美大の講演で伝えたかったこと ~11月の秋田取材旅
昨年11月末に秋田へ向かった。秋田公立美術大学(秋田市)で行われる秋田人形道祖神に関するスライドトークが控えていた。
今回のトークイベントは、同大学の大学院生である郷土史研究家の小松 和彦さんがお声をかけてくださり実現した。
「絵画やルポルタージュ作品を通じ、地元に根付く文化をリアルに伝える活動について話してほしい」と小松さんから依頼を受け、「人形道祖神を広めたアートの発信力」と題しお話させてもらった。
トークの内容
2023年、ニプロハチ公ドーム(秋田県大館市)で開催されたイベント「新・秋田の行事 2024」内に展開された「不思議な神さま館」を作る過程を軸に、3か所の集落から本物の神様をお借りすることができた理由、人形道祖神を祀る4つの集落を取材しそれぞれのストーリーをルポルタージュ作品化する様子等ご紹介した。
伝えたかったこと
この度のトークイベントで一人の女性と再会することができた。
今回の講演に参加してくれた秋田公立美術大学1年生のKさんである。
民俗行事に興味があるという秋田県出身のKさんは、昨年夏に「末野のショウキサマ」(秋田県横手市大森)と呼ばれる人形道祖神の作り替えを見学しにやってきた。
末野集落では15名ほどのみなさんが力を合わせて、4メートルという大きなショウキサマを作り上げていく。人形道祖神の行事を初めて見学したKさんの言葉が今でも忘れられない。
「描くとか作るとかは特別なことだと思っていたけれど、とても自然なことなんですね」
絵描きをやっている自分の心に突き刺さるような、まっすぐな言葉であった。
結局のところ、美術大学の学生のみなさんに一番伝えたかったことは、Kさんの言葉そのものであった、とKさんに再会しはっと気づかされた。
日常の中に
私はこれまで集落に入り、地元の女性の井戸端会議に参加したり、何年も通い続けている集落では顔見知となり「久しぶり!」と声をかけてもらい近況を伺っている。
村の長老には昭和初期頃のご両親のお話を伺い、今につながる「信念」の根っこに触れさせてもらったこともある。今では考えられないような過酷な状況に驚かされることもあった。
村の方々が日々営まれる暮らしの中に、人形道祖神の凄さがある。
それを一つでも拾い上げ伝えていくことに、私は表現者としての喜びを得ているのだ。
嬉しかった言葉
トークイベントに参加された方から励みとなる感想をいただいた。
「宮原さんの視点からのお話は聞きやすく、人形道祖神に近づける気がした」
Kさんの言葉を胸に、今後も集落の迫力あるみなさんの様子を追い続けようと思う。
取材旅はつづく