膝のうえにいる

ねこが膝のうえにいる
まえあしを交互にぐーぱあさせている
くびのねっこやら鼻の筋やら撫でてみていると
ごうごうと鳴って目を線にする
撫でる手をやすめれば音はやむけど
再開すればごうごうと鳴る

このねこはまくらのほしいタイプで
わたしのウデがちょうどよさそう
まくらにかおをうずめるのも好きで
ウデと胴のあいだに鼻を押し込みたがる

そうしてそこですうすうと言う
わたしはほんとうにすうすうと言って眠るものがめずらしくて
撫でる手をやすめて何もしなくて
すうすう言うものをじいと見てしまう

ねこを見ているとわたしは大きいなとおもう
わたしは大きくて、このひとはとてもちいさい
わたしがほんらい獰猛なものなら
この脳味噌をがぶりと噛んでちゅうちゅうと吸ってしまえると思う
わたしがたとえ獰猛でなくても
赤子の首よりたやすくひねってぱくぱくと食んでしまえると思う
でも、わたしはぜんぜんそうしない
わたしはぜったいそうしない

ねこは時折わたしを見透かす
めとめをあわせて、引力を生んで
わたしのうらがわのわたしを脅す
脅されたわたしは報いようとおもう
ちいさないのちに逆らえるものはいない

ねこが膝のうえにいる
眠りこけてきてすうすうを超えて
ぷくぷく言って肺をうごかす
わたしはというとなんにもしない
なんにもしないで、報いようとして、
膝のうえをただじいと見ている

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