エッセイ 十五分の心理検査

十五分の心理検査

 梅田駅から阪急電車で四駅。庄内駅の近く、犬と街灯という本屋さんで「読む前に書け」というイベントがある。十五分で原稿用紙一枚以内を小説・エッセイ・詩と文章表現するものだ。私は前々からそういった集まりがあることを知っていたので一度参加してみた。
 私も少しは文学めいたことをしている人なので、文学の「ぶ」、最低でも「ふ」くらいは出来るかも、いや出来ろと自らを奮い立たせて参加してみた。テーマが与えられて、せーのでタイマーがカウントされていく。せーの、原稿用紙にペン先を走らせ叩きつける音が聞こえてきた。はやい。テーマは「空気みたいなもの」。浮かんでうかんで壊してバラして、またまた浮かべて。二分経ち三分経ち。そして三十秒を長い祈りに捧げた。
 よく思うことがある。私は何文字で人の心を打てるか、俳句は十七文字、短歌は三十一文字、今回は四百文字。これは文章を書く者にとって星のように手の届かないテーマだ。
 しかし、ここで求められているのは十五分間でどう対処できるかというものだと思う。何故十五分なのかと聞くと、昔の高校入試の小論文の制限時間が十五分なので、中学生にできるなら我々もということのようだ。
 「女がいる。」と言葉を殴っていく。それと同じだけの言葉を浴びながら書く。これを皆で合評して、また書いて。これを二回行うようだ。
 長い文章を、長大な世界を、鋭い感性を、時間に厳選された言の葉を、というものではないが、いつもと違う筋肉が鍛えられ、即興のための引き出しを再確認できる場だと思う。これは、一種の心理検査なのだ。短い時間で浮き彫りになる、技術と引き出しの傾向、思考回路に癖。面白いデータを得ることができた。
 皆様も一度は参加してみて、自分を見つめてみると面白いと思う。


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