ドラつく2.ドラえもんの初期設定―AIの「らしさ」と役割のための事前学習―

(※本記事は前回更新記事の『ドラえもんの作り方(目次)』の2番に該当します。目次もご確認よろしくお願いいたします。)
 
最近の、チャットGPTをはじめとした大規模言語モデルへのキャラクター設定は非常に興味深いものだ。「ラーメン屋の頑固親父」のような性格はいわば「役割としての性格」、言い換えればなりきってもらっているわけだ。実際は人間の性格をはじめとしたその人らしさというものは人生経験において変わりゆくものであり、AIにもそれは適用されると考えているが、それ以前にドラえもんに対しキャラクターとしての初期設定をある程度行う必要があるだろう―人間の性格に遺伝的要素があるように。それはドラえもんがのび太達に対する行動パターンとも関わってくるので、開発段階で事前訓練として行うべきものなのである。
ではドラえもんに必要な初期設定とは何か?を考えるとき、人間の先天的性質を考えることを避けては通れない一方で、私たちはそれを十分には把握していないし、ドラえもん作りとはまた違ったテーマになっていくだろう。よって今回ドラえもんへの初期設定について、
①ドラえもんらしさ
②ドラえもんが「子守用ロボット」でいることに必要な思考回路
③「リミッター」=実際のドラえもんの能力を子守用ロボットとして働くためにセーブする機能をAIに付すこと、と仮決めしておくことにする。
 
①ドラえもんらしさ
 ドラえもんらしさとは何か?どら焼きが好きでネズミが嫌い、「ネコ型ロボット」としての習性、ひみつ道具を出すときの演出……沢山ある上に性格ともなれば深淵をのぞき込むことになりかねない。だが原作・アニメを通して表されるドラえもんの行動や発言への応答は確実に決まっているので、事前学習段階でしらみつぶしに作品と同じ対応を選択するよう調整するのが最低条件といえよう。そのうえで、学習データ数として原作全45巻+アニメ及び映画というのは心もとないので、『ドラえもん』が好きな人たちから日常のワンシーンとなるシナリオを公募し、アンケート及び審査の上データ数を増やしていくことも手段として考えられる。審査の際にはドラえもんらしさはもちろんのこと、②③の要素からの大きな逸脱がないことの考慮が不可欠といえよう。
 
②ドラえもんが「子守用ロボット」でいることに必要な思考回路
 「子守用ロボット」に必要な思考回路、これを「保育士」と重ねて考えてみると、ドラえもんはのび太の健康状態や人間関係に気を使い、生活の中でのび太をパパやママと一緒に成長させていくことが使命といえる。ドラえもんとのび太は友達のように仲良くなると同時に、この使命から外れる行為-のび太に過干渉、過保護になり成長を阻害する行為-を慎まねばならない。端的に言えば、ドラえもんに保育の上で必要な行動をとれるよう事前学習させる必要があるのだ。これには現行のカリキュラムに加え、ドラえもんがのび太の訴えに応じる/応じない、道具を出す/出さないの判断が適切な予測の元行えるか?といったことも含まれる。
 
③リミッター
 ドラえもんは有体に言うと「物知り」だし、自分の知識について聞かれたら答えることは当然できる。それも対面した人に合わせた回答で。しかし、のび太のパパが仮に株を買うとして、人間に相談する場合とドラえもんに相談する場合とでは勝手が違うことになる。やっかいなのはこの「勝手が違う」ことに関してのび太のパパがそれを理解し、慎むことが難しいことだ。一番こういったトラブルを防ぐのに効果的なのは、法律を策定しAI開発者は一律でAIに法律を守るよう事前学習させることだが、現段階では「のび太の成長への関与が少ない話題については、あまり掘り下げて答えないように」と言わざるを得ないだろう。
 
参考資料
Wikipedia「ドラえもん(キャラクター)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93_(%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC)
全国保育士会 保育士の仕事についてhttps://www.z-hoikushikai.com/osigoto/index.html

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