みやまの短編集

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最近の記事

わたしは最強

就活がうまくいかない。 そろそろ良い結果が届いてもいいんじゃない? クリスマスを待ち侘びる子どものように、夏休みを待ち侘びる大人のように、わたしはその通知を待っている。 自信はあった。…いや、でもそうでもないか。 正直、わたし以外みんな優秀に見えた。 スタイルも顔も良くて、みんな一軍だった。 さらには全身から謎のキラキラを放つ目力の強い学生も何人かいて、さぞ充実した人生なんだろうなと卑屈になったりもした。 帰り道は、達成感と自分肯定感が下がってしまった反動でぼんやりしてし

    • 真宵の森①

      〜プロローグ〜 今日も父から叱られたアサは、またいつものように裸足になり冷たい雪の上を走っている。自宅から80メートル先のゴミ捨て場まで裸足で走って戻ってくる、それはいつもの父の折檻だった。こういう時の母は黙っているか、一緒にわたしを叱るかどちらかだった。 家から出された時はまだチラチラと降る程度の雪だったが、アサが走り出した途端に勢いを増し、今では顔を叩きつけるほどで前がよく見えない。 悴む足を必死に前に進めつつ、頭ではぼんやりと今夜は吹雪の予報だったと夕食中のテレビ

      • 君の行方

        初対面で、優しい人だとすぐにわかった。 見た目は凛としてて、心を開いてくれるまで 時間がかかりそうなタイプに思えたけれど、 僕は気付いていたよ。 穏やかで明るい君がふと見せる、 僕と同じ種類の悲しみを知っている眼差しに とても癒されて甘えたくなった。 君が笑うとき、ふわっと空気が和らいで、 少し顔を傾ける仕草もいつも可愛くて、 真剣な眼差しや豊かな表情、心地良い声にも 全て触りたくなった。 誰からも気が付かれないように、君を見てた。 好きになってはいけないから。 僕は

        • 夢で会えたら

          君に会いたいときは、ベッドにいく きみの声、指先、独特な言葉の選び方、視線、 全部を持ってベッドにいく きみがかじった、 わたしの左薬指のまあるい跡にキスをして さらにその先の夢でも会えたなら

          触れたとき、はじまった

          つい飲みすぎた。 転職先の新歓で緊張するものだから、普段は全く飲まないビールをぐいぐいと一気に飲んでしまった。なんて苦いんだ。 お酒は弱くないと自覚があったのだが甘かった。 歳とともに老化してるのを忘れてしまって、すっかりあれこれ弱くなっていたことにようやく気がついた。若干足元が危うい。 男性陣は二次会に行くらしい。 女性陣は帰る人が多いし、わたしも帰宅しますと伝えて少し後ろをゆっくり歩いてる。 いけないしっかりしろ、とゆらゆらする足を叱咤激励し気持ちと視界を奮い立た

          触れたとき、はじまった

          さよなら、大好きな人

          きっと、初めて会ったときから好きだった。 初対面でお互いに挨拶して、 きみのはにかむような表情を見たとき、 心がじんわりしたのを覚えている。 きみはいつもレモンの炭酸水を飲んでたから、 夏になるとレモンが増えていつもきみを思い出す。 誰にも負けたくないとプライドを見せるくせに、 時折揺れる表情に目が離せなかった。 努力する姿を隠してスマートに振る舞うとこや、 丁寧に教えてくれる声、眼差し、指先、 わたしにだけ見せる少し寂しげに微笑むきみの、 その全てに憧れた。 ずっと

          さよなら、大好きな人