【5分くらいでわかる地理】#001 アイスランド②
今回は、「アイスランドでなぜアルミニウム工業が発達しているのか?」
をお話します!
①アイスランドのエネルギー事情
アイスランドのエネルギー事情ですが、水力発電が73.3%、地熱発電が26.6%となっています。残りの0.1%は風力発電。つまり、電力需要を100%自然エネルギーでまかなっているわけです。
アイスランドは「火山の国」です。アイスランド島はプレートの広がる境界に位置しています。広がる境界ということは、プレートがそれぞれ反対方向に動いていきますのでアイスランド島は引き裂かれているわけです。引き裂かれて将来的には二つの島に分裂します。何億年とかいう未来でのお話だと思いますので、我々はそれを見届けることなく死んでしまいますね。
アイスランド島は大西洋中央海嶺上に位置する
『目からウロコのなるほど地理講義(系統地理編)』
(学研プラス)より抜粋
アイスランドは火山が非常に多い国ですので、火山を作りだす地熱を使って発電を行っています。降った雨というのは土壌中に浸透していき、その後、地下に存在するマグマにまで到達すると、マグマの熱で水蒸気で形成されます。水蒸気はだいたい地下1000メートルから3000メートルぐらいの所に止まります。井戸を掘って高温の水蒸気を取り出し、タービンを回して発電する。これが一般的な地熱発電の仕組みです。
②地熱発電の長所
地熱発電は二酸化炭素をほとんど出さないという長所があります。そして地球内部のマグマを利用しますので基本的にエネルギー源の枯渇の心配がありません。しかもこの地中の話なので、太陽光発電や風力発電のような、天候や昼夜の別に左右されずに発電できます。地熱発電は非常に安定した発電方法です。
世界的に見てみるとやはり地下にマグマが多い国、アメリカ合衆国や日本、フィリピン、インドネシア、ニュージーランド、イタリア、そしてアイスランド、こういうところで地熱発電が盛んに行われています。アイスランドは地熱発電割合が26.6%、地熱への依存度が高い国です。
世界の地熱発電量上位10カ国
資料:GLOBAL NOTE 出典:EIA
アイスランド島が位置する緯度帯は偏西風が卓越しています。偏西風帯ですので西から風が吹いてきますから、湿った空気が西から吹いてきます。つまりアイスランド島の西部、ここが偏西風の風上側となります。一般的に風上側は雨が多いですので、雨、つまり水の落下エネルギーを利用して水力発電を行うことが可能です。
③フィヨルドの形成
アイスランドは南部は単調な海岸線を示しますが、北部から東部にかけての海岸線は結構出入りが激しくて複雑です。これはフィヨルドが形成されているからです。フィヨルドというのは、かつて氷河によって削られてできた深い谷、つまりU字谷が沈水して形成されます。
フィヨルド
つまり、フィヨルドが見られるということはその前の段階でU字谷も見られるはずです。U 字谷というの深い谷ですから、水の落下エネルギーを利用して水力発電を行うことができる。ちょうどそこは偏西風の風上側となって雨が多い。一石二鳥ですね! そのためアイスランドでは水力発電が非常に盛んに行われています。
U字谷とフィヨルド
『目からウロコのなるほど地理講義(系統地理編)』
(学研プラス)より
アイスランドの人口はおよそ34万人。人口が少ないため、いわゆるエネルギー需要は大きくありません。国民一人当たり電力消費量が高くなっても、国全体の電力消費量は多くないのです。そのため電力需要を自然エネルギーだけでまかなえてしまうわけです。 自然エネルギーを使っての電力を消費していますので、国民一人当たり二酸化炭素排出量は少ないです。
アイスランドの国民一人当たり電力消費量は、断トツで世界最大です。世界で最も電気を使う国民、それがアイスランド人なんです。どれくらい使ってるかというと、2016年の統計で国民一人当たり、およそ53 KW の電力を使っています。53 kw 使ってるといわれてもピンときませんが、第二位のノルウェーが23キロワットですから、実に2倍以上、第二位にダブルスコアをつけています。ちなみに日本人は7 KW、実は日本ではそんなに電力は使われていないみたいです。寒い国では「暖をとる」ために、暑い国に比べて国民一人当たりの電力消費量は高くなる傾向にあるのです。
世界の国民1人あたり電力消費量(kWh、2018年)
資料:GLOBAL NOTE 出典:EIA
また暑い国の中でも、特に産油国は大きいですね。バーレーンやカタール、クウェート、アラブ首長国連邦などは国民一人当たりの電力消費量が非常に大きくなっています。中東の産油国には人口大国はありませんし、省エネの意識がなかなか働かないのかもしれませんね。
④アイスランドは電気代が安い!
アイスランドでなぜアルミニウム工業が発達しているのか!? もう、ピンと来てる人がいることと思います。
電気代が安いからです!
アルミニウムは、ボーキサイトから作っていくわけですが、ボーキサイトからアルミナを作り、アルミナを電気分解することによってアルミニウムを作ります。そしてこのアルミニウムを作る過程において電気代というのがコストの大体8割ぐらいを占めるといわれているわけなんです。
アイスランドは自然エネルギーだけで電力の国内需要を賄えてします。アイスランドでは、電気代が安いからこそアルミニウムの生産が非常に盛んに行われるのです。
さて、ここで問題です!
アイスランドの最大輸出品目って何でしょう???
こういう問いかけをして、アイスランドの最大輸出品目が「アルミニウム」でなかったら、皆さんは確実に怒りますよね!? もちろん、「アルミニウム」です。
アイスランドの輸出品目(2018年)
1位:アルミニウム 40.1%
2位:魚介類 36.8%
3位:魚粉 3.8%
4位:機械類 3.8%
5位:鉄鋼 3.2%
アルミニウムというのは、アルミナを電気分解して作ります。そしてアルミナの素はボーキサイトです。ボーキサイトは熱帯土壌でたくさん取れます。熱帯は雨が多いので、雨が降ると土壌中に含まれてる様々な養分、有機分が雨で溶けて流れていきます。すると土壌中に含まれている鉄分やアルミ分、チタンなどが残留していきます。残留していたアルミ分がボーキサイトの素になっていきます。
ここで一つ疑問が湧くはずなんです。 アイスランドは熱帯の国ではありません、そのためボーキサイトは取れません。いかにしてアルミニウムの素を調達しているか!?
輸入ですね!
アイスランドの輸入品目の上位に「アルミナ」というものが出てくるはずです。統計データを見てみると、実は輸入第3位にアルミナが出てきます。
アイスランドの輸入品目(2018年)
1位:機械類 21.0%
2位:石油製品 13.9%
3位:アルミナ 11.1%
4位:自動車 10.3%
5位:衣類 2.5%
アイスランドは「アルミナ」を輸入し、安い電気を使って「アルミニウム」を作って輸出する。そういった貿易をやっているわけなんです。
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