ため息の夕方、半開きの目で窓を見た。
優しい気持ちになる夕方もあれば
沈むような気持ちの夕方もあって
あの日の私は間違いなく後者だった。
キッチンには、昼から洗ってない食器が積まれていて、床には子供がハサミで切った紙くずやら、お絵描きに使ったペンやらが散らかっていて、そこに私のため息も合わさって疲労感で満ちていた。
この状態はきっと実家の母がみたら怒るだろうなと思いながら、だけど片付ける気も起こらないから、本来ならば夕飯を作っているだろう時間に私は普段描かないイラストを描いてしまっていた。普段しないことをあえてやるなんて、まさに現実逃避である。
というか今日は子供が昼寝してる時間を有効活用できなかったから、その残念な気持ちがさらに憂鬱さを際立たせていたのだった。
下手なイラストを描きながら今日これからのTo Doをざっと頭に浮かべてみる。
片付け、夕飯の支度、洗濯物の処理、子供を風呂に入れる。
作業工程を考えるだけでゾッとしたので、すぐにやめた。
もう何度目か分からないため息を吐いた。
時計の針は夕方に終わりを告げようとしている。
身体は依然として頑なに動こうとしない。
そろそろどうにかしたい、
そんな気持ちでふと窓を見た。
その瞬間、憂鬱の重みで半開きだった私の目が少し開いた。
いつもと同じと思っていた景色が
少し違った姿をしていたのだ。
田んぼの水面に映る夕焼けのそら
桃色と青とグレーが合わさってムラサキ色ような水彩画が広がっていた。
淡く柔らかいけれど、優しいとはまた違う色。
私は何故かその色に怠惰な自分も許してくれたような気がして、停滞していた頭の中に音が流れはじめた。
多分アコースティックギターの音だろう。
曲じゃなくて、一弦ずつ音を鳴らしている感じ。
心には街頭の灯りが点灯していくようにポツポツと明るさを取り戻す。
すかっと心が晴れるような変化ではないけれど、むしろそれが良かった。ぼんやりとじんわりとした変化の方が寄り添ってくれている気がしたから。
これなら行けるかも。
目の前の景色に心が動いたならば、あとは大丈夫。根拠のない「大丈夫」と戻ってきたぬくもりを感じながら、伸びをした。
そして完全に陽が落ちたら、動けなかった分を取り戻すんだと決意した。
#夕方 #空 #憂鬱 #あんまり読み返したくないやつ #長いです