さいはて
翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイが滅茶苦茶面白くて好きで、ツイッターをフォローしていて気づいたのが、タイムラインで見かけたRTに惹かれてアカウントを覗きに行ったりすると、そのアカウントをフォローされてる、自分がフォローしてる方が表示されるじゃないですか?かなりの高確率で岸本さんがいらっしゃるんですよね…。岸本さんへの想いは、かつてナンシー関さんに抱いていた感情に近いかもと最近ふと気づきました。「死ぬまでに行きたい海」は、自分へのクリスマスプレゼントとして買おうかしらと思ってます。間違いないやつ。ツイッターのハッシュタグ「死ぬまでに行きたい海」も、そのうちゆっくりじっくりまとめ読みしよう。もし自分がツイートするとしたらどこだろう、やっぱり自分が行った中で最もさいはての地についてかな、と思ったのですが、とても140字にまとめられそうにないので、ここに書いてみます。
24歳のときワーホリでカナダに行きました。バンクーバーのユースホステルを事前に一週間分だけ予約して、現地で英語学校とホームステイ先を決めて三月四月バンクーバーで過ごしてから、五月からはオンタリオ州の鳥類保護区で住み込みボランティア調査員として働いたのですが、バンクーバーからトロントまで鉄道で移動することにして、たしか外国人旅行者向けの十日間くらいの格安パスが当時あった気がするんだけど、せっかくだからと鉄道で行ける一番北まで足を延ばしました。ハドソン湾に面したチャーチルという駅で、電車が到着して折り返すまでのわずか六時間ほどだったか、ガイドブック「地球の歩き方」一冊を頼りに、一人がむしゃらに歩き回りました。日本では珍しいユキホオジロという鳥の群れのピンボケ写真や、岬の記念碑とバードウォッチング用の望遠鏡を(自撮りする替わりに)撮影した写真が残ってます。シーズンオフだし雪景色で閑散としてて寒くてワクワクしつつも心細くて何やってるんだろーと思いつつさびれた商店で買ったお酒を寒空の下やさぐれ気分で飲んだりしたようなかすかな記憶があります(屋外でお酒飲むのは違法)…どこ行っても似たようなことばかりしてんな。
エドモントンに二、三泊した以外はずっと普通座席でそのまま寝たり起きたり、当然お風呂には入れず、窓から眺める景色だけは新鮮だったけど、退屈さやるせなさしんどさが勝っていたような。ガムの包み紙をあぶらとり紙がわりに使ったっけ。チャーチルでオーロラや野生動物を見ることが目的だったわけではなくて、とにかく電車で行けるとこまで行ってみる、それ自体が手段でありつつ目的でした。やってみたかった、ただそれだけ。
トロントへ到着して鳥類保護区へと向かう前に、日本でバイトしてた鳥の研究所の所長さんが紹介して下さった、日本とカナダのハーフの女性の研究者の方に数日間お世話になって、朝食に納豆ご飯を出してもらったりと親切にして頂いたことや、エドモントンで見た氷河は日本人には巨大すぎてスケール感覚がバカになったこと、鉄道で移動中に車窓からカナダの先住民族らしき人達を何度も何度も見かけて、当時は予備知識ゼロだったので、この人たちは一体?と漠然と不思議に感じたことなどなど…いつか見た遠い夢みたいな、20年ほど前のお話です。
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