沖縄問題を本土の人たちに理解してもらうために必要なこと(2)
「識者」はさらに、「沖縄の将来を決める権限を日本政府に持たせてしまった。復帰ではなく『沖縄返還』と位置付け、どこに返還するのか、日本か、琉球か、交渉権は誰が持つのかなどの議論が当時は不足していた。これからも考え続けるべきだ」と主張していますが、私にはこの主張がほとんど理解できません。
当時の沖縄県民、あるいは琉球政府にそれを実現させる力があったとは到底考えられないからです。そして、沖縄県民は明らかに、「琉球独立」ではなく「日本復帰」を自ら選択したのです。
ちなみに、復帰直前の1968年に行われた初の行政首席選挙(現在の沖縄県知事選挙)では、復帰に反対し琉球独立を唱えた候補の得票率は1%にも満ちませんでした。
沖縄県民は「日本復帰運動」によって、自らの意思で「日本国民」であることを主体的に選択したのです。だからこそ、その運動を「復帰」と呼びました。
もう一人の「識者」は復帰に関する県民意識調査結果に対して、
「復帰して良かったことで『米軍基地被害が減った』が4%にとどまり、悪かったことで『米軍基地の被害が増えた』43.7%と他の項目に比べて突出している。(略)『被害が増えた』の回答はこの10年で18ポイント増えて」いると解説しています。
すでに多くの人が指摘しているように、実は、米兵による犯罪(米軍構成員等事件)の件数も人数も復帰直後に比べて激減しています。
「事実」として被害は減っているのに、感情的に「増えた」と思っている人が多いのはなぜなのか?そのことを分析し解説することこそが「識者」の役割だと私は思いますが、まるで事実として「増えた」と印象付けようとしています。それでは、沖縄の「識者」は、新聞にお墨付きを与えるのが仕事、すなわち御用学者だと言われても仕方ないのではないでしょうか。
確かに沖縄に対する誹謗中傷は増えたと私も思います。
事実に基づかない誹謗中傷に、私もいち沖縄県民として、腹を立てることも少なくありません。
しかし、沖縄問題や沖縄県民の感情を本土の人に理解してもらうためには、より冷静で是々非々の態度が求められます。
まず自らが襟を正すべきなのです。
このままではヘイトスピーチも沖縄の新聞も「どっちもどっち」と呟かれておしまいです。いや、すでにもうそうなっています。
沖縄問題を全国の人たちに考えてもらうためには、まず、「どうすれば話を聞いてもらえるのか?」というところから考えなくてはなりません。拳をあげて叫べば、正しいことだから聞こえるはずだというのは稚拙すぎます。
そして、冷静に対応する。こちらが怒ってしまったら逆効果です。
実は、多くの県民はそのことに気が付いているのではないでしょうか。