アクアビーズおじさん
育児漫画の連載が終わって少しは時間もできるかと思ったら、その分子供と遊んだり、昼に仮眠を取ったり、仕事以外のことで時間を使い始めて、なんだかんだ前と変わらずギリギリのところで時間に追われながら生活している。どうやら仕事は詰めるだけ詰めた方が効率が上がるというのは本当のようだ。ただ身体がついていかないというだけで。
そんな中で、娘と遊んでいてハマったのがアクアビーズだ。
梅ミンツみたいなカラフルなビーズを、設計図を敷いた専用のトレイの上に並べ、水を吹きかけると数分で乾燥して固まり、ファンシーなオブジェが完成するという女子向け?のオモチャである。
娘とやっているうちに俺もハマってしまって、頼まれてもいないのにティラミスの※イスズ人形をオリジナル設計図から作ってしまうほど夢中になってしまった。
(※我ながら完成度の高いやつができたので、今度の新刊を買ってくれた読者さん用プレゼントにしようと思います)
子遊びとしてのアクアビーズは、娘を持つ全パパ達にオススメしたい。何より親子で集中するし、時間があっという間に過ぎる。
子供にとっても学びの場となる気がする。数を数えたり、大人の指示を聞いて作業するので、コミュニケーションを取りながら人の話を聞く訓練にもなる。
こうして文字にするとなんだか職業訓練みたいだけど、実際アクアビーズは子供向けの内職と言ってもいい。俺はアクア現場監督だ、一粒だって見落とさない。
アクアり続けて気づいたことがある。
アクアビーズは作っている最中は楽しいのだけど、完成すると急に昆虫の死骸のような、気味の悪さというか、妙な無常観を放ち始める。それに気づく瞬間がある日突然訪れるのだ。
一粒のビーズで再現されるキャラクターの瞳をしばらく見ていて、蝉の抜け殻の瞳の部分に似ていることに気づいたことがあった。
アクアビーズの完成品は特に何の役にも立たない。固まるといってもチヂミみたいなグニグニの強度だし、再び水に濡れれば崩れるそうだ。なんとも無常だ。
アクアビーザー達は、アクアビーズで作ったオブジェのことを必ず「作品」と呼ぶらしい。説明書にもいたるところに「どんどん作品をつくろう★」と書いてある。
セミの抜け殻のようなものが完成し、西日によって乾燥させられている様子を眺めていて「俺たち親子は何を作っていたんだろう?」と思うことがあるが、それを「作品」だと思ったことは一度もない。親子の時間を圧縮して固めた「垢」とか「消しゴムのカス」の塊のような物だと思っている。
いつかはゴミ箱に捨てられるのだろう。ビーズを固めるノリの酢酸の臭いもくっせぇし。
カーッと熱病のようにブームが来たアクアビーズだが、娘の成長とともに、わりと早い段階で飽きが来そうな予感もしている。それでも娘が大きくなった時に話のネタになればと思って、今日もまた何か一緒に作ってやろうとは思う。