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【連載小説】ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい[#183]閑話14 下心の行く先/シアン

ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

閑話14 下心の行く先/シアン

閑話2 下心/クリス」の続きの話です。
R-15ギリギリな、シアン氏の下心満載な話になっておりますので、苦手な方はお控えください。

前提の流れ:
シアン→両手に怪我して風呂入れない。
クリス「風呂を手伝おうか?」
シアン「ヤローは嫌だ」
アッシュ「じゃあ、私が手伝おうか?」
シアン「\(^▽^)/」


 風呂の準備が出来たと、戻って来たアッシュに声を掛けられた。立ち上がるように促され、「悪いな」と言いながらその通りにする。
「悪いなんて、思っているのか?」
 アッシュは少し首を傾げて、可笑しそうに言う。
「いいや、幸運ラッキーだと思ってるさ」
 そう軽口を言ってみせた。
 申し訳ないとか、そういう気持ちが全く無いわけじゃあない。でもそれ以上にアッシュが俺の為に何かをしてくれるって事が、この上なく嬉しい。

 皆の前では下心がある風に喜んでみせたが…… でも本心では、そこまで邪な事を考えている訳じゃない。
 以前にもアッシュに裸は見られているし、洗ってもらった事もある。まあ、その時の俺は意識が朦朧もうろうとしていて、何も出来ない状況だったけどな。
 まあ、だから今回もわざわざ気にする程の事じゃない。
 はずだった。

 俺の前に立ったアッシュが、シャツのボタンを一つずつ外していく。袖を片方ずつ抜いてシャツを脱がされ、両手を上げて肌着も脱ぐ。襟から顔が抜けた時に、彼女の顔が目の前にあって、少しドキリとした。
 腰のベルトを外して、ズボンも脱がせてもらう。下着だけの姿になり、ここで彼女の手が止まった。

 今度は彼女はさっさと自分の服を脱ぎ始める。
「アッシュ?」
 まさか彼女も裸に……? と、思ったが、彼女も下着の姿になったところで手が止まった。
 そりゃそうだよな。

 いや下着の姿でも充分にそそられる。
 豊かな胸を押さえ込んでいる布は、その谷間までは隠しきれてはいない。締まった腹とすらりとした足は殆どがあらわになっている。
 肝心なところを隠す下着は腰骨のやや下の高さで軽く止められているだけで…… なめらかな肌の白さの先にあるものを想像させられて、ごくりと生唾を呑んだ。

 一緒に浴室に入り、髪を洗ってもらう。さっぱりしたところで、今度は浴室内で立たされた。
「次は体を洗い流さないとな」
 両の手の包帯を濡らさぬように手を挙げたカッコ悪い体勢の俺に、彼女が手にした魔法石で湯をかけていく。
 湯をかけながら、さらにもう片方の手で体を流してくれる。俺の首を、肩を、胸を。普段、こんな風に人に触れられる事はないところに、彼女の手の柔らかさを感じ、ぞくりと体が反応した。

 以前洗ってもらった時には、下着の下も隠すこともなく全身洗われていた。でも、そん時と今は明らかに違う。邪な気持ちなんて沸くはずがねえと、思っていた俺が甘かった。

 一通り体を湯で流すと、今度は石鹸を泡立てた目の粗いタオルで俺の体を首から順に丁寧に洗ってくれる。
 肩、腕、胸、背中、腹ときて、さらに彼女が俺の足を洗う為に腰を落とした。
 彼女の顔の横に、不自然に膨らんだ俺の下着姿があって…… 出来ればそれには気付かないで欲しいが、きっと無理だろう。せめて気付かぬ振りをしてくれているのが有り難い。
 これ以上は目立たぬように治めなければと、今日戦ったマンティコアの事でも考えようとしていると、彼女から声がかかった。

「もう少し足を開いてくれ」
 途端に今の現実に引き戻された。
 ああと返事をして足を開くと、余計に下着の形が目立ってしまう。彼女が足を洗う為に内股にタオルを持った手を差し入れると、下心がうずいた。

「……!」
 ダメだ、余計な事を考えるな。彼女の好意を下心で返すなんて、俺はそこまで最低な男じゃないはずだろう?

