乗馬教室11 フレグモーネ
コスモラピュタ 「フレグモーネ」
2024年8月24日
先週はお盆で道が混むだろうから、その週はレッスンはパスした。それで今週はがんばって2回行くことにした。
私のもう一人のお気に入りのコスモラピュタが、フレグモーネという細菌性の病気のため、お部屋で休んでいるということを受付で聞いて知った。
フレグモーネは競走馬にはそんなにも珍しくない化膿性炎症で目に見えないくらい小さな傷から細菌が入り、あっという間に足が腫れあがるんだって。別名「傷腫れ」。すごく痛いらしい。
心配なのでさっそく馬房にお見舞いに行くと、ラピュタはこちらにお尻を向けてあちらの窓から外を眺めていた。右の後ろ脚の下半分がぱんぱんに腫れていて、左脚の2倍以上の太さになっていた。その後ろ姿がなんとも辛そうで寂しそうで、
ラピュタはどうなるんだろう・・・・。私は不安を募らせた。
「ラピュタ、大丈夫?」
声をかけると、ラピュタはゆっくり回れ右をして小窓に顔を持ってきてくれた。
「どうしたん?」
「分からない。俺、免疫力がないのかも・・・・」
元気がない。
「痛い?」
「うん。痛い」
かわいそうにお馬さんとか、うちで飼っている犬猫たちも、動物は痛くてもつらくても我慢をする。
治療は抗生剤と炎症止めだそうだ。
人間にも蜂窩織炎(ほうかしきえん)という同じような症状になるものがあって、最悪の場合、敗血症になったりもするんだって。お馬さんの場合は敗血症とまでいかなくても、足を病んでしまうとそれが致命傷になることもあるので、とても心配だ。
いずれにせよ大切なことは、早期発見と早期治療だ。三木ホーストレックはお馬さんたちにとって良い施設だと思う。普段から病気や怪我の予防しているようだし、それでも具合が悪くなってしまったときには、すぐにお仕事を休ませて治療してあげてるみたい。
ラピュタのフレグモーネも発症してすぐに処置をしたので、大事には至っていないとのこと。
でも、かわいそう。
「お仕事いっぱい休んで、ちゃんと治そうねえ」
そう言い残して、モンテのお部屋に行った。
今日のレッスンもモンテが相棒だ。
いつも通り、最初はじっとしているモンテの上で立つ&座るをして、そのあと歩いてもらって立つ&座るをする。それができたら、軽速歩のモンテの上で立つ&座るの練習だ。
いつもは先生の指示どおり、モンテは軽速歩を始めてくれる。そのあとは私のタイミングの取り方やバランス次第で、モンテは自身の判断でそのまま軽速歩を続けたり、止まったりするんだ。
けれど、その日は違っていた。
軽速歩の指示を出されても、モンテは常歩(なみあし)のままでだらだら歩き続けた。何度指示をされてもやはり常歩のまま。
「今日はまったくやる気ないみたいですねえ」
「しんどいのかなあ」
「どうなんだろう。暑いからかなあ」
先生とそんなことを言いあいながらも、モンテも体調を崩しているのではないかと、私は心配になった。
「どこか痛いとか、病気とかじゃなかったらそれでいいんですけど」
私がそう言うと、先生は苦笑いをした。
「大丈夫ですよ。多分、やる気が出ないだけでしょう」
「モンテはこのあともお仕事あるんですか」
「いいえ。今日はこの1コマだけです」
そのまま時間が来て、レッスンは終わった。
洗い場でお手入れをして、おやつタイム。
モンテに聞いてみた。
「今日はずっとだらだら歩いてたけど、なんで?」
「俺、しんどいねん。足痛いねん。俺も病気かも」
「ウソや」
「おまえ、さっきラピュタに、痛かったりしんどかったりしたら、無理しなくていいって言うてたやろ。俺もしんどいんじゃ」
レッスン前の馬房でのラピュタと私の会話を、モンテは筋向いのお部屋で聞いていたのだ。
かねがねいろんな先生からモンテは少々おさぼりなところがあると聞いていたが、それは本当だったようだ。
お馬さんたちにとって、ここはかなりホワイトな職場だと思う。
お馬さんたちは1日に1コマか、2コマのレッスンしか受け持たない。つまり多くても30分×2回である。
「ラピュタはいつも素直で真面目ないい子だし、今は病気だからお仕事休んでしっかり治してって言うたんよ」
「俺もいい子や。俺も病気かもしれんよ」
モンテはそう言うが、彼はいつも食欲旺盛で、ご飯を残したり食欲不振に陥ったことは一度もなかったとか。ものすごく丈夫なお馬さんだそうだ。ただ少々動きは緩慢だとか。もしかしたらこの緩慢さが健康の秘訣なのかもしれない。
まあ、19歳という年齢は決して若くはないから、無理しないに越したことはない。若いころがんばったことだし、何せ繋養馬だからね、いいか。
「そうそう。モンテも無理しなくていい」
馬房への帰り道、私は笑ってしまった。
8月26日
今日で23鞍目くらいかなあ。
ラピュタの容体を受付の先生に聞いたら、順調に回復していて、ゆっくり引馬を始めたそうだ。死んでしまうことなどない、しばらくしたらお仕事にも復帰できる、とのこと。
ほっとした。
レッスン前に馬房のラピュタに会いに行った。確かに2日前より腫れはおさまっていた。
よかった・・・・。
その日のレッスンもモンテだった。
相変わらず、立つ&座るの練習だ。
「立つ&座る」を私が克服する日は来るのだろうか。果てしなく高い壁。私は一生これをやっているのかなあ・・・・。まあいい。
今日はモンテは少しだけ軽速歩をしてくれた。立つ座るの3セット目くらいで私はバランスを崩して、モンテが必ず止まる。
やっぱり私はダメな人で、ちっとも前に進めないんだけど、どうしていつもいつも、こんなに楽しいんだろうねえ。
ラピュタ、今度会ったときには完治してますように。
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