ビタミン・ミネラル過剰摂取の弊害
栄養指導・食事摂取において、ことビタミン・ミネラルといった微量栄養素については「不足を補う」ための指導やアドバイスを行うシーンが非常に多い。単一(あるいは複数)の栄養素の欠乏は、当然のことながら人体には悪影響だ。一方で、過剰摂取もまた体調不良や病気リスクにつながることもある。
(1)日本人の栄養の過不足を定める「食事摂取基準」
厚生労働省が定めている食事摂取基準とは、以下のことをまとめた資料である。
食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。
(厚生労働省より引用)
つまり、専門家が健康増進や生活習慣病の予防・重症化予防を視野を視野に入れた、摂取すべき栄養素の基準を定めたものである。複数研究・専門家達によるエビデンスに基づく策定を基本としており、栄養素の研究課題を整理をするという役割も担っている。
この基準をもとに、病院で出される病院食や学校で食べる給食などの食事の栄養素が決められている。食事摂取基準は、5年に1度改定が行われる(現時点での最新版は2020年版)。科学的な最新エビデンスでは、日々様々な報告がなされている。食事摂取基準は、発表時点でもっとも確かな情報をまとめた、健康の指標となる資料の一つと言えるだろう。
食事摂取基準は、以下の栄養素について定められている。
・たんぱく質
・脂質
(総脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、コレステロール)
・炭水化物
(糖質、食物繊維)
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)
・水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン)
・多量ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン)
・少量ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン)
1)栄養素の「指標」
食事摂取基準では、栄養素の摂取量を5つの指標で設定している。また、これらはいずれも日本人に当てはめた数字なので、海外の定める量とは一致しないケースも多いことに注意したい。
・推定平均必要量(EAR)
特定の集団を対象として測定された必要量から、性・年齢階級別に日本人の必要量の平均値を推定。各階級に属する人々の50%が必要量を満たすと推定される1日の摂取量
・推奨量(RDA)
ある性・年齢階級の人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
・目安量(AI)
EAR、RDAの算定に必要な科学的根拠が不十分の場合、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
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