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手術を受けてきづいたこと

去る6月。

通っていた婦人科で身体にすこしおかしなところが見つかったので、手術を受けてきました。

いままで幸運にも健康で、最高に大きな病気といえば重度の扁桃炎で入院したぐらい。(本当につらかった)
手術なんて全く受けたことがなかったので、「本当に麻酔で眠れるのか…?」「痛くないのか…?」と、決まった時からガタガタ怯えていました。

当日朝、10時半に病院へ。

小鹿のように震えるわたしを、ショートカットの、ぱんと弾ける笑顔の看護師さんが出迎えてくれました。肌が白いのに健康的でまぶしい。年齢はたぶん、同年代ぐらいでしょうか。

「手術、はじめてですか?」
「はい、実は…」
「はじめては怖いよね〜。ちゃんと私たちがサポートするから!安心してくださいね」

そういって、コロコロ笑う彼女。自分と正反対の落ち着いた様子に、小学校の先生のような成熟した気配を感じます。

準備する部屋に入ると、早速流れを丁寧に説明してくれました。

「最初に準備でxxとxxっていう処理をします。その時にはこういう痛みがあって…。でも、痛いのはここまでだから大丈夫。そのあとは寝てたら終わっちゃうからね。」
「痛いの我慢できなかったらすぐに薬も使うから。頑張ろうね!」

痛いのかどうか、どれぐらい痛いのか、どれぐらい続くのか。
まさに不安に思っていることをメンタリストDAIGOのように読み取り、説明してくれる彼女。思っていることを言い当てられると、信仰心が高まると何かの漫画で読みました。

好き嫌いが別れるかもしれないけど、小さい子にするように話しかけてくれるのも、わたしにとってはとても心地よかったです。不安な時は誰かに甘えたくなるので。

その後、痛いと言われていた事前処置は「う゛っ」と声が出るくらいには痛かったです。でも、事前に痛いと言われていたので心の準備ができました。

その後二時間ぐらい、痛みを引き摺りながら安静にするという地獄中も「痛いよね」と励ましてくれる看護師さん。

点滴を刺してもらう時、彼女の耳にたくさんのピアス穴があいていることに気づきました。
耳たぶに3個と軟骨。

それを見た時、彼女のプライベートをふと想像しました。

もしかして、ロックフェスとか行くんだろうか。好きなアーティストは誰だろう。きっとハードな仕事だから、帰ったら愚痴とか言うんだろうか。

プライベートの彼女は、こんなふうに牧歌的な感じではなく、このやさしさはあくまで「オン」なのだろうか。
そう考えると、ちょっと寂しくなりました。

でも、彼女の発する言葉やあふれ出る温かい感じを見ていると、本質的、根源的にそんな人間であるような感じがするのでした。

そんなことを考えていると、突然「みやさん、行きますよ!」と呼ばれ、あれよあれよと手術台へ。

器具を装着される時は、ほとんどパニックになっていました(迷惑)。
特に酸素マスクをつけられる時、「医龍やコードブルーで見るやつ!」と不安が最高潮に。

でも、麻酔医の先生が「深呼吸してー!いーち、にーい…」と言ったところから何も覚えていません。きづいたら、準備室のベッドのうえで、看護師さんに名前を呼ばれているところでした。

「もう終わりましたよ~。頑張ったね。まだゆっくり寝ていていいよ。」

看護師さんは動けないわたしにそう声をかけ、乱れた布団をやさしくかけ直してくれました。

(もう、終わった…?何も覚えてないし、痛くもないのに…?)
本当に不思議な感覚でした。

看護師さんが準備室から出て一人になると、なぜだか涙がぽろぽろと出てきました。

麻酔で自律神経が乱れているのか…?と思ったけれど、どうやら自分は嬉しくて泣いているようでした。

手術が終わった安心感もあったし、なによりこうして同性の誰かに布団をかけなおしてもらい、頑張ったねと無条件に褒めてもらえる。ここ何年も、こんなことはなかったんじゃないだろうか。

仕事で気を張って、DXとか難しいことを話して、交渉のために駆け引きをして。ほんとうは誰かにこんなふうに優しくしてもらいたかった。子供にするように話しかけてほしかった。

そう気づくと涙が止まらず、あとからあとから零れ落ちてきました。

点滴の生えた腕で涙をぬぐうと痛い。それなのに、心の痛みはするすると溶けて抜けていくようでした。

ひとしきり泣くと、すっきりとした気分とまどろみが同時にあり、三時頃まですやすやと眠りました。完全寝坊です。

お水を飲むことが解禁され、無印の「水」ボトル(透明のボトルに「水」という文字が印字されている)で飲んでいたら「水て(笑)」とちゃんと突っ込んでくれる看護師さん。

もしかして、プライベートで彼女と会えていたら友達になれていたかな。わたしも、人にこんな顔で笑いかけられていただろうか。

彼女に触れて、温かい気持ちになった反面、自分の他人との向き合い方がすこし恥ずかしくなったのでした。

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さとしま みや
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