1999年沖縄人(うちなーんちゅ)の自己認識に革命が起きた?
1999年に初公開された映画『ナビィの恋』は衝撃的だった。
沖縄の島に里帰りした主人公の女の子から見た島の生活と、島の慣習によって昔大失恋したナビィおばあの心情を描いた作品である。
ナビィが若い頃、島の親族とユタによって恋人と別れさせられ、主人公のお爺さんと結婚した。それから何十年後にその恋人が訪ねて来たことで事件は起きる。結婚後、孫も出来て幸せに暮らしているナビィおばあは果たしてかつての恋人と一緒に島をでるのか、それとも残るのか。
物語的には沖縄の島でたまに聞くような話である。
しかし私には、映画の内容よりもこの映画が沖縄で大ヒットしたことが衝撃的だった。
なぜなら、この物語では古い慣習をかたくなに守ろうとする島の人々は悪役である。それを扇動するユタも意味の分からないことを話しているからだ。
おそらく、それが1990年代以前に作られていたのなら、この映画はヒットしないばかりか、沖縄県民から多くの非難を受けたであろう。これでは島の人は迷信を信じる無知蒙昧ではないか。本土の人に「沖縄は野蛮なところ」だという間違ったことを伝えてしまうと。
ところが、映画館だけではなく各地の公民館などで上映された時はいつも満席だった。私は、観客の反応の方が気になったのでいくつかの上映会会場で映画を観た。すると、かつては「沖縄を馬鹿にするな」と怒っていたであろうシーンで爆笑するのだ。特におばぁ・おじぃたちが。
その現象は何を意味するのか。
その頃は沖縄の復帰から約30年。生活が豊かさを多くの県民が実感していた。同時に、自分たちの歴史や文化に自信を持ち始めてきた。そして、「自らを笑う余裕」がでてきたのだ。
それは明治の琉球処分以降の沖縄の歴史においてかなり大きな出来事であると私は思う。映画から四半世紀が建った今、いまや沖縄は本土の人にとって憧れに近い土地になった。さて、我々の次の課題はなんであろうか。