#137マップルを使いこなす。(北海道旅行編①)
女ふたり旅を決行する。それはわたしと娘のミドリーが、一緒に自由に過ごせる時間がある間にチャレンジしたいことの一つでした。7月の終わり、ミドリーにとっては2回目、わたしにとっては初めての北海道旅行に出かけてきました。
普段は何処へいっても必ず道に迷うし、疲れやすさを売りにしているわたしたち母娘ですが、今回は自分たちで計画し、計画通りに動いてみることを目標にしました。
まずは図書館で北海道のマップル(本)を借りてきます。観光地の情報をゲットするのに、マップルは大変便利です。パソコンやスマホとちがって紙媒体なので、わたしのような50代女子にも眺めやすいですし(目に優しい)、地域別の宿泊先や観光スポット、美味しい食べ物が細かく載っています。ただその情報の使い方が難しいのです。
宿泊先については、基本的にマップルの情報は使いません。豪華なホテルはお値段も豪華になるからです。格安で、ある程度のサービスを受けられるホテルはネットで検索します。その後食事処を探しますが、これが本当に難しい。たった数日で「こんなに大量の食べ物を胃袋に詰め込むことはできない」と叫びたくなるほどの飲食店が、ページから溢れそうなほど紹介されています。今回はマップルに掲載されていたオススメのお店を、更にネットでもチェックして、口コミや立地、手頃な値段であるかを検証した上で、行きたいお店を選びました。
北海道といえば、どうしても食べたいものは札幌ラーメン、スープカレー、海鮮丼、それからジンギスカンです。3泊4日といっても初日は夜遅くに到着し、最終日は朝早くのフライトで、動けるのは正味2.5日程度。胃袋の弱いわたしが、若いミドリーと同じように美味しいものを全て完食できるのでしょうか。
「ひとまず朝ごはんを抜きにして。お昼のランチで高いものを安く食べて、夜は値段の張らないものをチョイスしよう」
ミドリー隊長が我々の胃袋の使い方を決めてくれました。それならついて行けそうだ!
マップルのもう一つの難しさは、単に地図を見ているだけでは目的地間の距離感が掴めないという点です。北海道の広さを体感したことのないわたしは、旅行会社が宣伝している観光スポットのあちこちに足を運びたい妄想に囚われてしまいます。が、そんなことは無理なのです。新千歳空港から札幌まで電車で40分。札幌を基準に移動すると考えると、小樽までは電車で34分、旭川までは特急で1時間半、帯広までは高速バスで3時間半、そして函館までは特急で3時間45分かかるのです。
「母ちゃん、わたしらにはあちこち移動するのは無理だわ。場所を札幌に絞って、観光名所を回ることにする」
この点も、ミドリー隊長が足腰の弱りつつあるわたしのために作戦を練ってくれました。小樽くらいなら行けたかもしれませんが、駅についてからの移動時間、バスや電車の乗り継ぎの悪さなど、予想外の展開が待ち受けていることを考えると、妥当な判断です。
そんなわけで、わたしたち二人は約3日間にわたって札幌周辺を歩き続けました。平均して1日に3万歩も歩いたのです。札幌の定番といわれる観光名所を制覇したつもりです。
円山動物園
北海道神宮
モエレ沼公園
札幌市時計台
大通公園
さっぽろテレビ塔
北海道大学
移動する範囲に絞ったことで、ゆったりした気分で歩き回れたことが、とても良かったです。地図をしっかり確認していれば、次々と並んでいる観光名所を経由しながら駅までたどり着けたし、ホテルにも簡単に戻ることができました。
では今回、女ふたり旅は道に迷うことはなかったのか?いえいえ、やっぱり迷いました。札幌駅近くの、お寿司屋さんのランチ定食を食べに行く時のこと。駅の周りは地下街もかなり充実していて、道が縦横無尽に続いています。
「おかしいなあ、確かにこの辺りのはずなんだけど」(ミドリー)
グーグルマップを何度も見ながら、歩けど歩けど、お目当の店は見つからず。
「そのお店、もう潰れたのかもしれないよ」(わたし)
歩き疲れたわたしが、適当な意見を口にします。同じような道をぐるぐると回り続けているせいで、気持ちもどんよりしてきます。
「もういいんじゃない。別に寿司じゃなくても。パスタでもいいし」
ただ座りたい一心のわたしの発言を物ともせず、若いミドリーは探検家としての誇りを胸に、果敢に歩き続けます。ふとみると、遠くの方に細いエスカレーターが…。もしやあの先にお寿司屋さんが?
そうでした。地下街を通してつながっているビルの地下2階にその店はあったのです(グーグルマップだけではたどり着けない分かりにくい場所でした)。1時間近くも探しつづけた甲斐あって「こんなに美味しくて大きなネタの寿司定食は食べたことがない」と思うような大満足のランチをいただくことができました。
「諦めなくてよかったね」
と、諦める気満々だったわたしが、ミドリー隊長に感想を伝えます。お腹一杯になったわたしたちはその後、電車とバスを乗り継いでモエレ沼公園まで出かけました(イサム・ノグチがなくなる前一年で構想を立てた元ゴミ処理場)。
「あ、手にはめてたアームカバーがない!」そういえばお寿司屋さんで外した記憶があります。こうしてミドリー隊長に叱られながら、帰り道、もう一度あの店に寄って、アームカバーを取り戻したのでした(計3回も同じ地下道を歩くことになりました)。どうやらわたしたち母娘にとって、道に迷うという行程は旅の必須条件のようです。