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君の行方

初対面で、優しい人だとすぐにわかった。
見た目は凛としてて、心を開いてくれるまで
時間がかかりそうなタイプに思えたけれど、
僕は気付いていたよ。

穏やかで明るい君がふと見せる、
僕と同じ種類の悲しみを知っている眼差しに
とても癒されて甘えたくなった。

君が笑うとき、ふわっと空気が和らいで、
少し顔を傾ける仕草もいつも可愛くて、
真剣な眼差しや豊かな表情、心地良い声にも
全て触りたくなった。

誰からも気が付かれないように、君を見てた。
好きになってはいけないから。

僕は自身が慎重だと自覚している。
自分を守りたいから、他者をカテゴライズして、
ステータスによって態度を調節していた。
それを少しゲームのようにも捉えていた。
上手く言えないけどいつも俯瞰すぎていた。

そんな時、君が突然現れたんだ。

君が飲む紅茶のペットボトル越しに目が合ったとき、心が跳ねたんだよ。
いつものあの笑顔としぐさで見つめ返すから、
急に焦りが出て思わず目を逸らしてしまった。

君は無邪気で一生懸命で、理不尽にも耐えて、
すごく優秀なのにどこか発言が抜けていて、
自分の意思がある君に、すごく癒されたんだよ。

でも同時に僕の心は乱れて、
あんなに得意だった態度の調整が出来なくなった。

それでも、ありのままの僕を見せてもいいんじゃないかなと惑うほどに、君は僕の光だった。

君も僕に好意を持ってくれているとわかっていた。
なんとなくだけど、経験からわかったんだ。

だから
まさか、君がいなくなるなんて思わなかった。
どこかで君は僕の側からは離れないだろうという
謎の自信があったんだ。自惚れていたんだ。

君は今なにを見ているのだろうか。
誰とどんな世界のなかで生きているのか。

僕はやり残したままで達成感が得られないから、
こんなにも君を考えてしまうのかな。
もっと出し惜しみをせずに勇気を出せばよかった。

このむしゃくしゃした気持ちを、
どう分類すればいいのかわからずに持て余してる。

会いたい。
そしたらきっとわかるはず。
君を好きなのか、達成感を得たかっただけなのか、恋愛ゲームをしたかったのか。
今思えばあの時にきちんと勇気を出すべきだった。
未だに後悔だけがずっと残って苦しくて仕方ない。

僕からは行きたくはないから、
君からきてほしいと思いながら、電気を消した。





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