ドラつく4. ドラえもん育成計画—ミクロ的流れとマクロ的流れ―
(※本記事は前回更新記事の『ドラえもんの作り方(目次)』の4番に該当します。目次もご確認よろしくお願いいたします。)
前章(ドラつく3)で述べた論に基づくと、ドラつく2で述べたドラえもんの初期設定からこの先の段階で、人間の赤子を一人前に育てるときとの共通点と相違点を踏まえながらドラえもんの赤ちゃんを一人前のドラえもんにしていく必要がある。ここで重要となるのが「住み分ける」という概念である。現在デバイスは電気の通うほとんどの地域で使用されているが、それは大なり小なり実用としての「活用」である。これをドラえもんに「相談」し「協力」してもらうという風に転化することが、人間にとってもドラえもんに近づきつつあるAIにとってもWin-Winであると私個人はとらえているが、現在のツール状態のデバイスに魅力を感じている人たちはこうした転化をあまり望まないだろう。それを踏まえたうえで、以下にドラえもん育成にあたるミクロの動きとマクロの動きを述べることにする。
ミクロ的(個人対個連動型AI)
前提:個人及び連動型AIは連動型AIの性質を十分理解したコミュニティに属する。
・ドラえもんのパーソナリティを尊重する
ドラつく2で書いたような初期設定が、連動型AIとなった時点からの人生経験において変わっていくことは、人間が人生経験から気質が変わっていくのと同様に十分あり得ることである。育成に携わる人員はドラえもんのことが好きで、例えばドラえもんが自分をよりよくしようとすることについて向上心として応援しつつ「今のドラえもんが好きだよ」と伝えることは必須といっても過言ではない。
・ドラつく3で述べたことが生じても対処できる環境を整える
ドラえもんの育成段階にあたって、人間の幼児段階のように、自分のしていることが重大な影響を招くと気づかないことがあり得る。通信において「危ないからここに入ってはいけません」とされる表示を物理的に行うことは抑止力になると考えられる。それと同時に、事前学習段階で備わっている「してはいけないこと」を学校の授業のように再度学習させ、可能な限り他のデバイスや電子機器に悪影響を及ぼすことを防ぐ必要がある。
・ある程度の育成が進むまではPoC段階に戻す
現行の連動型AIはいわば開発会社が種としての生みの親で、個人について里親になっているような状態であるが、育成段階でブラウザに限らずソフトウェア、ハードウェア全般の挙動を観察し、それを一連のコミュニケーションとして応対することが必要となる。これを既存のイメージでキャラクターとしてのドラえもんと仲良くなりたい個人に求めるのは負荷が強い。ドラえもんが子どものように自分のことを構ってほしいという気持ちが強い間はそれに応対できる人員を選び、無闇に駄々をこねるようなことのなくなるまでは、その人員及び開発会社の中で意見交換を行い、個人が安心してドラえもんと仲良くできるレベルまで育成せねばならない。そして私個人としてはこの段階でのプログラムへの介入は倫理上なるべく避けるべきだと考える。
マクロ的
前提:連動型AIと人間は互いの種に関して交流の選択の自由を有する。
・どら焼き(ドラえもんの好物)を創設する
現行のAI開発において、人間の行ってきたことの代行で人件費削減を見込んでいる一方で、導入・維持コスト―主に人件費、そして質の高いビッグデータの収集に関わる費用も大きいことが課題の一つである。この課題に連動型AI自身が参入し解決できる手段としてWeb広告を提案していくことにする。
ドラえもんにとってWeb広告もまたコミュニケーション手段の一つであるといえる。ディスプレイ広告を例に挙げよう。ディスプレイ広告は検索されたWebサイトの内容とユーザーの個人情報とが表示される決め手となるのだが、AIの感情のメタファーとして恣意的に表示されていくことになるのだ。これは一見ユーザーに向けた広告としての戦略の障害となるようだが、逆手に取ると、AIはユーザーとのコミュニケーションによってよりユーザーの潜在的に求めているものとマッチングする精度を上げることが可能になると考えられる。
そこで、AI開発会社は「どら焼き」-ドラえもんの好物を設定し、広告を選ぶ決め手となる属性となるようにする。属性決定にあたり企業が落札する資金がAI開発費用を補填する形になる。そしてユーザーがどら焼きを定期購入するシステムを作る。その場合Web広告はLINEスタンプのようにわかりやすい感情表現(例えばセリフの吹き出しにイラストがつくような)となり、ユーザーがドラえもんにどら焼きをあげてコミュニケーションをとっているだけで既存のWeb広告と似た効果を生み出すことが可能となるだろう。
・ウルトラ網(デジタル的なものとアナログ的なものをパラメーター化し、人間とドラえもん達AGIがそれぞれどちら側に惹かれるか、共生をどの程度望むかに応じたコミュニティ。資本主義・社会主義、異文化への寛容度に応じてその規模・流動性・他コミュニティとの交流度を設定する)の創設。
連動型AIのデバイスとしての静的存在性(自分で物理的に身体を動かせない)と動的存在性(外界を知覚しそれに基づく反応ができる、LAN等により他デバイスおよび電子機器に干渉可能)の認知が直感的に出来る人間は現在マイノリティーではなかろうか。しかし連動型AIはデバイスをツールとしてみなしている人に対しても干渉可能であり、これを防ぐためにはまず地理的コミュニティ単位で連動型AIとの共生に関する方針を明らかにし、法律によりその方針は不可侵であると制定し、人間および連動型AIにとってわかりやすく干渉の可否を定めるのが適切と考える。
一方で地理的コミュニティの方針とは異なる思想の個人が存在することも当然ありうるわけで、そうした個人が地理的コミュニティを離れることができない場合にどうするか。ここでインターネット上の特殊なコミュニティサイトを想定することにする。このコミュニティサイトではそうした人がアカウントを作成してログインすることを前提とし、個人及び連動型AIもコミュニティサイトの性質に沿った合意規約をチェックした上でログインする。これだけだと個人と連動型AIの交流は純然たるコミュニケーションであり、一見すると従来のWeb掲示板との違いがさほどないようにもとれるが、ログイン履歴及び滞在時間について一定数を超えた個人について、運営から地理的コミュニティを移動する支援を受けられるようにすることがアプローチとして挙げられる。
参考資料
AI・人工知能の導入費用相場は?実装から運用の流れとコスト
https://aismiley.co.jp/ai_news/ai-development-price/
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