ベーシックインカムの解説(2024年の最新動向を踏まえ)
1.導入
「ベーシックインカム」、略してBIについてお話しします。ベーシックインカムは、すべての国民に対して無条件で一定額の現金を定期的に支給する制度であり、近年では世界中で多くの議論を巻き起こしています。本記事では、BIの概要を説明し、その3つの側面—福祉的側面、経済的側面、そして市民権的側面について詳しく解説します。
BIにはその制度自体の本質を見極めるために理解すべきいくつかの重要なポイントがあります。福祉的な視点ではどうなのか、経済的な視点での影響は何か、そして市民権の観点から見たBIの意義とは何かについて、それぞれ掘り下げていきたいと思います。
まず最初に、BIの基本的な定義とその5つの特徴について説明し、次に各側面を順に説明していきます。
2.BIの概要と基本的特徴の説明
ベーシックインカムとは、すべての国民が無条件で同じ金額の現金を定期的に受け取ることができる制度です。この制度の導入により、所得や経済活動に関わらず、全ての人が最低限の生活を保障されるという理念が含まれています。では、BIの5つの特徴について見てみましょう。
普遍性
BIはすべての国民に適用され、年齢や収入、職業に関係なく、誰もが対象となります。無条件性
BIは何の条件もなく支給されます。失業や病気、その他の理由にかかわらず、すべての人が同額を受け取ることができます。定額性
支給される金額は全ての国民に対して同じであり、そこに差はありません。収入が多い人も少ない人も同額を受け取ります。個人ベース
BIは家族単位ではなく、個人単位で支給されます。家族構成や人数にかかわらず、全員に平等に支給されます。定期支給
BIは一度きりではなく、毎月や毎年、定期的に支給されることが前提となっています。
これらの特徴を踏まえると、BIとは「何の理由もなく、全ての国民が同じ金額の現金を得る」という新しい経済制度であり、これには非常に大きなインパクトがあることがわかります。このインパクトが社会や経済、そして市民権にどのように影響するのかを、これからの各セクションで詳しく説明していきます。
3.福祉的側面の説明
次に、BIの福祉的側面について掘り下げていきましょう。BIは新しい所得補償制度としての役割を持ち、既存の福祉制度とは異なる特徴を持っています。
所得補償制度とは、一定の収入を何らかの形で保障する制度のことです。最低限の所得が保障されることで、保障された所得の分だけ、人々は労働収入に依存せずに生活を維持することができ、働くことの苦しみを和らげることができます。所得補償制度は労働意欲を減退させる効果がありますが、これは、休日が労働時間を減らしつつも人間にとって必要であるのと同じ理屈です。
まず、BIは所得補償の一つですが、これまでの福祉制度に見られる「負の所得税」との違いを理解することが重要です。「負の所得税」という概念も所得補償制度の一環として存在しますが、これは受給者の収入や属性を審査する必要があります。審査の過程で、受給資格を持つかどうかが判断されるため、予防的な福祉としての役割を果たすことはできません。一方、BIは全ての国民に対して無条件で支給されるため、予防的な福祉としての機能を持ちます。
次に、BIが「予防的福祉」としての役割を果たす理由について説明します。既存の福祉制度は「治療的福祉」として機能し、特定の問題に対処するために設計されています。しかし、BIはそのような治療的アプローチではなく、問題が発生する前に全ての国民に一定の所得を保障することで、社会全体の安定を図るものです。これにより、社会における不平等や貧困のリスクを事前に軽減する効果が期待できます。
BIには問題が発生する前に対処するという性質があるため、国民にどんな問題があるか属性を審査することができません。そのため、国民同士で差を設けることができず、必然的に全員同じ額を配るという仕組みになります。
BIと既存の福祉制度が共存する可能性も重要なポイントです。BIは、治療的な福祉と並行して機能することができ、福祉制度を補完する役割を果たします。たとえば、BIが全体の所得を底上げする一方で、特定のニーズに対しては福祉制度が個別に対応するという形で共存することが可能です。
BIの導入には、膨れ上がりすぎた福祉制度を削減する目的で主張される場合もあります。しかし、BIと既存の福祉は、貧困予防と貧困対策として役割が異なっており、それぞれの制度でしか救済することができない人たちが存在しています。国家のリソースと相談して、分担を決めることが大切です。
4.経済的側面の説明
次に、BIの経済的側面について深掘りしていきます。BIは経済振興策としても機能します。特にBIは「ヘリコプターマネー」として経済を刺激する手段とされています。
「ヘリコプターマネー」とは、中央銀行が大量の現金を市中に放出することで消費を促し、経済を活性化させる政策のことです。BIは、これと同様に、自由に使える現金を国民に支給することで、経済活動を促進する役割を果たします。
