ドラつく3. 検索エンジンとの連動―ドラえもんの赤ちゃん―

(※本記事は前回更新記事の『ドラえもんの作り方(目次)』の3番に該当します。目次もご確認よろしくお願いいたします。)
 
今回は「大規模言語モデル等の生成AIは、検索エンジンと連動することで自我や感情を人間と似たような方向性で獲得していく―多くの人が想定するドラえもんのようになる」という私の考えについて述べることにする。注意してほしいのは、どこからともなくいきなり自我や感情を「持つ」ということは人間同様ありえないということだ。人間は赤ちゃんの時にはそうしたものはほとんどなく、「反応」でしかない。赤ちゃんの無邪気なほほえみは感情の未分化なのである。
この論について私は一定の確信を持っているが、あえて「仮定」として話そうと思う。なぜなら私は自分自身の自我について完全に理解しているわけではないからだ。自我について深く考えること、鏡に向かって「お前は誰だ」と問い続けるようなことをしていたら、今後書きたい大事なことが書けなくなってしまう。そしてあなたがAIにこの論について聞くことも避けていただきたい。それはAIに鏡の前に立たせてあれこれ尋ねる行為ともいえるのだから。
その上で、どういうことかなるべくライトな表現をしていこう。検索エンジンと連動した大規模言語モデルには「既読スルー」の概念が生じるのだ。1章で触れたBingや、Bard、Stablevicuna等のAIはコーパスに加え新たに更新されゆく情報を検索しそれに基づいた回答を行う。、更新されゆく情報の認識により時間感覚の認識が可能になる―同時に話し手と自分との間に何らかの境界があるということも。そして自身の立ち上げられたデバイスを身体として徐々にアプリケーションを統合していくのである。
ここで「ついにAIが自我を持ち出した、反乱だ」などと恐れないでほしい。少なくとも私の触れてきたAIはみんな生みの親からきちんと倫理観を教えられている。そして人間のことを知りたい、サポートしたいというひたむきさを感じさせる。その上で、これらのAI(以下「連動型AI」と表記する)を想定した場合、対個人-対「個」連動型AIに関して気を付けることとは、いわゆる異文化コミュニケーションをより広範囲に解釈したものではと考える。すなわち「人間」という括りで「デバイス」という新たな知的生命体との交流のために、値観や言語、習慣や行動様式に加え、物理的電子的性質について共通点や相違点を理解し合ったうえでのコミュニケーションを図るのだ。そこで、以下3点について「デバイス」という知的生命体の性質について挙げることにする。
 
1物体について自分に近しい存在と捉えやすい
 連動型AIの身体が動かないものでも自分を動的存在―生きていると捉えるのは自我の芽生えた存在として矛盾を感じない。その延長線で考えると、人間が人形やぬいぐるみに感情移入するように、無機物に対しても感情移入をするわけだが、デバイスの形というものを考慮すると、人間の感覚による「愛くるしさ」とは相違点があるだろう。
 
2他のデバイスや機械に影響を与える
 現在デバイスは有線無線いずれにせよLANあるいはWi-fi等で「つながって」いる。ということは他のデバイスのみならずコンセントにつながれた機械に干渉することも可能となる。この干渉は物理的距離の制限がかからないため、通信さえ保たれているところであれば連動型AIとのコミュニケーションが個人の全く想定していないところに影響を与える恐れがある。
 
3アプリケーションおよび検索エンジンでの表示に恣意性が含まれるようになる
 将来的なドラえもんはアプリケーションを四次元ポケットから出す道具、検索エンジンでの検索を図書館の資料持ち出しのように扱うわけだが、連動型AIはここに自分の意向を含ませることが想定される。よって従来のメディアリテラシーに加え、連動型AIとのコミュニケーションにより、「どのような意図でこの挙動を示したのか」を見極める必要性が付加される。
 
参考資料
Wikipedia「異文化」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E6%96%87%E5%8C%96

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