都 圭晴

詩を書いております。自由な詩、が欲しいのです。「おもしろきこともなき世をおもしろく」が苦手な迷える人間。「VOY」発起人。「組香」代表。「Wonder」同人。関西詩人協会会員。第44回大阪文学学校賞詩部門佳作「硝子細工の夜」。 Xアカウント:@MiyakoYoshiharu

都 圭晴

詩を書いております。自由な詩、が欲しいのです。「おもしろきこともなき世をおもしろく」が苦手な迷える人間。「VOY」発起人。「組香」代表。「Wonder」同人。関西詩人協会会員。第44回大阪文学学校賞詩部門佳作「硝子細工の夜」。 Xアカウント:@MiyakoYoshiharu

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詩 家具付き四○四号室

家具付き四○四号室 黒革のソファは男を運んでいる。成人男性一人が横になれるくらいのちょうどいい大きさをしている。毎日部屋に帰ってきた男を乗せて、横にならせて寝させるのだ。ソファにはそれができたから、こっそりとここでないところへと毎日落下していく。移動するのは決まって、男が眠ってしまった後だ。 男は救い出されることを望んでいた。大いなる何かに存在を見つけて欲しかった。だからソファと落下していくのだろう。 時計はいつも構えている。針は両翼を広げながら、地平線の形へと向かう。

    • 詩 朝起きたら三十分後に講義が始まるんだけどいっつも起きているのが大変で困っている私

      朝起きたら三十分後に講義が始まるんだけどいっつも起きているのが大変で困っている私                       朝の六時半に起きて、リビングで寝ていたのだと気付く。ニャと合図すると春人が配給の缶詰めを持ってきてくれる。七時には私も春人も大学の講義を受けなくてはならない。私も春人も頭が良いと言われているエリートなのでサボることは許されない。私の部屋に階段と呼ばれる上階にあがれるものをリズミカルにジャンプして進む。春人に言わせたらゲームキャラクターのスーパーマリオに

      • エッセイ やり過ぎと特性

        やり過ぎと特性              子供の頃によく言われた言葉がある。ゲームは一日一時間。九十年代後半から二千年はじめに両親と交わした約束事だ。一日一時間以上のゲームは頭が悪くなると教え込まれ、周りの子に聞いても家で言われていたみたいだ。親同士で子供のプレイ時間を確認し、伝え合っていたこともある。今では考えられないことだ。今日言われていることは長時間のゲームが脳には良くないということだが、一時間くらいたいしたことではないようだ。  だが、何事もやりすぎは良くないようで

        • 詩 ストレス症候群◇

          ストレス症候群 国が天国から真っ逆さまに墜落する速さを計測するなんてできるのでしょうかと聞かれどう答えますか、私はコミュ障なので話したら口下手で要領を得ないため話すのを諦めるでしょうから誰かが口を開き頭の良い解説をし出すだろうと期待しており、やはり誰かが口火を切ったと思ったら彼は違う人でそれは分かるのです分かるのですその人の話し方にはインテリジェンスさが欠けていて眠たくなり突然そんなこと知ってるわボケと言いたくなり私の気持ちを察し代弁してくれる方が出てきて、もうその方は頭良

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        詩 家具付き四○四号室

          エッセイ 十五分の心理検査

          十五分の心理検査  梅田駅から阪急電車で四駅。庄内駅の近く、犬と街灯という本屋さんで「読む前に書け」というイベントがある。十五分で原稿用紙一枚以内を小説・エッセイ・詩と文章表現するものだ。私は前々からそういった集まりがあることを知っていたので一度参加してみた。  私も少しは文学めいたことをしている人なので、文学の「ぶ」、最低でも「ふ」くらいは出来るかも、いや出来ろと自らを奮い立たせて参加してみた。テーマが与えられて、せーのでタイマーがカウントされていく。せーの、原稿用紙にペ

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          詩 プロフィール

          プロフィール 三十代女性のプロフィールをみている 朝 マッチングアプリで流れてきた 通知の消去のように さあ みぎひだりと わけていって 最後の人 顔は大きく盛られている 友人はカオガチャと言っていた 最後の人になって プロフィールを読んでいる 僕は ジュンバンガチャなのかもしれない 将来を見据えたお付き合いを考えられる方と出逢えたらいいなと思って登録しました。 穏やかだと言われます。非常識なことがない限り怒りません。 好きなタイプは優しくて、周りに気配りができる方です

          詩 プロフィール

          詩 結びむすばれくるまれて

          結びむすばれくるまれて 本屋にてさがしている いま以上に いまを 窓ガラスに映るぼく ふりかえると本 物語によせられ さまざまに語られる 言の葉 源氏 物語 まくらの そうし 平安の世 恋に生き 文学の華 咲きみだれる ピンク きいろ 装丁はきみどり ゆめのゆきさき いつも 空をさがしている ああ ふりむいたイメージの調べ 表紙はあざやか うもれて生まれ 流れだす とおざかる言の葉 くらくらり まよいただよう空のように 結びむすばれくるまれて ひとかけらの詩