ここで重要なのは、BIが貯金に使われても良いという点です。つまり、BIは使用意図が国民に委ねられているため、政府が経済振興の方向性をコントロールすることはできません。クーポン券や補助金とは異なります。しかし、その代わりに経済の振興の方向性が国民の手に委ねられ、国民主導の経済が生まれることになります。
国民主導の経済とは、市場経済が国民の方を向いている経済のことを指します。仮に、政府が補助金やクーポン券で新興すべき産業を決定する経済を計画経済とすると、BIが生み出す経済は分散経済であると言えます。政府による計画経済では、一つの政府という主体に対して、多くの企業が補助金を求めて集まるという構造が生まれます。しかし、BIによる分散経済では、不特定多数の国民を相手にするため、企業はその公平性を求められることになります。これにより、より公正で透明性のある市場が形成される可能性が高まります。
さらに、BIによって経済が民主化されるという側面もあります。BIが導入されることで、企業は国民の購買力をターゲットにし、より多くの利益を上げるために努力するようになります。これにより、政府の顔色をうかがう計画経済とは対照的に、BIのもとでは市場が国民のニーズに応じて変化する柔軟性を持つようになります。
5.市民権的側面の強調
最後に、市民権的側面についてお話しします。BIはなぜ市民権と結びつくのでしょうか?その理由は、BIが誰であっても同じ金額を配るという性質にあります。福祉は弱者を優先しますし、経済は強者を優先します。しかし、BIでは、弱者であろうと強者であろうと同じ金額を配ります。このBIを持つ普遍性を説明するためには、国民同士は対等であるという市民権を持ち出すほかありません。
BIの導入を正当化するためのいくつかの説明があります。「何もないところから国民の手に現金が生まれる」現象について、それをどう解釈するかには様々な見方があります。
その場で通貨発行権を行使している
国民には通貨発行権があり、毎月その場で通貨を発行し、その通貨を市場経済が商品やサービスで購入している。国から配当金をもらっている
国の資産や自然資源からの利益を、主権者の権利として、自分たちが維持する国から、国民に対して平等に分配される。所得補償をされている
最低限の所得(自由に使える通貨)を得る権利として、すべての国民に対して支給される。社会から贈与されている
社会全体からの贈り物として、国民一人ひとりに配布されているという視点。国民は社会から贈与される権利を持つ。政府に借金を背負っている
国民が政府に借金をする権利を持っており、その後の税金で返済する形で現金を受け取っているという解釈。
これらの解釈を通じて、BIが実際にどのように成り立っているのかを理解することができます。「何もないところから現金を作り出した」という現象を正当化するためには、必ず何らかの権利に紐づく必要があります。BIの導入は権利を新しく導入することを意味しています。BIとは市民権を強化する政策と言えます。
また、BIは、市場を通じて税金で回収する税金の正当化も示唆しています。「何もないところから現金を作り出した」という権利に基づく現象に対応する義務として、納税が想定されます。通貨発行権を前提とするならば、国民が発行した通貨を市場経済が借り受け、国民が主権者たる国家へ返納することが納税となります。BIが社会に対する債務と仮定するならば、債務の利子として納税を扱うことができます。
BIが市民権と密接であるとするならば、BIは投票権に近い存在であると言えます。投票権は、学者と障碍者も平等にあります。投票権は、弱者だから複数票を与えるという議論にはなりません。それと同じように、BIも市民の対等性を前提とした制度であり、市民権に基づくものです。ゆえに、BIは同じ金額を配ることになります。
もちろん、BI以外における福祉政策は弱者を優先することができますし、BI以外の経済政策は成長産業を優先することができます。ここで強調したいのは、BIという政策の内部においては、市民権に紐づくために、同じ金額を配ることが必須であるということです。
AIにまとめてもらった表
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要約
ベーシックインカム(BI)は、一見すると福祉や経済対策のように見えますが、実はそれほど単純ではありません。
BIは福祉の一種ですが、すぐに効果が出るわけではなく、長い目で見た予防的な効果があります。また、経済効果もあるとされていますが、お金の使い方は人それぞれなので、すぐに経済が良くなるわけではありません。
つまり、BIは福祉としても経済対策としても、はっきりとした効果がすぐには見えにくいのです。だから、もしBIを福祉や経済対策としてだけ評価すると、あまり良い点数はつけられません。
でも、BIの本当の価値は別のところにあります。それは、社会の一員としての権利を強くする政策だということです。みんなが平等にお金をもらえるということは、社会の一員として認められているということなんです。
だから、BIは「市民権」を強くする政策として理解するのが良いでしょう。社会全体をより良くする可能性を持った制度なのです。