秋田から白い宝石が届く
それは突然のことだった。
宅配便の男性が重そうな荷物を持ってきてくれた。ラベルをみると「北観音堂のオニョサマ」づくりを率先してやられているTさんからであった。
なんだろう?でも、この重さはもしかして・・・
箱には5キロのあきたこまちと、1升(約1.5kg)のたつこもちがあった。
先日の秋田取材旅では、みなさまから自家製のお漬物や野菜、サキホコレなど絶品のお米をいただいた私は、大阪でそのおいしさに何度も舌鼓をうっていた。またしても貴重なお米をいただいてしまったのである。
翌日御礼のお電話をしたところ、3年ぶりにTさんとお話をすることができた。NHKの番組取材でお世話になった以来だ。Tさんは御年70代で、笑顔が素敵な男性である。
北観音堂(秋田県大仙市)では、15年ほど前にオニョサマをバリバリ作り替えていた長老が亡くなってしまった。ワラの部品を作れる人がいなくなり、オニョサマのひげとなる杉の葉の入れ替えをかろうじて行う状況であった。
このままではいけないと考えたTさんは、仕事から帰ると、オニョサマの「ツノ」や手足、前掛けなどを一人で作り始めるようになった。
「自分がまず率先してやってみる。そして集落のみんなも徐々に一緒にやってもらえたらと嬉しい」とTさんは話す。
詳細はインスタをご覧いただくとして、Tさんとのお話の中で、
「オニョサマづくりを率先してやっていた先代は引退していた身であったが、我々は年を取っているがまだまだ現役。オニョサマづくりが行われる秋は稲刈りの他に仕事や神社のこともあって忙しい。」
「今年もみんなで集まろうといってたけど、ワラが使えなくなって中止になってしまった。とても残念だ」
北観音堂ではたとえ行事が平日開催だったとしても、仕事を休みオニョサマづくりに駆け付ける方も多い。今時大変珍しい場所である。
「この行事をつないでいくのは大事」
と最後に熱を帯びた言葉が、Tさんらしいなあと思った。昔と今では状況が大きく異なるが、それでも、できることをコツコツと、というTさんの気概に触れてとても嬉しくなった。
また会いにいきますね、Tさん。それまでどうぞお元気で。