「沖縄はいつも搾取されてかわいそう」なのか?
もう8年前の事ですが、来間泰男先生の『人頭税はなかった』(2015年・榕樹書林)という本が話題になりました。
人頭税とは、近世沖縄八重山地方にあった税制です。年貢という形ではなく、ひとり当たりいくらという「人に対する税」「労働で払う税です。
過酷な税に八重山の民衆は苦しめられました。しかも、明治政府による琉球処分以降も「人頭税」は放置され、そのために八重山地方の住民たちはその取り立てに苦しみ続け、その後、反対運動の末にようやく廃止されたというのが通説です。
宮古・八重山の人たちがいかに搾取され、苦しんできたか?
という話の中に必ずでてくるお話ですよね。
しかし来間先生によれば、実は、「人頭税」という名称自体がほんとうはなくて、明治の役人によって初めて名付けられたものだというのです。
実際は「頭掛け」という名称で、「頭掛け」は、八重山地方だけでなく沖縄本島でも行われていたそうです。
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主な税は穀物などの物納ではなく、多くは労働による「労働地代」でした。
生産力が低く、台風の被害などで収穫も不安定なために、沖縄でも行われた「検地」で算出された石高にはほとんど意味がなく、そのために、村への課税を村人の頭数=人口で算出したので「頭掛け」と呼ばれたのでそうです。そして、いわゆる「人頭税」のように、一人一人に税を課していたのではなかったといいます。
かつて、宮古島平良市に「人頭税石」という観光名所がありました。
高さ140センチくらいの縦に細長い石です。
その石と同じ背丈になると「人頭税」が課されたといわれ、観光地として有名でした。
しかし、その「伝説」の信憑性が疑われるようになり、今では市による史跡や観光地のリストからは外されています。
与那国島の久部良集落にも、「久部良バリ」という岩の割れ目があります。幅は約3メートル、深さは7、8メート。
子どもが生まれ人口が増えてしまうと税も増えるので、産児制限のために妊婦にその割れ目の向こう側に飛ばさせたといいます。
無事に飛べた者だけが子どもを産むことができたという伝説です。無事に飛べた妊婦の多くも流産したといいます。
久部良バリには、私も何度か訪ました。しかし、健康な成人男子でも無事には飛べそうにない割れ目です。とても史実とは思えません。
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