「あとは下着の下だけだが、どうする?」
 そう彼女が俺に尋ねる言葉に、抑えていた下心が跳ね上がりそうになる。
「いや…… さすがに……」
 気持ちを抑えながら応えると、変に口籠くちごもったような言い方になった。
「せめて、湯で流そうか」
 そう言われて、ああと生返事をすると、アッシュは軽く頷いた。

「見られたくはないだろうから、目はつむっておこう」
 アッシュはそう言うと、さらに俺に後ろを向くように促した。
 せめてもの気遣いは有難いが、彼女がかがんで俺の下着を下ろそうとした時に、突っ張った何かがしっかりと引っかかった。
 さっきからもうこんな状態だ。隠し通せるわけはない。

「湯を流すくらいしかできなくてすまないな」
 すまなくはないので、洗ってほしい。
 そんな邪な本音が脳裏に浮かぶのを必死で押しとどめる。
 彼女に腰回りに湯をかけてもらい、言われるがままに振り返ると、彼女はまだ目を閉じていてくれていた。

「どうした? 腕が疲れたか?」
 俺がしばらく黙っているのを、疲れたとでも思ったのだろうか。
「私の肩に肘を乗せるといい」
 混乱しかけた頭ではあまり考えることが出来ずに、言われた通りに彼女の肩に両肘を乗せた。そのまま彼女の背後の壁にもたれると、彼女の唇がすぐ目の前にあった。

 あと少し体を前に傾ければ、彼女の唇に触れてしまう。彼女は今も俺の体に湯をかけながら目を瞑っているから、その事に気が付いていないのか?
 荒くなった俺の息は、彼女の唇にかかっているだろう。頭の中でぐるぐると駆け巡る下心と、目の前にある彼女の唇という誘惑で、訳が分からなくなってきた。
 ああ、このまま唇を重ねたい……

 だめだ。このままじゃ自分が抑えられない。必死で顔をらせた。
「大丈夫か? もしかして、私に洗われるのは嫌だったのだろうか……」
 俺の右の耳元で、彼女の声がした。

 嫌じゃない、そんなんじゃない! むしろ……

「ち、ちが……」
 言葉を発しようと息を吸い込むと、彼女の髪の匂いが俺の鼻腔をくすぐった。
 その匂いでまた頭がくらりとしてくる。
「嫌じゃあ、ない…… 俺、もう我慢できない……」
 息を荒らしながら訴える。
「余計な我慢はしなくていい」
 彼女の言葉に何かが弾けた。

 だめだ、だめだ。もう我慢ができない。
 夢中で彼女の頬に唇を寄せ、そのまま頬をなぞっていく。自分の唇が、彼女の唇を見つけ、無理やりにそれを重ねた。
 彼女がぴくりと体を震わせる。それに構わず、両の腕で彼女を抑えつけたまま、無我夢中で彼女の唇を食んだ。
 好きだ…… アッシュ――

 カシャーン!!

 彼女が手にしていた魔法石を落とした音が浴室内に響き、我に返った。

 ――俺は…… いったい彼女に何をしたんだ?

 我慢ができなくて、つい情欲をぶつけてしまった。
 彼女はずっと好意で俺に接してくれていたのに。俺はそれを汚してしまった。
 ――静かに、頭が冷えた。

 唇を離し、彼女に見られぬよう顔を逸らせる。
「アッシュ、ごめん……」
 少しの間を置いて、彼女の首がわずかに項垂うなだれるのがわかった。

 彼女は、俺に落胆したんじゃないだろうか……
 嫌われる怖さで、心臓の音がバクバクと鳴り響いている。

「……体を温めないとな」
 彼女はそれだけ言うと、もう一度全身を湯で流し、手を添えて俺を浴槽へ導いた。
「湯から上がりたい時には呼んでくれ」
 全てを淡々と進めると、彼女はその言葉を残して浴室を出ていった。

 * * *

 彼は、私に謝った――

 本当は……唇を重ねたい相手は私ではなかったのだろう。
 だから、私に謝ったのだろう。

 それでも、あの僅かな間だけでも、愛してもらえたような気がして…… 嬉しかった。

 いいんだ。
 私は誰かに愛される資格はない。
 ならせめて、この大切な仲間たちに、この心を砕いて分けよう。


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