現代短歌練習22
2018年短歌まとめ・3
沈黙を守れぬ花火残像が扇ヶ浜のイルカに注ぐ
蝉時雨くぐり抜ければまた命稲穂の海を泳ぐトラクタ
濁流の中の煌めきその意味を指環の痕に聞けばいいのに
ねえちゃんと胸に手を当て聞いてみてあなたに捧ぐラ・カンパネッラ
待ってれば必ず星は落ちてくる願いが叶う保証はないが
ほつれ髪女々しさを剃る美容室ベリーショートで強がり増して
太陽に向かい何をば語るやら燃え尽きること知らぬ向日葵
憧れの人の手のひら湿ってたフェスの熱量恋の熱量
風神と雷神ときに空気読むしんみりしてさ大雨警報
青春をわざと尖らせ聴いていたLinkinPark戻らぬCD
*
靴下を脱がせてくれる優しさを置いてきた人もしもしピエロ
世間体嘘としぶとさ見栄混ぜて現世に揺れる蜘蛛とわたしと
聞き分けのいい女だと自負してる円月島とともに朽ちてく
知らぬ間にニキビビキニも鳴り潜め謙虚でおれよ三十路のわたし
虹色に並ぶどの色映えるかなあなたの首に締めるネクタイ
彼の国でミサイル発射同時刻受精できずに扉は閉まる
終電に間に合わねばと親不孝通りを駆けるクリスマスイブ
*
喧騒の切れ目に望む告白は五年前からミュートのままで
温もりが遠ざかる頃思い知る二番目にすらなれない女
謎かけをすればするほど迷宮でオチのないまま続く同棲
不純物満ちた体は重たくてあなたに好きと言えないままだ
顎ぽつり痒みの下に芯ありて大人ニキビと言い張る師走
赤緑夫婦漫才できそうな配色だから冬は嫌いだ
アイなのかウィーなのか聞く自信なく明日からのこと聞く大晦日
*
バランスの取れたわたしでいたいから別れ話は週末にして
あんなにも気を落ち着けて剃ったはず産毛の跡の心ヒリヒリ
これからはスローライフと言いながらカメラワークの激しい社会
失恋をしたらホントに切るんだね痛み激しい髪先LINE
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