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#144またキムタクか〜。

毎晩、とまではいきませんが、わたしは案外夢を見ているほう、いや覚えている方です。ハッピーな夢をみて気持ちのよい朝をスタートできる日は少なく、どちらかといえば、現実の世界の心配事の続きが展開しているような、どんよりとした夢をみて、重たい気分で朝をむかえることが多いのです。

この頃は遠くに住んでいる両親のことが気がかりで、夢の中では父や母と話をしたり、喧嘩をしたり、いろいろやっています。

そんな中、またしてもあの人が現れました。「またキムタクか〜」目覚めたわたしは、そう思わずにはいわれません。なにせキムタクとはもう20年くらいのお付き合いになるからです。

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どんな人にも人生の節目があると思いますが、わたしにとって、それは30歳頃にやってきました。結婚し二人の子どもを授かり、家事や育児に専念していながらも、心の中に湧き上がる悶々とした思いを消化しきれず、とうとう大学院にいって自分で心理学を学ぼうと決心したのです。

深層心理学に関心を持っていたので、大学院入学後もせっせと本を読み、勉強に励みました。C・G・ユングというスイスの精神科医・心理学者の理論は難解で、でも奥が深くて、ユング研究所で学んだこともある先生方の話も面白く、夢分析にも興味をもちました。

ユングの提唱した元型という概念のひとつに、アニムスとアニマがあります。アニムスは女性の心の深層に潜む男性イメージのこと。反対にアニマは男性の心の奥に潜む女性イメージを指します。それぞれのイメージは、現実世界において、一人の異性に投影されます。アニムスもアニマも4つの段階があると想定されていて、人格の成長に応じてアニムス像、アニマ像も成熟していくと考えられています。

ユングを勉強し始めた頃から、わたしの夢に出てくる男性はキムタクでした。「うーん、わたしは別にSMAPのファンでもキムタクのファンでもないのに…」と思いつつも、恐らくそれはわたしのアニムスを投影したイメージなのだろうと、一人で解釈しました。

それから約20年、心理学の勉強を終え、資格をとり、現場で働き、家庭の事情もあり一旦は別の職種に転職し、今は専業主婦として生活しているわたし。なのに、相変わらず夢に出てくるのはキムタクなのです。わたしのアニムスは成長しないままに、時が過ぎてしまったのでしょうか。

ところが、少し前にTVerでキムタク主演の「グランメゾン 東京」というドラマを観ました。これが良かった、はまりました(笑)。料理一筋に自分を貫く主人公、本当は人一倍繊細で優しい心の持ち主、なのに不器用で周りを振り回してしまう。次々と難題に押しつぶされそうになっても、決して諦めない。自分に何が出来るだろうかとギリギリまで闘い続ける。これはたしかにキムタクにしかできない役だったのではないかと思ったのです。

今、TVerでは12月30日に劇場公開予定の「グランメゾン パリ」を記念して、キムタクが主演した「華麗なる一族」(2007年)や「南極大陸」(2011年)が放送されています(流石に、それらのドラマ全部に目を通すエネルギーはわたしにはありませんが)。

長年、アイドルとして第一線で働きながら、グループ活動と同時にいくつものドラマの主役を引き受けるって、どんな重圧だったのだろうと思います。彼の歩んできた道は、キラキラロードというよりも、苦難の道以外の何ものでもないのではないでしょうか。

「自分以外の誰も、頼れる者はいない」

一言でいえば、そんな覚悟をふつうの人の何倍もの強さで自分に言い聞かせてきた人なのかもしれない。ああ、それなら…。今のわたしの夢にキムタクが出てきたのも分かる気がします。わたしの左腕のリハビリが停滞しているからです。

「これ以上、上がりませんか?まだ肩の上の部分が固いですねえ」

先週、リハビリの先生の顔に若干の諦めが漂っているのを感じました。これから寒くなるし、ますます動かしにくくなるかもしれませんね、的な。や、やめてくれ〜、それじゃあ困るのよ、まだまだ左腕にもしっかり動いてもらいたいのよ(わたしの心の叫び)。

リハビリ後、わたしは自分に喝を入れ直し、痛くてたまらない箇所を動かすことから逃げなくなりました。だって、

「自分以外の誰も、頼れる者はいない」

と分かったのですから。その甲斐あって、また徐々に動かせる範囲が広がりつつあります。今までのわたしは、リハビリに向き合う態度が、まだまだ甘かったようです。もうアニムスが成長しているとか、いないとか、どうでもよくなりました。今は自分にこう言い聞かせているのです。

「まだまだ諦めちゃいけないよ。なんたって、あんたの心の中にはキムタクがいるんだからね」




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宮本松
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