感覚に沿った試行錯誤と磨き方
※このnote記事は、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース 「クリエイティブリーダシップ特論II」 の課題エッセイとして記載したものである。
第12回ゲストは、長く受け継がれる伝統から最先端のテクノロジーまで、
古今東西のあらゆる技能を用いて新しいものづくりをするクリエイター集団「secca」を率いる上町達也さん!
大変素敵な作品の数々を見せていただきながら、穏やかな口調の中に、芯のあるお言葉がたくさん響いた講演だった。今回は上町さんのお話しの中で、特に印象に残ったお言葉をご紹介していきたい。
▶︎消費をするセンスが養われてない
私たちはそもそも、物が大量に溢れた環境で育ち、プラスチック製のおもちゃを与えられ、何を消費するべきか?について考えることもなく生きてきた。決して親が悪いとかそう言う話ではない。そもそもの価値観を変えていかないといけないのだ。
▶︎ものづくりの視点から「食」に関わっていく
これはなんとも意外な視点であり、関わり方だと思った。料理人の方と一緒に食体験を作っていくために、「お皿」などの食器を中心にデザインしたりもするとおっしゃっていた。農業に関わる人の気持ちをわかりたいと、土いじり、飲食店の経営まで手がけてみたことがあるというから、その「食」に関する知識吸収の貪欲さは本当に目を見張る物があった。
▶︎感覚に沿った試行錯誤をやってみる
一つ一つのお皿が非常に高級そうであったが、大量生産よりも、数少ない個人の好みに合わせた形で勝負を心がけているのだという。彼らは単に、クライアントワークを中心に仕事をしているだけでなく、価値を生むための研究開発も行っている。(なんなら、これが大半だともおっしゃっていた)売れる、売れそうだから作るのではなく、売れそうかそうかどうか分からなくてもまず開発、感覚に合わせて試行錯誤をしていくことで、ふっとどこかでその知見がものづくりに生かされていくのだという。自分たちで稼いだお金をもとに実験に回していく姿勢も、強くこだわりがありそうだった。
▶︎どんな人間があるかが「肝」
正直、本物・偽物どちらを感じるも価値判断や倫理感次第であり、大きな見方をすれば宇宙レベルでは差異がないという考え方はすごくユニークで面白いと思った。ただ、そういった制約がある中で価値判断を行うことも非常に大切になっていく。使い捨て=プラスチック(捨ててもいい)という目に見えない思い込みが養われてきたのは、きっと誰のせいでもないのだろう。ただ、プラスチックだって地球の貴重な資源を使った素材であることを忘れてはいけない。大人が使うもの=正、子供が使う=偽物、一時的なものであるという思い込みに支配されていくのはもったいない。壊すことだってあるかもしれないが、小さな時からいろいろな素材に囲まれて育っていくべきなのではないだろうか。こういった意識改革を少しずつ起こしていく上で、考えながら手を動かすことができるクリエイターにできること、入り込む余地は大いにありそうだと感じた。
▶︎苦手はショートしていく
自分の得意はとにかく磨き続けて、得意じゃないことはちゃんと認めてあげることも、自分のスキルを生かしていく上では非常に重要なプロセスのように思う。私はこの取捨選択がとても下手である。より、何に集中したいか?他者の協力を仰ぐべきなのはどこか?を見極めていきたい。