays.com/declan-welsh-and-the-decadent-west


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