さよなら、大好きな人
きっと、初めて会ったときから好きだった。
初対面でお互いに挨拶して、
きみのはにかむような表情を見たとき、
心がじんわりしたのを覚えている。
きみはいつもレモンの炭酸水を飲んでたから、
夏になるとレモンが増えていつもきみを思い出す。
誰にも負けたくないとプライドを見せるくせに、
時折揺れる表情に目が離せなかった。
努力する姿を隠してスマートに振る舞うとこや、
丁寧に教えてくれる声、眼差し、指先、
わたしにだけ見せる少し寂しげに微笑むきみの、
その全てに憧れた。
ずっとずっと好きだった。大好きだった。
大事にしたかった。ずっと待っていた人だった。
はじめてだった、
一緒にいて時間が溶けていくようだと感じたのは。
年上とか年下とか結婚しているとか性別とか、
そんなの関係なくて、
子どものころのようなあの何も分類されていないあるがままの世界で、きみと出会いたかったな。
きみの、全部が好きだったよ。
わたしが絶対一番好きだったよ。
わたしだけがきっときみの一番奥を見つけたよ。
でも、好きになってはいけないから、
きみにしてあげたいことや話しかけたい言葉を飲み込んでは、心の箱にしまい続けてる。
きみとの日々が甘い麻薬のようにまだ残っているから、何度もきみを思い出しては泣いて、
妄想だから許されるよね、と言い訳をして
眠る前にきみとのハグを思うの。
好きになってはいけないのに、
わたしはこの気持ちの止めかたを知らなくて、
きみとさよならすると決めたんだよ。
苦しいよ。
きみの一番になりたかった。
ずっと隣にいたかった。
でもこれから出てきてしまうだろう、みっともないわたしをきみにみられたくなかった。
きみに嫌われたくなかった。
怖かったの。
これからもきみを思い出して泣くのだろう。
出会えてよかったなんて、まだ思えない。
悲しいよ。
間違っていたのかな。
でも仕方なかったんだ、と言い聞かせて。
夢できみに会えますようにと願うの。
今ごろきみはなにしてるかな。
好きなひとができてしまったかな。
永遠を誓いたい人が現れてしまったのだろうか。
きみの幸せをまだ願えないわたしがいて、
きみの心の一番やわらかいところにわたしが住んでいることを信じたい。
レモンの炭酸水をみると、
わたしはまたふいにきみとの全てを思い出して、
あの日々に戻ってしてしまうから、
きみを思い出にできないまま、ここにいるよ。
好きだよ。
今でもきみを思っているよ。
ずっと応援してるよ。
大丈夫、きみならできるよ。
ずっと信頼してるし尊敬してる。
さよなら、わたしの大好きな人。