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御社のエンゲージメントサーベイはホンモノですか?


はじめに

近年「従業員エンゲージメント」が人的資本経営の観点からも注目を集めており、エンゲージメントサーベイの実施率も徐々に高くなっています。しかし、現場からは「エンゲージメントサーベイを実施しているが業績が向上しない」、「エンゲージメントサーベイに意味があるのか?」という声が聞こえてくるのも事実です。そのような声に対応するためには、まず自社で実施しているエンゲージメントサーベイがホンモノかを確認することが重要です。そこで、今回はエンゲージメントサーベイの品質確認の方法を解説したいと思います。
<執筆者紹介>
宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了。https://better-options.jp/

エンゲージメントサーベイの品質とは

エンゲージメントサーベイのような心理的な状態を測定するサーベイが満たすべき要件はいくつかありますが、代表的なものとして構成概念妥当性というものがあります。構成概念妥当性とは、サーベイが、測定したい概念を適切に測定しているかということです。エンゲージメントサーベイであれば、従業員エンゲージメントという概念を正しく測定できているかが問題になります。逆に構成概念妥当性が高くないサーベイであれば、その結果を組織のKPIとすることには何の意味もありません。

構成概念妥当性をどのように検証するか

それでは、サーベイの構成概念妥当性をどのように検証すれば良いのでしょうか?学術的にはさまざまな検証方法がありますが、企業実務で可能なものとしては、次の2点があると考えられます。

同時点で理論的に関連している他の指標と相関が高いか?

エンゲージメントサーベイを実施した時点で、エンゲージメントサーベイのスコアと関連していることが想定される概念との相関が高いことを検証します。たとえば、エンゲージメントが高い社員は、仕事に打ち込み、組織のために働いていると考えられますので、仕事のパフォーマンスが高く、人事評価も高いはずです。したがって、エンゲージメントサーベイを実施した年度のスコアと営業部門での営業成績の間は相関があるはずです。営業成績順に社員を並べると概ねエンゲージメントスコアもその順になっていることが想定されます。
営業成績は営業部門以外の社員には使えないので、人事評価との関連を検討することも考えられます。たとえば、人事評価がS、A、B~Dの評価であれば、S評価の社員のエンゲージメントサーベイのスコアはA社員のスコアよりも高く、A社員のスコアはB社員の平均スコアよりも高いことが想定されます。

理論的に想定される将来の結果を予測できるか?

エンゲージメントサーベイを実施した時点のスコアと、エンゲージメントと関連することが想定される将来の結果が関連するか、言い換えるとエンゲージメントサーベイのスコアが将来の結果を予測できるかを検討します。
従業員エンゲージメントが高い社員は仕事に打ち込み、組織のために働いていると考えられますので、勤務先に長く勤めるを考えられます。逆に従業員エンゲージメントが低い社員は転職の機会があれば転職しやすいと考えられます。
たとえば、従業員2020年4月入社社員の入社年度のエンゲージメントスコアとその後5年間の退職/在籍状況を検討し、退職した従業員と在籍している従業員で入社年度のエンゲージメントスコアを比較すると、在籍した従業員の方がスコアが高いことが予想されます。

構成概念妥当性を検証するためのポイント

実は、ここまで述べた来たエンゲージメントサーベイの構成概念妥当性の検証はほとんど実施されていないのが現状です。その理由としてはエンゲージメントサーベイのスコアはベンダーに、社員の人事評価や営業成績、退職/在籍のデータは企業側にあり、通常両者が突合されることがないためです。ベンダーにおいて仕事のパフォーマンスとの相関が検討されていることもありますが、その場合は企業における人事評価や営業成績ではなく、主観的な仕事のパフォーマンスを調査票で聞いた結果であることが通常です。
エンゲージメントサーベイのスコアと企業における人事評価や営業成績を突合して分析するには、企業側が社員IDをハッシュ化、部署名を符号化する等、個人情報を削除する形でベンダーに分析を委託し、ベンダーからは関連性の検討結果のみを受け取ることが考えられます。ちなみに、ベンダーから企業がエンゲージメントサーベイ結果を受領して人事評価や営業成績と突合して分析するパターンも考えられますが、ベンダーがエンゲージメントサーベイを実施する際に、顧客企業の社員から「個人の結果を企業に提供することはない」という前提で回答の同意を得ていることが通常ですので、現実的ではありません。

終わりに

今回はエンゲージメントサーベイの構成概念妥当性について述べました。人的資本経営の流れでエンゲージメントサーベイのスコアが外部に開示されることが増えていますが、自社のエンゲージメントサーベイが果たしてホンモノなのかを一度検証することをお勧めします。

                                                                                                                 以 上


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