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秋田のおいしい記録 ~11月の秋田取材旅
秋田に行ったら食べに行きたいお店がいくつかある。
その一つは「中華料理 盛(さかり)」(秋田市)さん。東京や大阪でもなかなか食べることができないクリエイティブな料理を出してくれる。地元でも大人気のお店だ。
平日昼のみの営業のため、タイミングが合わず最近はずっと行きそびれていた。今回は盛さんと親しい郷土史研究家の小松和彦さんに連れていってもらった。
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盛さんではいつも「鳥そば」を注文する。あっさりした塩ベースの中華麺。紹興酒やパクチーの香りがふわっと漂い、その上コクがあって、一度食べたらクセになる。
この日の盛さんは開店前の厨房で準備をしながら、これまでの料理人の経歴を語ってくれた。数年前に一度伺ったことがあるが、盛さんのお話はルポルタージュ作品を作りたくなるほど面白い。お店のスタッフの方やファンの方にもお話をお聞きできたら、面白い展示になりそうだ。
この日は「鳥そば」の他に、盛さんのおすすめ「豚の角煮と豚足と里芋の煮込み」をいただいた。豚足のトロトロ具合が最高。
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盛さんの手にかかると、旬の食材はこんなお皿になるのだ、と毎回びっくりする。この表現の力は果たしてどこから生まれてくるのか、今度ゆっくりお話を伺ってみたい。
秋田市の繁華街、川反へ
前回の記事「美大の講演会で伝えたかったこと」で書いたトークイベントはこの日、18時頃に終了した。
ちょうどその頃、四国でお仕事をご一緒しているYさんとAさんから秋田市に向かっているという連絡があり、合流することになった。合流場所は秋田市の繁華街・川反(かわばた)。
私が秋田を去った当時は新型コロナの流行の影響で、川反は閑散としていた。多くの人が集まり活気ある様子に、雨の川反を歩きながら、あれから時間が随分流れたことを感じる。
川反にあるお寿司屋さんに入ると、カウンターにディレクターのYさんとデザイナーのAさんが既にいらっしゃった。お2人は全国を飛び回っており、この日は北海道から秋田へ来られたそうだ。
「宮原さんが秋田にいるので、そのタイミングに合わせて来ました」
とYさん。嘘のような本当のような話である。
ということで、現在四国で進行中のお仕事のお話をしながら、愛媛出張が決まった。
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おいしいお寿司やお魚料理が眼前に広がる中、仕事の話になるとそちらに心が持っていかれてしまいなかなか頂くことができなかったが、「食べて食べて」と勧めてくださった海老の「おどり」やお刺身は最高においしかった。
その後「近くにおいしいラーメン屋があるので行きましょう」とYさん。懐かしの「そば処 紀文」さんであった。8年前に名物の「千秋麺」をよく食べにきていたお店。
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夜の22時半というのに仕事帰りの人々で満席だった。ふわっとカレーの良い香りがしてくる。どうやら「カレーそば」が人気のようだ。温かいお蕎麦を3人ですすると、心が一層和んでくる。ああ、おいしい。
スーツ姿の人々であふれる店内を見ながら、Yさんは「今みたいにスマホやネットが発達していなかった当時は(退社したら)仕事を終われたので幸せだったのでは。今はいつでも仕事ができてしまうから終わりがない」とおっしゃった。
昔を思い出し、思わず考え込んでしまった。果たしてどちらが幸せなのだろう?
カレーそばをすすりながら、昔と今、そして秋田で暮らした5年間の記憶、さらに四国と秋田を行き来するような感覚が交錯するこの夜のことは、忘れることができないと思う。
取材旅はつづく