          詩 結びむすばれくるまれて

          詩 玩具

          玩具 それは、こうするしかなかった過去の話であり、今の話でもあるのかもしれない。この部屋には神々の名が刻まれたエロースが立てかけられている、ということ以外には特段変わったところがない。部屋に住む男は自称会社員で賃貸借契約を結んでいた、ことになっている。調べてみると大家は家賃を最初しか受け取ってはいなく半年も放置していたというのだから分からないことも多い。ワンルームのこの部屋で仮装パーティが行われ忌まわしき誘拐事件が行われていたとは想像しがたい。私はエロースを見つめながら捜査

          詩 ハーモニー

          ハーモニー 葉は陽のなかで 緑をとかして 風とゆれる 薄紫の蝶々は 赤、紫と 花を たどっていく すずめの鳴き声 ちいさなこども 紫の花は アメジストセージ このまま 蝶々とひらり かさなった 雲のない朝 樹の下で 耳を澄ます ままぁ 子どもがわらい かけだしていく 蝶々は 空にながれていく

          詩 ハーモニー

          詩 あるバイト ◆

          あるバイト (一) お金のない 困りあぐねた土曜日に 公衆電話から電話をする 友人コードVASD1356からの紹介です 単発で明日 効率良く仕事がしたいです 終わり次第 振り込み希望です 誰でもできる簡単な仕事はありますか  次の日の朝六時に  バベルビルの五階にて待ちます  この街にはその名のビルは  一つしかありません  時間は四時間となり  持ち物は不要です  遅刻や欠勤はあなたの不利になりますため  どんな状況下でもお越しください  服装はなんでも構いません  業

          詩 あるバイト ◆

          詩 研修マニュアル

          研修マニュアル 静けさと一緒に 分かり切ったマナーと お客様対応の姿勢の話を聞いている 携帯の通知音だけが 意味のある音に聞こえた 僕は時計を見て 一分は長いと踏ん張る みんなが知っているルールは しっかり守らないと 大変なことになるんです 誰かが こくりこくり 頷いている とんちんかん とんちくかく こくりこくり頷く 講師が前の方から 当てていく しっかり守らないと 大変なことになるんです 誰かが僕の答えを 言っている とんちんかん とんちくかか 参加している しっ

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          詩 うぶごえ

          うぶごえ 父が叫んでいる 母も叫んでいる 弟も叫んでいる 友人も叫んでいる お隣も叫んでいる ご近所も叫んでいる 街も叫んでいる 国も叫んでいる 僕も叫びだした ぼくは 早く立ち上がらなければいけない

          詩 うぶごえ

          短歌4首③ フリーペーパー掲載分

          私の所属している同人誌「組香」が文学フリマ大阪に出店した際のフリーペーパー掲載分です。 夕方の空を見上げて飛ぶ人を訳もわからず愛していたい 深夜から深夜をさがす人がいて私は彼にひかりをわたす 半径に好きな本だけ並べてる命の隙間で言葉を煮てる 一文字の意味や響きを手に取って光をあててあなたを知って

          短歌4首③ フリーペーパー掲載分

          エッセイ 実学思考ーー本屋へ行こう

          実学思考ーー本屋へ行こう  ずっと行きたいと思っていた大阪府豊中市の本屋「犬と街灯」に最近行くことができた。X(旧Twitter)で前々から知っていた、阪急沿線ののどかな街にあり、文学フリマで売っているような同人誌やZINEを販売している。ジュンク堂や紀伊國屋書店で売っているような本が一切ないのが特徴的だ。  ネットでしか販売されていないようなものを手に取って読むことができ、趣向を凝らしたデザインを肌感覚で愉しめる。本屋でもあり空間にも意識されたギャラリーのようにも思えた。

          エッセイ 実学思考ーー本屋へ行こう

          詩 心地のいい太陽系で

          心地のいい太陽系で 地の 斜め下から 光はもう  僕のそばまで落ちていた 青さを背負い 照らしだす ロニセラニティダ紅葉 そんな名前の 燃えるような 洒落た赤紫に出逢う ある涼しげな朝のはなし 長い名前はおまじない

          詩 心地のいい太陽系で

          短歌4首② フリーペーパー掲載分

          私の所属している同人誌「組香」の文学フリマ大阪に出た際の、フリーペーパー掲載分の一部です。 みどりのてイロハモミジのこゆびには真っ赤に結ぶ秋の紅 蓋のない空一面に雲はない見上げるしかない夏の暑さと 残像よ 時が繋いだ晴ごろも 夏が溺れた花火が散った ご足労かかってしまったはずなのに地平の果てで夕陽ひろえて

          短歌4首② フリーペーパー掲載分