#004:紙
一般的に書籍が世に送り出されるまでには、様々な行程を経る。
「今度お仕事をさせていただく編集者は、どんな編集方針なのかな?」
最初の打ち合わせのさいのワクワク感がすごく好き。
「どんな反応が返ってくるかな?」
目次案とサンプル原稿を送ったときのワクワク感はもっと好き。
書籍というものは、それを世に送り出す前に、まずは編集者が「面白い!」に言ってもらわなければならないと思って書いている。
編集者の目論見はだいたい当たっていると信じているし、その方がより良い書籍ができると思っている。あまり理解されないかもしれないけど、著者と編集者はある種、恋人のような関係だから。
そしてそれ以上に好きなのが、初校ゲラができあがるのを待っているとき。
著者が執筆した原稿を元に編集者が作った、加筆修正や誤字脱字のチェック用の校正紙がゲラ。そして、最初に出来たゲラが初校ゲラ。
初校ゲラは、著者が執筆した文章が実際の書籍のようなレイアウト、デザインで作られるため、「おー、こんな感じで書籍になるのか!」と実にワクワクする。
初校ゲラに赤入れ(修正指示)をして、それが反映されたものが再校ゲラという。その後は順次、三校、四校と続く。
私が執筆した学習参考書、『目からウロコのなるほど地理講義』(学研プラス)は六校までいった。これは例外だが、だいたいの書籍は再校、または三校くらいで印刷所に行き、製本されて書店に並ぶ。
再校や三校が手元に届くと、初校の段階で一度見ていることもあって、正直感動は半減する。やはり初校ゲラを手にしたときの感動は、書籍を作る度に得られる。
私は、与えられた端末の中でしか見られない電子書籍より、目の前に広がる全てがディスプレイとなる紙書籍の方が好きだ。
「紙書籍は場所を取る」とか、「持ち運びが大変だ」とか、そんなことはどうでも良くて、実態が好きなのだ。だから、電子書籍を購入することはほとんどなく、買うとしても自分の書籍くらいじゃないだろうか。
初校ゲラの紙が届いたときは感動する。
その時点こそが、自分の書籍と初めて出会う瞬間でもあるから。
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