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炭治郎とさくら2 レッグペルテス

レッグペルテス 2021年12月

2021年10月 予防接種
譲渡から1年が経ったので、3種ワクチンを打ってもらいに行った。3種って、何なのか、私は分かっていないので、この際、去年譲渡してもらったときの接種証明書を見た。
猫ウィルス性鼻気管炎、猫カリシ感染症、猫汎白血球減少症、
と書かれていた。何のことかさっぱり分からないけれど、打ってもらった。

その年の暮れ、タンジロウに異変が起きた。
びっこを引いている。
3日間ほど様子を見ていたが少しもマシにならないので、動物病院につれていった。
多分ねんざでもしたのだろう、という診断で、痛み止めと炎症止めの飲み薬をもらって帰ってきた。
炭治郎は食いしん坊なので、薬を混ぜたごはんでも、がつがつ食べてくれて助かった。
様子を見ていたが、炭治郎のびっこは治らない。ねんざだったら「日にち薬」で少しずつマシになっていくと思うのだが、それどころか、少しずつひどくなっているようにも見える。
それで1週間後ふたたび動物病院へ。
「ひどくなっているように見えるんです」
「もしかしたら、脱臼でもしてるのかもしれませんねえ」
獣医さんはそう言ったが、私は脱臼ではないと思った。脱臼なら突然びっこを引きだすだろうけど、炭治郎の場合は少しずつひどくなってきたのだから。
でもまあ、ここはプロの見解を信じるべきなのか。
私が納得しきれないのを見て取ったのか、獣医さんが言ってくれた。
「レントゲンデも撮ってみますか」
私は救われた気持ちで、レントゲンをお願いした。
そして撮影後、パソコン画面に映るレントゲン結果を見ながら、獣医さんが言った。
「股関節のところが少し変形しているようにも見えるんだけど、これは生まれつきのものかもしれないんだよねえ」
「じゃあ、これは今回のびっこの原因ではないということですか」
「うん、まあ、この部分だけいろんな角度からレントゲンを撮りなおしてもいいんだけど」
結局、またもやレントゲン撮影。股関節のところだけいろんな角度から詳しく見ることに。
いくつかのレントゲン写真を見ながら、獣医さんが首を傾げ、独り言のように言った。
「うん?レッグペルテス・・・・。いやいや、そんなことないよな」
「何ですか。そのレッグなんとかって」
獣医さんは獣医学の分厚い本を開いて説明をしてくれた。
レッグペルテスは大腿骨頭壊死症といって、名前の通り、後ろ脚の付け根が壊死する病気だ。
ほおっておいても死にはしないんだけど、壊死が進んで、痛みもあるししまいには歩けなくなるらしい。じっとしていることによって、体が弱って余病が出てきたりするそうだ。いずれにせよ、このままにしておくと健康で楽しい一生は送れない。
「でもねえ、レッグペルテスは考えにくいんです」
レッグペルテスは小型犬で生後1年以内の子犬にはありえるんだけれど、炭治郎は猫だし、生後1年半だ。
「僕も何十年と獣医をしてるけど、猫のレッグペルテスにはこれまで1度もお目にかかってないんですよ」
とりあえず、その獣医さんの知り合いで犬猫の整形に詳しいご友人にレントゲン写真をみてもらってから診断し、治療を考えるということで、私は炭治郎を家に連れて帰った。
それから1週間が過ぎたが、炭治郎の脚の状態はいっこうによくならない。3度目の診察だ。猫ではあるが、「レッグペルテス」、という答えであった。ごくごくまれに猫でもレッグペルテスを発症することがあるそうだ。
「手術ですか」
私が尋ねると、
「そうですね。治すなら手術ですね」
という返答であった。
もちろん、手術をお願いした。

年が明け、1月下旬。いよいよ手術。
午後1時半に病院に行き、午後6時に炭治郎を迎えに行くことになった。
かかりつけの獣医さんと、先生のお友達である犬猫の整形に詳しいという獣医さんと、助手さんの3人がかりで手術をするという。もちろん炭治郎は全身麻酔だ。すごいことになった・・・・。
でもこれで炭治郎が元気になってくれるならそれでいい。
犬猫の股関節は取ってしまったからと言って、人間のように人口頭骨を入れなくても、そのままで半年か1年もすれば、元のように元気に走り回れるとのことだ。
「ではよろしくお願いします」
いくら手術に失敗はないと言われていても、炭治郎を預けるとき、このまま今生の別れになってしまったらどうしよ、と不安がよぎった。
どうか無事に手術が終わりますようにと祈った。
予定通り、午後6時に炭治郎を迎えに行った。
右後ろ脚の毛を剃られて、大きな絆創膏が貼られ、そこを舐めないようにエリザベスカラーをつけられて、奥から出てきた。
手術前、炭治郎は終始ビビりたおしていて、緊張のあまり抵抗することも鳴くこともできなかったそうだ。そして手術が終わって全身麻酔から覚めたとき初めて、ようやくシャーって怒ったそうだ。
炭治郎は私の顔を見て、ひと声鳴いた。
「なんだか分からないけど、僕、えらいことになってるみたい」
そんな感じだろうか。
手術は無事に終わって、獣医さんが切除した股関節を見せてくれた。1センチほどの小さなものだった。
そこに病気がないかどうか、つまり悪性の骨腫ではないかとか、菌に侵されていないかどうか、検査に出すとのこと。
とりあえず飲み薬と塗り薬をもらって、炭治郎と帰宅した。
ひとりでお留守番をしていたさくらは、見たこともないエリザベスカラーを着けた炭治郎の姿にびっくりして、物影にかくれてしまった。
炭治郎はびっこどころか、尻もちをつきながら動き回った。
さくらは、ヘンなものを顔につけてくるくると踊り狂うような動きをしている炭治郎にドン引きだ。彼女は気が弱く怖がりなので、こちらも心配だった。

それから半年がたった。
炭治郎の後ろ脚は毛が生えそろって、手術したことなどまったく感じさせないくらい元気に動き回っている。
このレッグペルテスは大出費であった。
人間と違って、猫は健康保険に入っていないので、全額負担しなければならない。動物を飼うということはこういうことなんだね。
でも治って、本当によかった。

2022年10月
炭治郎とさくらが来て、マル2年がたった。甘えん坊で食いしん坊の炭治郎はだいぶこの家と私に慣れてきたように思う。そしてすごい勢いで大きくなり、ついでに太ってしまった。
さくらはまだ、懐いてくれているとは言えない。キジトラはヤマネコみたいに精悍でカッコいい。こちらで用意したごはんをあまり食べない。だから炭治郎よりかなり小さいし、太りもしていない。どちらかというと痩せている。
でも、蚊とか小さなクモを見つけると、それはそれは見事に狩りをするんだ。飛んでいる虫をジャンプ&猫パンチで落として、ついでに食べてしまう。キジトラのさくらは野生本能が強い。だからそんなふうにして自分で獲物を捕まえるのが楽しいのかもしれない。その様子を唯々じっと傍観する炭治郎。2人は対照的である。
さくらは、今は炭治郎が私にデレデレすりすりしてくるのを離れたところから見ている。もしかしたら本当は自分も甘えたいのに、警戒心が強い性格だから、それができないのかもしれない。もしいつか炭治郎みたいに甘えてくれたら、私はめちゃくちゃ嬉しいけどね。
これまで私が手を伸ばすと、さくらは逃げていった。だから今はさくらが自分から甘えに来てくれる日を待つことにしている。

無事帰宅
炭治郎の姿にビビるさくら


股関節

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